司法書士の過去問
平成27年度
(旧)平成27年度 問62

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問題

平成27年度 司法書士試験 問62 (訂正依頼・報告はこちら)

信託に関する登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。なお、判決による登記及び代位による登記については、考慮しないものとする。


ア 不動産についてA株式会社を受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記をした後、B株式会社がA株式会社を合併してその任務を引き継いだ場合、「 受託者A株式会社任務終了 」を登記原因として、A株式会社からB株式会社への所有権の移転の登記の申請をすることができる。

イ A及びBを所有権の登記名義人とする土地につき、Aを委託者、Cを受託者とするAの持分の移転の登記及び信託の登記をした後、Bがその持分を放棄した場合、信託の登記の申請と同時に、BからCへのBの持分の移転の登記を申請することができる。

ウ 権利能力のない社団である自治会Aの構成員全員に総有的に帰属し、自治会Aの代表者であるBが個人名義で所有権の登記名義人となっている不動産について、自治会Aを受益者とする信託がされた場合、自治会Aを受益者として信託の登記を申請することができる。

エ Aを受託者、Bを受益者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている不動産について、BがCに対して受益権を売却したことによる売買を登記原因とする受益者の変更の登記は、Aが単独で申請することができる。

オ 不動産について、A及びBを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている場合において、Aの任務が辞任により終了したことによる権利の変更の登記は、Bが単独で申請することができる。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (4件)

01

ア ×
 B株式会社がA株式会社を合併してその任務を引き継いだ場合は、「 年月日合併」を登記原因として、A株式会社からB株式会社への所有権の移転の登記の申請をすることになります。

イ 〇
Aの持分の移転の登記及び信託の登記がされた不動産において、Bがその持分を放棄した場合は、信託の登記の申請と同時に、BからCへのBの持分の移転の登記を申請することができます。

ウ ×
 権利能力のない社団を受益者とする信託の登記はできません。

エ 〇
 受益権を売却したことによる受益者の変更の登記は、受託者が単独で申請することができます。

オ ×
 受託者の任務が辞任により終了したことによる権利の変更の登記は、旧受託者及び新受託者の共同申請により、申請することになります。

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02

正解は 3 です。

正しい選択肢はイとエなので、3が正解です。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 受託者である法人が合併により解散した場合、信託行為に別段の定めがない限り、受託者の任務は終了せず、合併後に存続する法人又は合併により設立する法人医引き継がれることになります(信託法56条2項参照)。この場合の権利の移転登記の登記原因は、「年月日受託者合併による変更」となります。従って、本選択肢は誤りです。

イ. 先例は、A及びBの共有地につき、Aが自己の持分につき信託行為によって受託者Cのために持分移転及び信託登記を完了した後、Bがその持分を放棄したときは、BからCへのBの持分移転登記及びCからの信託登記を申請すべき、としています(昭和33年4月11日民甲765参照)。従って、本選択肢は正しいです。

ウ. 先例は、信託終了によって不動産の所有権が受益者に帰属する旨の信託法の規定及び受益者又は委託者に代位して信託の登記を申請できる旨の不動産登記法の規定等から受益者は権利能力を有する必要があると解する、としています(昭和59年3月2日民3.1131参照)。従って、自治会Aを受益者として信託の登記を申請することはできず、本選択肢は誤りです。

エ. 不動産登記法103条1項は、受益者が変更すれば、受益者は遅滞なく信託の変更登記を単独で申請しなければならない、と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 受託者が2人以上ある信託の登記において、受託者の任務の終了による権利の変更登記(合有登記名義人変更の登記)は、当該受託者の任務終了事由が、死亡、法人の解散以外の理由による解散、破産手続開始決定、後見開始又は保佐開始の審判の場合等には、残存受託者の単独申請となるが(不動産登記法100条2項参照)、辞任、解任の場合には、任務の終了した受託者と残存受託者の共同申請となります(不動産登記法60条参照)。従って、本選択肢は誤りです。

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03

正解は3です。信託の登記の申請は、当該信託にかかる不動産の権利の保存、設定、移転または変更の登記と同時に、かつ一つの申請情報によってせねばなりません(不動産登記法98条1項、不動産登記令5条2項)。

ア…誤りです。受託者の変更において、「受託者任務終了」を登記原因とするものは、信託法56条1項各号に記載のあるものです。法人が合併により解散した場合、信託法56条2項に記載のある通り、合併後の法人が受託者の任務を引き継ぐことになり、この場合の登記原因は、「受託者変更」となります。なお、この場合B株式会社が単独申請します(63条2項)。

イ…正しいです。本問のBが持分を放棄したことにより、B持分はAに帰属しています(民法255条)。この場合、原則として、共有名義人ではない第三者CにB持分移転の登記はできません。しかし、A持分について、Cがあらかじめ受託者として持分移転の登記及び信託の登記をしていた場合には、BとCとが共同して、B持分のCへの所有権移転登記と信託の登記をすることができます(昭和33年4月11日民事甲765号局長回答)。

ウ…誤りです。権利能力なき社団(法人ではない社団)を受益者とする信託の登記の申請はできません(先例、H12過去問)。

エ…正しいです。信託の登記は、受託者が単独でできます(不動産登記法98条2項)。また、受託者は、信託の登記事項(不動産登記法97条1項各号)に変更が生じた場合、信託の変更の登記を、遅滞なく単独で申請しなくてはなりません(不動産登記法103条1項)。したがって、受益権の譲渡(信託法93条1項)による受益者の変更も、受託者が単独で申請しなくてはなりません。

オ…誤りです。受託者のうちの一人が任務終了した際の受託者変更の登記は、権利の変更の登記となります。したがって、100条1項以外の事由、すなわち、合意による解任、辞任、あらかじめ定めのある終了事由による受託者の変更などは、任務終了した受託者が登記義務者、他の受託者が登記権利者とする共同申請が必要です(不動産登記法60条、100条2項)。

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04

正解 3

ア 誤り
受託者である法人が合併をして、合併後存続する法人が受託者の任務を引き継いだ場合、「年月日受託者合併による変更」を登記原因として、権利の移転登記を申請することになります。

イ 正しい
共有名義である土地について、共有者の一方が受託者のために、自己の持分の移転の登記及び信託の登記をした後、他方の共有者がその持分を放棄した場合は、持分を放棄した者から受託者へ持分の移転登記を行ったうえで、受託者から信託登記を申請しなければなりません(昭和33年4月11日民甲765号)。
よって、本肢の場合、信託の登記の申請と同時に、BからCへのBの持分の移転の登記を申請することはできません。

ウ 誤り
代表者の個人名義で登記されている権利能力なき社団の所有不動産を目的として、当該社団を受益者とする信託がされた場合、当該社団を受益者として信託登記をすることはできません(昭和59年3月2日民三1131号回答)。
よって、本肢において、自治会Aを受益者として信託の登記を申請することはできません。

エ 正しい
受益者に変更があったときは、受託者は、遅滞なく信託の変更登記を申請しなければなりません(不動産登記法103条1項)。この申請は、単独で申請することができます。

オ 誤り
受託者が二人以上ある場合において、そのうち一人の受託者の任務が死亡、破産手続開始の決定等により終了したときは、信託財産に属する不動産についてする当該受託者の任務の終了による権利変更の登記は、他の受託者が単独で申請することができます(不動産登記法100条2項)。
しかし、受託者の任務が辞任により終了した場合には、当該受託者と他の受託者が共同で申請しなければなりません。

以上から、正しい肢はイとエであり、3が正解となります。

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