司法書士の過去問
平成25年度
午前の部 問1
このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。
問題
平成25年度 司法書士試験 午前の部 問1 (訂正依頼・報告はこちら)
人権の享有に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 会社は、公共の福祉に反しない限り、政治的行為の自由を有するが、会社による政治資金の寄附は、それによって政治の動向に影響を与えることがあり、国民の参政権を侵害しかねず、公共の福祉に反する結果を招来することとなるから、自然人である国民による政治資金の寄附と別異に扱うべきである。
イ 憲法は、何人も、居住、移転の自由を有する旨を定めており、その保障は、外国人にも及ぶところ、この居住、移転には、出国だけでなく、入国も含まれることから、外国人には、日本から出国する自由に加え、日本に入国する自由も保障される。
ウ 公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、公務員に対して政治的意見の表明を制約することとなるが、それが合理的で、必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許すところである。
エ 我が国に在留する外国人に対し、法律をもって、地方公共団体の長やその議会の議員の選挙権を付与する措置を講じなくても、違憲の問題は生じない。
オ 喫煙の自由は、憲法の保障する基本的人権には含まれず、未決拘禁者に対して刑事施設内での喫煙を禁止することは、拘禁の目的、制限の必要性や態様などについて考察するまでもなく、憲法に違反しない。
ア 会社は、公共の福祉に反しない限り、政治的行為の自由を有するが、会社による政治資金の寄附は、それによって政治の動向に影響を与えることがあり、国民の参政権を侵害しかねず、公共の福祉に反する結果を招来することとなるから、自然人である国民による政治資金の寄附と別異に扱うべきである。
イ 憲法は、何人も、居住、移転の自由を有する旨を定めており、その保障は、外国人にも及ぶところ、この居住、移転には、出国だけでなく、入国も含まれることから、外国人には、日本から出国する自由に加え、日本に入国する自由も保障される。
ウ 公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、公務員に対して政治的意見の表明を制約することとなるが、それが合理的で、必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許すところである。
エ 我が国に在留する外国人に対し、法律をもって、地方公共団体の長やその議会の議員の選挙権を付与する措置を講じなくても、違憲の問題は生じない。
オ 喫煙の自由は、憲法の保障する基本的人権には含まれず、未決拘禁者に対して刑事施設内での喫煙を禁止することは、拘禁の目的、制限の必要性や態様などについて考察するまでもなく、憲法に違反しない。
- アイ
- アウ
- イオ
- ウエ
- エオ
正解!素晴らしいです
残念...
この過去問の解説 (5件)
01
正しい選択肢はウとエです。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 最高裁昭和45年6月24日判決では「会社は、自然人たる国民と同様、国や特定の政党の政策を支持、推進し又は反対するなどの政治的行為をする自由を有する」としています。また、その理由として、「会社が、納税の義務を有し、自然人た国民と等しく国税等の負担に任ずるものである以上、納税者たる立場においても、国や地方公共団体の施策に対し、意見の表明その他の行動に出たとしても、これを禁圧すべき理由はない。のみならず、憲法第三章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り、内国の法人にも適用されるものと解すべきである。」としています。このため、本選択肢では、会社と、自然人である国民による、政治資金の寄附を、別個のものとして取り合扱うべきとしているため、誤りです。
イ. 最高裁昭和53年10月4日判決では「憲法上、外国人は、我が国に入国する自由を保証されているものではない」として、外国人の入国の自由を否定しています。従って、本選択肢は誤りです。
ウ. 最高裁昭和49年11月6日判決で「公務員の政治的中立を損なう恐れがある公務員の政治的行為を禁止することは、それが合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところであるといわなければならない」としています。従って、本選択肢は正しいです。
エ. 最高裁平成7年2月28日判決で「地方公共団体の長及びその議会の議員の選挙の権利を日本国民たる住民に限る」ことは「憲法15条1項、93条2項に違反するものということはできない」としています。従って、本選択肢は正しいです。
オ. 最高裁昭和45年9月16日判決で、「煙草は生活必需品とまでは断じ難く、ある程度普及率の高い嗜好品にすぎず、喫煙の禁止は、煙草の愛好者に対して相当の精神的苦痛を感じせしめるとしても、それが人体に直接障害を与えるものではないのであり、かかる観点よりすれば、喫煙の自由は、憲法13条の保障する基本的人権の1つに含まれるとしても、あらゆる時所において保障されなければならないものではない」としています。従って、本選択肢では、喫煙の自由が基本的人権に含まれないとしているので、誤りです。
参考になった数88
この解説の修正を提案する
02
イ:間違い。 マクリーン事件(昭和53年10月4日最高裁判決)において「憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものではないことはもちろん、(以下略)」と判示しました。よって、外国人は入国の自由を保障されていません。
ウ:正しい。「猿払事件」(昭和49年11月6日 最高裁判決)において、最高裁判所は「公務員の政治的中立性を損なうおそれのある政治的行為を禁止することは、それが合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところである」と判示しました。つまり、公務員にも政治活動の自由は保障されているものの、その政治活動の内容が政治的中立性を損なうおそれのあるものである場合には、合理的で必要やむを得ない限度において制限することは合憲である、としています。
エ:正しい。定住外国人の地方参政権を巡る裁判において、平成7年2月28日最高裁判決は「憲法93条2項は、我が国に在留する外国人に対して地方公共団体における選挙の権利を保障したものとはいえない」としたうえで、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて(中略)法律をもって地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」が、「このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない」としました。
オ:間違い。拘禁中に喫煙をしたいと申し出て、それを拒否されたため、「喫煙の自由」について争われた事案に対する最高裁判決(昭和45年9月16日)によると、「喫煙の自由」は憲法13条の基本的人権の一つに含まれるとしても、いついかなる時でも保障されなければならないものではない」としました。つまり、本事案のように、喫煙を許すことにより、証拠隠滅や火災発生により被拘束者の脱走が予想されるように、制限をすることが必要かつ合理的なものである場合には憲法に違反しない、としました。よって、制限の必要性を考察したうえで制限する必要があります。
参考になった数25
この解説の修正を提案する
03
正解はウ、エです。
ア…誤りです。会社が特定の政党に政治献金をしたことが違法であるかどうかについて、判例は、「国民の権利および義務は性質上可能な限り、法人にも適用されるものと解されるべきであるから、会社は政治的行為をなす自由を有し、政治資金の寄付もまさにその自由の一環である」としています(八幡製鉄政治献金事件、最大判昭45・6・24)。
イ…誤りです。憲法22条が外国人の入国の自由を保障しているかについて、判例は、国家の裁量を広く認めており、「憲法22条の保障するところは居住・移転および外国移住の自由についてのみであり、入国の自由について何らの規定をするものではなく、国際慣習法上、外国人を自国内に受け入れるかどうかは国家が自由に決定できる」(入国の自由、最判昭32・6・19)としています。
ウ…正しいです。郵便局員が勤務時間外に支持政党のポスターを掲示・配布したことが国家公務員法102条1項違反とされたことにつき、同法が憲法31条に違反しないかについて、判例は、「①行政の中立的運営とこれに対する国民の身体の確保という禁止目的は正当である②そのために公務員の政治的行為を禁止することは、目的との間に合理的な関連性があり、③禁止により得られる利益が、禁止をしないことで失われる利益を上回ると考えられるため、国家公務員法102条は合憲である」としています(猿払事件、最大判昭49・11・6)。
エ…正しいです。永住資格を有する外国人に地方選挙権を認めるかどうかについて、判例は、「①憲法93条2項における「住民」とは「地方公共団体の区域内に住居を有する日本国民」であり、在留外国人に選挙の自由を保障したものではない②しかし、憲法の地方自治に関する規定は、住民の日常生活に関わる事務を地域住民の意思により処理させる権利を保障したものであり、その地域と緊密な関係を持つに至った外国人に、法律で地方選挙権を認めることは禁止していない」としました(最判平7・2・28)。したがって選挙権を認めることができるのであり、強制的に付与すべきとはされていません。
オ…誤りです。旧監獄法施行規則が拘禁者に対して喫煙を禁じていたことが憲法13条に違反しないかについて、判例は、「罪証隠滅や火災逃走などで拘禁の目的を達せないことは明らかであり、他面、喫煙の禁止が精神的苦痛を感ぜしめるとしても直接人体に損害を与えるものではないので、喫煙の自由が憲法13条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されるものではない」としました(最大判昭45・9・16)。したがって喫煙の自由自体は基本的人権に含まれ、拘禁の目的と必要性を鑑みて制限されるとされていますので誤りです。
参考になった数9
この解説の修正を提案する
04
ア 誤り
八幡製鉄政治献金事件(最判昭和45年6月24日)は、法人の人権がどこまで認められるかという点について、「憲法に定める国民の権利及び義務に関する各条項は、性質上可能な限り、法人にも適用されるものと解すべき」として、「政治資金の寄付もまさにその一環で、自然人による寄付と異なる扱いをすべき憲法上の要請があるものではない」と判示しています。
イ 誤り
マクリーン事件(最大昭和53年10月4日)は、憲法22条1項について、「国内での居住・移転を保障するものであって、外国人の入国について規定するものではなく、外国人には入国の自由、在留する権利は憲法上保障されない」と判示しています。
ウ 正しい
猿払事件(最判昭和49年11月6日)は、公務員の政治的行為について、「公務員の政治的中立性が維持されることは、国民全体の重要な利益であるので、公務員の政治的中立性を損なうおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、それが合理的で必要やむを得ない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところである」と判示しています。
エ 正しい
定住外国人地方選挙権訴訟(最判平成7年2月28日)は、在留する外国人の地方選挙権について、「主権が「日本国民」に存するものとする憲法前文及び1条の規定に照らせば、憲法の国民主権の原理における国民とは、日本国民すなわち我が国の国籍を有する者を意味することは明らか」であるとし、「公務員を選定罷免する権利を保障した憲法15条1項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばないものと解するのが相当である」としました。
そのうえで、「我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関係を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではない」としつつも、「このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない」と判示しました。
オ 誤り
最判昭和45年9月16日は、「喫煙の自由」について、「憲法13条の基本的人権の一つに含まれるとしても、あらゆる時、場合において保障されなければならないものではない」と判示しており、一定の制限を課すことを認めています。
本肢のように、喫煙を許すことにより、罪証隠滅のおそれがあり、また、煙草の火によって火災が発生した場合、被拘禁者が逃走することが予想されるような場合に、一定の制限を課すことは、必要かつ合理的なものであるとしました。
よって、未決拘禁者に対して刑事施設内での喫煙を禁止する場合には、拘禁の目的や制限の必要性、態様を考察したうえで、制限の是非を検討する必要があります。
以上から、正しい肢はウとエです。
参考になった数9
この解説の修正を提案する
05
イ 誤り。憲法に居住・移転の自由が定められている点、憲法の定める基本的人権が原則として外国人にも及ぶ点は正当ですが、その保障は特に日本人のみを対象として認めた権利を除きます。外国人の入国の自由は後者に該当し、憲法上保証されたものとはいえません(マクリーン事件)
ウ 正しい。政治的中立を損なう公務員の政治的行為の制限は、合理的で必要やむを得ない限度に留まる限り合憲であり、「合理的で必要やむを得ない限度」であるか否かの判断は(1)禁止の目的(2)目的と禁止される政治的行為の関連性(3)禁止により得られる利益と失われる利益の比較衡量、の3点から検討すべきであるというのが判例の立場です(猿払事件・憲法判例百選Ⅰ(第五版)―15事件)。
エ 正しい。判例は、(1)憲法15条1項の公務員を選定罷免する権利は「国民主権」原理の反映であるが、ここでいう「国民」とは「日本国民」を指すため、外国人に当然憲法15条1項の権利が保障されたものとはいえない、(2)前述の「国民」の趣旨に鑑みれば、憲法93条2項の住民は日本国民たる住民を指す、と判示しています(最判平成7・2・28、憲法判例百選Ⅰ(第五版)―5事件)。
ただし、上記判決では、(3)居住する区域の地方公共団体と特別の関係を有するに至った外国人に地方公共団体の長、議会の選挙権を与えることは憲法上禁止されているものではない、と判示していることから「地方公共団体の長やその議会の議員の選挙権を付与する措置を<講じても>」また違憲の問題は生じないこととなります。
<参考条文>
憲法
15条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である
93条2項 地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する
オ 誤り。喫煙の自由は、憲法の保障する基本的人権には含まれますが、未決拘禁者に対して刑事施設内での喫煙を禁止することは、拘禁の目的、制限の必要性や態様などについて比較衡量の上、必要かつ合理的な限度内と認められるため、憲法に違反しない、というのが判例です。
参考になった数13
この解説の修正を提案する
平成25年度問題一覧
次の問題(問2)へ