司法書士の過去問
平成25年度
午前の部 問2

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問題

平成25年度 司法書士試験 午前の部 問2 (訂正依頼・報告はこちら)

比例代表選挙により選出された国会議員に除名・離党による党籍の変動があった場合において、当該国会議員がその議員資格を喪失するかどうかについては、これを肯定する説(資格喪失説)と否定する説(資格保有説)がある。次のアからオまでの記述のうち、「この説」が資格保有説を指すものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  「この説」は、比例代表選挙により選出された当時の党籍を保持することを憲法第43条第1項の「全国民を代表する選挙された議員」の要件とする考え方である。

イ  「この説」に対しては、国民が政党に投票する比例代表選挙における民意とかけ離れた結果を生むこととなるとの批判がある。

ウ  「この説」に対しては、憲法第43条第1項の「全国民を代表する」の意味について、議員は、選挙区民が求める個々の具体的な指示に法的に拘束されることなく、自らの良心に基づいて自由に意見を表明し表決を行う権利を有することを意味するとする考え方と整合しないとの批判がある。

エ  「この説」に対しては、政党と議員との問に命令・服従関係を生じさせる点で問題があるとの批判がある。

オ  「この説」において、一旦選挙により選出された議員は、全てひとしく憲法第43条第1項の「全国民を代表する選挙された議員」であり、特定の選挙人や党派の代表者ではないとされる。

(参考)
憲法
第43条  両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
2(略)
  • アイ
  • アウ
  • イオ
  • ウエ
  • エオ

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この過去問の解説 (4件)

01

正解は3です。

ア:資格喪失説について述べています。
比例代表選挙の際、選出された当時の党籍を保持することを憲法第43条1項の「全国民を代表する選挙された議員」の要件とした場合、党籍の変動があれば当然に資格を喪失すると考えられるためです。

イ:資格保有説について述べています。
比例選挙において、国民は政党に投票し、政党はその獲得票数に応じて議席を獲得し、当選人は議員の資格を得ます。党籍に変動があってもその議員が資格を保有したままであると、政党に投票した国民の投票時の民意とはかけ離れたものとなってしまいます。

ウ:資格喪失説について述べています。
比例代表制で議員資格を獲得した議員が、党籍に変動があった場合に議員資格を喪失すると考えると、民意に拘束されてしまい、自己の良心に基づき自由に意見を表明できなくなってしまいます。したがって、憲法43条の「全国民を代表する」の意味が「議員は、選挙区民が求める個々の具体的な指示に法的に拘束されることなく、自らの良心に基づいて自由に意見を表明し表決を行う権利を有することを意味するとする考え方」とは整合しなくなってしまいます。

エ:資格喪失説について述べています。
比例代表制で当選し、議員資格を得た議員が除名や離党により、党籍があった場合その資格を喪失させるとした場合、議員資格の喪失を避けるため議員は政党の党議に拘束されやすくなるという問題が生じます。

オ:資格保有説について述べています。
比例代表制で当選し、議員資格を得た議員であっても、一旦選挙によって選出されたのであれば、全てひとしく憲法第43条第1項の「全国民を代表する選挙された議員」であり、特定の選挙人や党派の代表者ではないから、たとえ党籍の変動があったとしても議員資格は保有するという考え方です。

よって、資格保有説について述べている選択肢はイとオであり、正解は3となります。

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02

各選択肢の詳細をみるまえに、資格喪失説/資格保有説の概要と各肢の帰属を確認すると

資格喪失説:
政党名にて投票を行う比例代表選挙において選出された議員は、ある政党に所属するがゆえに議員として選出されたのであるから、その政党を離れた後は議員としての資格も喪失すべきであるとする説(ア、ウ、エ)
資格保有説:いったん議員として選出された以上、憲法43条における「全国民を代表する議員」として議員個人の意思に基づき行動することが許容されるとする説(イ、オ)

となります。


ア 「資格喪失説」について述べた記述
「当時の党籍を保持すること」を要件としていますから、党籍を変更した場合は資格を喪失するとの結論になります。

イ 「資格保有説」について述べた記述
資格保有説では、比例代表選挙によって選出された議員が政党を移籍することを認めています。
その結果、選挙時の投票結果とは異なる議席配分となることから、選択肢のような批判が成り立ちます。

ウ 「資格喪失説」について述べた記述
(1)国会議員は「全国民の代表」ですから、選出の方法に関わらず自らの良心にのみ基づいて行動する自由を持ちます。
実態としては利益誘導型政治家というものは存在しますが、理論上は小選挙区制であれば特定の選挙区から選出されたからといってその選挙区民の利益となる政策を実現する必要はないというのが「全国民の代表」の趣旨です。
この趣旨に鑑みれば、比例代表制においてある党に所属したがゆえに当選したとしても、その事情にかかわらず行動できることとなります。これは資格保有説と整合的な発想です。
(2)しかしながら、資格喪失説に立ち、仮に政党を移籍すると議員としての資格を喪失してしまうのであれば、議員資格を維持するため自身の良心に反して政党の指針(党議拘束)に従わざるを得ない状況となるでしょう。
選択肢では、(2)が「この説」、(1)が批判に該当します。


エ 「資格喪失説」について述べた記述
資格喪失説では、選出時の政党を離れると議員の資格を喪失します。
そして、政党が除名規定を持つ場合、政党の指針と議員の思想信条が異なったときには、議員がとりうる選択肢は
(1)議員の思想信条を曲げ、政党の指針に従うことで議員としての資格を維持する
(2)議員の思想信条を貫き、政党から除名処分を受け議員としての資格を喪失する
の2つとなってしまいます。現実に議員資格を放棄する決断を行うのは困難でしょうから、結果として(1)が選択され、議員が政党に従属する結果となります。

オ 「資格保有説」について述べた記述
一度議員として選出されたものは「全てひとしく憲法第43条第1項の『全国民を代表する選挙された議員』」なのですから、党籍の変更にかかわらず議員の地位が保持されることとなります。

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03

正解は 3 です。

資格保有説を述べている選択肢はイとオなので、3が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 本選択肢のように、選出された当時の党籍を保持することが、「全国民を代表する選挙された議員」の要件であるとすると、比例代表選挙により選出された国会議員が除名・離党した場合には、議員を資格を喪失することになるので、本選択肢は資格喪失説です。

イ. 本選択肢のように、比例代表選挙により選出された国会議員に、除名・離党があった場合に、その者が議員を資格を喪失しないと、国民が政党に投票する
比例代表選挙における民意とかけ離れた結果を生むことになるので、本選択肢は資格保有説です。

ウ. 比例代表制により選出された国会議員が、自らの良心に基づいて自由に意見を表明し、表決を行う権利を有するとすると、除名・離党による党籍の変動があっても、議員の資格を失わせる必要がないことになります。資格喪失説は、この考え方に整合しないので、本選択肢は資格喪失説です。

エ. 除名・離党による党籍の変動があった場合には、議員の資格を失わせるとすると、政党と議員の間に命令・服従関係を生じやすいので、本選択肢は資格喪失説です。

オ. 比例代表制によって選出された議員が、特定の選挙人や党派の代表者ではないとする考えは、資格保有説と結びつきます。従って、本選択肢は資格保有説です。


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04

正解 3

ア 資格喪失説を指す
比例代表選挙により選出された当時の党籍を保持することを憲法第43条第1項の「全国民を代表する選挙された議員」の要件とする考え方をとると、比例代表選挙により選出された国会議員に除名・離党による党籍の変動があった場合には、その議員資格を喪失することになります。

イ 資格保有説を指す
比例代表選挙により選出された国会議員に除名・離党による党籍の変動があった場合に、その者が議員を資格を保有するという資格保有説に対しては、資格喪失説から国民が政党に投票する比例代表選挙における民意とかけ離れた結果を生むことになると批判することが可能です。

ウ 資格喪失説を指す
比例代表制により選出された国会議員に除名・離党による党籍の変動があった場合に、その者が議員の資格を喪失するという資格喪失説に対しては、資格保有説から憲法第43条第1項の「全国民を代表する」の意味について、議員は、選挙区民が求める個々の具体的な指示に法的に拘束されることなく、自らの良心に基づいて自由に意見を表明し表決を行う権利を有することを意味するとする考え方と整合しないと批判することが可能です。

エ 資格喪失説を指す
比例代表制により選出された国会議員に除名・離党による党籍の変動があった場合に、その者が議員の資格を喪失すると考えると、政党と議員の間に命令・服従関係を生じさせることになります。

オ 資格保有説を指す
一旦選挙により選出された議員は、全てひとしく憲法第43条第1項の「全国民を代表する選挙された議員」であり、特定の選挙人や党派の代表者ではないという考えは、資格保有説と結びつきます。

以上から、資格保有説を指す肢はイとオであり、3が正解となります。

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