司法書士の過去問
平成25年度
午前の部 問6
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問題
平成25年度 司法書士試験 午前の部 問6 (訂正依頼・報告はこちら)
次の[事例]における本件貸金債権が時効によって消滅したかどうかに関する次のアからオまでの記述のうち、時効によって消滅したとするCの見解の根拠となるものとして適切でないものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
[事例]
Aは、平成11年7月1日、Bに対する500万円の貸金債権(以下「本件貸金債権」という。)を被保全債権とし、B所有の不動産(以下「本件不動産」という。)に対する仮差押命令を得て、同月5日、仮差押えの登記をした。
Aは、平成13年3月、Bに対し、本件貸金債権の支払を求める訴えを提起し、同年6月1日、Aの請求を認容する判決が確定したものの、本件不動産に抵当権が設定されていたため、強制競売の申立てをしなかった。
Bが平成24年1月に死亡した後、その唯一の相続人Cは、Aに対し本件貸金債権は平成23年6月1日の経過により時効によって消滅したとして債務不存在確認の訴えを提起し、Aは、仮差押えによる時効中断の効力が継続しているとして争った。
なお、本件不動産には、Aの仮差押えの登記が存しており、仮差押命令の取消し、申請の取下げ等によって仮差押命令の執行保全の効力が消滅した事実はない。
ア 不動産に対する仮差押えの執行手続は、仮差押命令に基づき仮差押えの登記がされ、当該仮差押命令が債務者に送達された時に終了すると解するのが相当である。
イ 仮差押命令は、被保全権利及び保全の必要性を疎明するだけで発せられ、執行されるものであり、権利の存在に関する公の証拠となるものではない。
ウ 債務者は、本案の訴えの不提起又は事情の変更による仮差押命令の取消しを求めることができる。
エ 仮差押えの後、被保全債権について仮差押債権者が提起した本案の勝訴判決が確定した場合には、仮差押えによる時効中断の効力は、確定判決の時効中断の効力に吸収されると解するのが相当である。
オ 民法は、仮差押えと裁判上の請求とを別個の時効の中断事由として規定している。
[事例]
Aは、平成11年7月1日、Bに対する500万円の貸金債権(以下「本件貸金債権」という。)を被保全債権とし、B所有の不動産(以下「本件不動産」という。)に対する仮差押命令を得て、同月5日、仮差押えの登記をした。
Aは、平成13年3月、Bに対し、本件貸金債権の支払を求める訴えを提起し、同年6月1日、Aの請求を認容する判決が確定したものの、本件不動産に抵当権が設定されていたため、強制競売の申立てをしなかった。
Bが平成24年1月に死亡した後、その唯一の相続人Cは、Aに対し本件貸金債権は平成23年6月1日の経過により時効によって消滅したとして債務不存在確認の訴えを提起し、Aは、仮差押えによる時効中断の効力が継続しているとして争った。
なお、本件不動産には、Aの仮差押えの登記が存しており、仮差押命令の取消し、申請の取下げ等によって仮差押命令の執行保全の効力が消滅した事実はない。
ア 不動産に対する仮差押えの執行手続は、仮差押命令に基づき仮差押えの登記がされ、当該仮差押命令が債務者に送達された時に終了すると解するのが相当である。
イ 仮差押命令は、被保全権利及び保全の必要性を疎明するだけで発せられ、執行されるものであり、権利の存在に関する公の証拠となるものではない。
ウ 債務者は、本案の訴えの不提起又は事情の変更による仮差押命令の取消しを求めることができる。
エ 仮差押えの後、被保全債権について仮差押債権者が提起した本案の勝訴判決が確定した場合には、仮差押えによる時効中断の効力は、確定判決の時効中断の効力に吸収されると解するのが相当である。
オ 民法は、仮差押えと裁判上の請求とを別個の時効の中断事由として規定している。
- アイ
- アエ
- イオ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (4件)
01
ア:適切である。
平成11年7月5日に仮差押えの登記がされ、当該仮差押え命令が債務者に送達されたとすると、10年を経過した時点で本件貸金債権が時効によって消滅したことになり、平成23年時点ではすでに消滅したと考えられるので、Cの見解の根拠として適切です。
イ:適切である。
仮差押えによる時効中断効について様々な説がありますが、本肢のような考え方はアの選択肢ような考え方を取る「非継続説」と本案の判決確定まで中断効が継続し、確定時から時効は新たに進行を始めるという「吸収説」、そしてウの選択肢のような考え方をする「継続説」があります。
「継続説」に対しては本肢のように「仮差押え命令は、被保全権利及び保全の必要性を疎明するだけで発せられ執行されるものであり、そのような比較的簡易な方法で永久的な中断効を認めるのは相当ではない。」という批判があります。
この批判は「非継続説」と「吸収説」の根拠となるものであるので、時効の成立を主張するCの見解の根拠となるものです。
したがって本肢は適切です。
ウ:適切でない
本肢のような考え方は「仮差押え命令が有効である間は時効は進行しない。」という仮差押えによる時効中断効についての説のうち「継続説」という考え方によるものです。この説をとると、時効は完成しないので、本肢はCの見解の根拠としては適切ではありません。
エ:適切である
本肢は上記で説明した「吸収説」に基づく見解です。
この説によると、本件貸金債権は時効によって消滅したと考えられるので、Cの見解の根拠として適切です。
オ:適切でない
裁判上の請求によって中断が終わっても、本肢のように仮差押えと別個の中断事由として規定してしまうと本件貸金債権の時効の中断は終了しません。そのためCの見解の根拠とはならないため本肢は適切ではありません。
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02
Cの根拠として適切でないものは、ウとオなので、5が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 仮差押えの登記がされた時に仮差押えの執行手続きが終了したとすると、平成11年7月5日から10年間を経過した時点で、本件賃金債権が時効によって消滅したことになるので、Cの見解の根拠となります。
イ. 仮差押え命令が、権利の存在に関する公の証拠となるものでないとすると、本件賃金債権が時効によって消滅したことになるので、Cの見解の根拠となります。
ウ. 債務者が、本案の訴えの不提起又は事情の変更による仮差押命令の取消しを求めることができるとすると、債務者は、そのような行為を行ったいないため、仮差押えによる時効中断の効力が継続していることになり、本件賃金債権が時効によって消滅していないことになるので、Cの見解の根拠となりません。
エ. 仮差押えによる時効中断の効力が、確定判決の時効中断の効力に吸収されているとすると、平成23年6月1日から10年を経過した時点で、本件賃金債権が時効によって消滅していることになるので、Cの見解の根拠となります。
オ. 民法が、仮差押えと裁判上の請求とを別個の時効中断事由と規定しているとする考えは、判決のあった平成13年6月1日から10年を経過した時点で本件賃金債権が時効によって消滅したというCの主張と相いれないので、本選択肢は、Cの見解の根拠となりません。
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03
ア Cの見解の根拠となる。
「仮差押命令に基づき仮差押えの登記がされ、当該仮差押命令が債務者に送達された時に終了する」とすると、平成11年7月5日の仮差押えの登記・仮差押命令送達以降新たに時効が進行しますから、Cが債務不存在確認の訴えを提起した時点では既に時効が完成していることとなります。
イ Cの見解の根拠となる。
仮差押命令は本案による権利関係の確定に先立ち、さしあたり現在の状況からの変更を抑止するものであって、仮差押命令の発令と実体法上の権利が認められることは別問題です。
それゆえ、特に学説レベルでは仮差押えに過度の実体法上の効力を認めることは不適との主張がなされており、これはCの見解の根拠となります。
ウ 誤り。Cの見解の根拠とはならない。
この見解に立てば、Cは仮差押命令の取消しを求めるべきであったということとなります。本件事案ではCは仮差押命令の取消しは求めず、仮差押命令による時効中断効の消滅そのものを主張していますから、Cの見解の根拠としては不当です。
エ Cの見解の根拠となる。
この見解をとれば、仮差押命令により生じた時効の中断効はAの得た平成13年6月1日の確定判決に吸収されることとなりますから、平成23年6月1日に時効が完成します。
オ 誤り。Cの見解の根拠とはならない。
民法が仮差押えと裁判上の請求とを別個の時効の中断事由と規定していることは、エで述べられているような仮差押命令の時効中断効の確定判決への吸収に否定的な要素です。よって、Cの見解の根拠としては不当です。
なお、平成29年6月2日公布、平成32年4月1日施行の改正民法(債権関係)においては、時効の中断と停止は時効の更新と完成猶予に再編され、更新・完成猶予事由にも改正の手が及んでいます。自身の受験年度の試験が改正前後いずれに準拠しているかを確認の上、改正後民法にて受験される方は特に注意しましょう。
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04
ア Cの見解の根拠となる
本肢の考え方によれば、仮差押えが登記された平成11年7月5日から新たに時効が進行することになります。
よって、平成23年6月1日の時点では既に時効が完成していることになります。
イ Cの見解の根拠となる
仮差押命令は、本案前に債務者が財産を処分することを禁ずるためになされるものであり、被保全権利の権利及び保全の必要性は疎明で足りるとされています。
よって、権利の存在が証明されて始めて発せられるものではありません。
この考え方によれば、仮差押命令は、時効の更新としての効果を有するに過ぎないということになり、平成23年6月1日の時点では既に時効が完成していることになります。
ウ Cの見解の根拠とはならない
本肢の考え方によれば、Cは仮差押命令を取消して、時効を更新する措置をとるべきであったということになります。
そうすると、仮差押命令がいったん発令されると、仮差押命令を取り消さない限り、時効は完成しないと考えることになります。
エ Cの見解の根拠となる
本肢の考え方によれば、仮差押えによる時効の完成猶予の効力は、被保全債権について仮差押債権者が提起した本案の確定判決(平成13年6月1日)に吸収されることになるため、平成23年6月1日の時点で時効が完成することになります。
オ Cの見解の根拠とはならない
本肢の考え方によれば、仮差押えによる時効完成猶予の効力により、本件貸金債権が時効で消滅することはありません。
以上から、Cの見解の根拠となるものとして適切でないものはウとオであり、5が正解となります。
※なお、2020年4月1日に施行された改正民法により、時効の「中断」と「停止」は、それぞれ、時効の「更新」と「完成猶予」に用語が改められました。
また、消滅時効の起算点についても、「債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき」「権利を行使することができる時から10年間行使しないとき」に改められました。
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