司法書士の過去問
平成25年度
午前の部 問14
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問題
平成25年度 司法書士試験 午前の部 問14 (訂正依頼・報告はこちら)
法定地上権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア A所有の甲土地上にAの子であるB所有の乙建物がある場合において、BがCのために乙建物に抵当権を設定した後、Aが死亡してBが単独で甲土地を相続し、その後、抵当権が実行され、Dが競落したときは、乙建物について法定地上権が成立する。
イ A所有の甲土地上にB所有の乙建物があった場合において、AがCのために甲土地に第1順位の抵当権を設定した後、Aが乙建物の所有権を取得し、その後、AがDのために甲土地に第2順位の抵当権を設定したものの、Cの抵当権がその設定契約の解除により消滅したときは、Dの抵当権が実行され、Eが競落したとしても、乙建物について法定地上権は成立しない。
ウ A及びB共有の甲土地上にA所有の乙建物がある場合において、AがCのために甲土地の持分に抵当権を設定したときは、抵当権が実行され、Dが競落したとしても、乙建物について法定地上権は成立しない。
エ A所有の甲土地にBのために抵当権が設定された当時、甲土地上に乙建物の建築が着手されていたものの、いまだ完成していなかった場合において、Bが更地としての評価に基づき当該抵当権を設定したことが明らかであるときは、たとえBが乙建物の建築を承認していたとしても、抵当権の実行により、乙建物について法定地上権は成立しない。
オ Aが、その所有する更地である甲土地にBのために抵当権を設定してその旨の登記をした後、甲土地上に乙建物を建築し、乙建物にCのために抵当権を設定した場合において、Cの抵当権が実行され、次いで、Bの抵当権が実行されたときは、乙建物について法定地上権が成立し、乙建物の買受人は、これをもって甲土地の買受人に対抗することができる。
ア A所有の甲土地上にAの子であるB所有の乙建物がある場合において、BがCのために乙建物に抵当権を設定した後、Aが死亡してBが単独で甲土地を相続し、その後、抵当権が実行され、Dが競落したときは、乙建物について法定地上権が成立する。
イ A所有の甲土地上にB所有の乙建物があった場合において、AがCのために甲土地に第1順位の抵当権を設定した後、Aが乙建物の所有権を取得し、その後、AがDのために甲土地に第2順位の抵当権を設定したものの、Cの抵当権がその設定契約の解除により消滅したときは、Dの抵当権が実行され、Eが競落したとしても、乙建物について法定地上権は成立しない。
ウ A及びB共有の甲土地上にA所有の乙建物がある場合において、AがCのために甲土地の持分に抵当権を設定したときは、抵当権が実行され、Dが競落したとしても、乙建物について法定地上権は成立しない。
エ A所有の甲土地にBのために抵当権が設定された当時、甲土地上に乙建物の建築が着手されていたものの、いまだ完成していなかった場合において、Bが更地としての評価に基づき当該抵当権を設定したことが明らかであるときは、たとえBが乙建物の建築を承認していたとしても、抵当権の実行により、乙建物について法定地上権は成立しない。
オ Aが、その所有する更地である甲土地にBのために抵当権を設定してその旨の登記をした後、甲土地上に乙建物を建築し、乙建物にCのために抵当権を設定した場合において、Cの抵当権が実行され、次いで、Bの抵当権が実行されたときは、乙建物について法定地上権が成立し、乙建物の買受人は、これをもって甲土地の買受人に対抗することができる。
- アイ
- アオ
- イエ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (4件)
01
ア:誤り
法定地上権が成立するためには、抵当権設定時に土地と建物が同一所有者に帰属している事が要件となっています。
最判昭44.2.14で裁判所は「抵当権設定当時において土地及び建物の所有者が各別である以上、その土地又は建物に対する抵当権実行による競落の際、たまたま当該土地及び建物の所有者が同一の者に帰していたとしても、法定地上権は成立しない。」としています。
従って本肢は判例の趣旨に照らし誤りです。
イ:誤り
最判平19.7.6で裁判所は「土地を目的とする先順位の抵当権が消滅した後に後順位の抵当権が実行された場合において、土地と地上建物が先順位の抵当権設定時には同一の所有者に属していなかったとしても後順位の抵当権設定時に同一の所有者に属していたときは法定地上権が成立する。」としました。
従って本肢は判例の趣旨に照らし誤りです。
ウ:正しい
最判昭29.12.23で裁判所は「共有地に建物を所有する共有者の一人が自己の共有持分に抵当権を設定した場合、他の共有者の同意がない限り、この建物のために法定地上権は成立しない。」としました。
本肢では、Aは土地の共有者であるBの同意がない限り乙建物についての法定地上権は成立しません。
従って本肢は判例の趣旨に照らし正しいです。
エ:正しい
最判昭36.2.10で裁判所は「民法388条により法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するものであって、抵当権設定後土地の上に建物を築造した場合は原則として同条の適用がないものと解する。」としたうえで「建物は土地に対する抵当権設定当時完成しておらず、また抵当権者が本件建物の築造を予め承認した事実があっても、抵当権は土地を更地として評価して設定されたことが明らかであるから、民法388条の適用を認めるべきではない。」としました。
従って本肢は判例の趣旨に照らし正しいです。
オ:誤り
法定地上権成立の要件として「抵当権設定時に土地の上に建物が存在すること」が必要です。本肢の場合、Bの抵当権設定時には乙建物が存在していないので、法定地上権は成立の要件を満たしていません。
従ってBの抵当権が実行された場合には乙建物について法定地上権は成立しないので、乙建物の買受人は甲土地の買受人に対抗することはできません。
従って本肢は誤りです。
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02
正しい選択肢はウとエなので、4が正解です。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 法定地上権成立の条件は、土地及びその上に存する建物が同一の所有者に属する場合において、その土地又は建物に抵当権が設定され、その抵当権の実行によって土地と建物の所有者が異なった場合です。本選択肢では、抵当権設定時に、土地と建物が同一人物の所有に属していないので、法定地上権は成立せず、誤りとなります。
イ. 判例は、法定地上権成立のための同一所有者要件の充足性を判断するべき時点を、競売により消滅する抵当権が複数存在する場合に、その中の最先順位の抵当権の設定時としており、また、その際、競売前に消滅した抵当権については、考慮する必要がないとしています。(最高裁平成2年1月22日判決参照)。本選択肢の場合、Dの抵当権が設定された時点で、同一所有者要件が充足されているため、法定地上権が成立するので、誤りとなります。
ウ. 本選択肢について、Dが抵当権を実行してAの甲土地持分を取得した場合に、地上建物の所有者Aために法定地上権を成立を認めると、土地の共有者Bが不測の損失を被るため、Aのために法定地上権は成立しません。従って、本選択肢は正しいです。
エ. 判例は、法定地上権成立のためには、抵当権を設定当時において、土地上に建物が存在することを要するものであって、抵当権設定後の土地上の建物を築造した場合には、原則として法定地上権は成立しないとしています。また、同時に、被上告人が、本件建物の築造を予め承認した事実があっても、結論は変わらないとしています。(最高裁平成26年2月10日判例)。従って、本選択肢は正しいです。
オ. Cが抵当権を実行した場合において、Bの抵当権は、消滅する最先順位の抵当権となります。従って、
Bの抵当権を設定して時点で、土地と建物が同一所有に属するという法定地上権の成立要件を満たしていないため、法定地上権は成立せず、本選択肢で誤りです。
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03
ア 誤り
判例(最判昭和44年2月14日)は、「抵当権設定当時土地と建物の所有者が異なる場合においては、その土地または建物に対する抵当権の実行による競落の際、右土地および建物が同一人の所有に帰していても、民法388条の規定は適用または準用されない」としています。
よって、本肢の場合、Bが単独で甲土地を相続し、甲土地および乙建物がBの所有に帰しても、乙建物について法定地上権は成立しません。
イ 誤り
判例(最判平成19年7月6日)は、「土地を目的とする先順位の甲抵当権と後順位の乙抵当権が実行された後、甲抵当権が設定契約の解除により消滅し、その後、乙抵当権の実行により土地と地上建物の所有者を異にするに至った場合において、当該土地と建物が、甲抵当権の設定時には同一の所有者に属していなかったとしても、乙抵当権の設定時に同一の所有者に属していたときは、法定地上権が成立する。」としています。
よって、本肢では、乙建物について法定地上権が成立します。
ウ 正しい
土地共有者の一人だけについて民法388条の事由が生じた場合と法定地上権の成否について、判例(最判昭和29年12月23日)は、「土地共有者の一人だけについて民法388条の事由が生じたとしても、これがため他の共有者の意思如何に拘らずそのものの持分までが無視されるべきいわれはなく、当該共有土地については、なんら地上権は発生しない。」としています。
エ 正しい
判例(最判昭和36年2月10日)は、「土地に対する抵当権設定の当時、建物が完成しておらず、しかも更地としての評価に基づき抵当権を設定したことが明らかであるときは、たとえ抵当権者において右建物の築造をあらかじめ承認した事実があっても、民法388条の適用を認めるべきではない。」としています。
オ 誤り
法定地上権が成立するためには、抵当権設定時に土地の上に建物が存在することが必要です(民法388条)。
本肢の場合、Bの抵当権設定時には甲土地の上に乙建物は存在していないため、乙建物について法定地上権は成立しません。
よって、乙建物の買受人は、法定地上権をもって甲土地の買受人に対抗することはできません。
以上から、正しい肢はウとエであり、4が正解となります。
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04
各選択肢の検討の前に確認すると、法定地上権の成立要件の原則は388条より
(1)土地上に建物が存在し
(2)土地・建物の所有者が同一であったところ、
(3)土地または建物の一方に抵当点が設定され、
(4)抵当権の実行により所有者を異にするに至った場合
です。
ア 誤り。
抵当権設定当時土地・建物の所有者が異なっていることから、上記(2)の要件を満たさず、たとえ抵当権設定後に所有者を一にしたとしても法定地上権は成立しません。
なお、土地・建物の所有者については、事実上同一であればよく、例えば未登記建物や登記名義が前所有者のままとなっている不動産についても法定地上権は成立しますが、単に相続人であるというのみでは認められません。
イ 誤り。
先順位抵当権の設定当時には土地・建物が別人の所有であったとしても、先順位抵当権が既に消滅しており、後順位抵当権の設定時点においては土地・建物が同一の所有者に属している場合は後順位抵当権の実行により土地・建物が別人の所有に属するに至った場合は法定地上権が成立します(最判平成19・7・6)。
本件事例において法定地上権の成立を認めたとしても、設定当初より先順位抵当権者への弁済後の残価からのみ自己の被保全債権の満足をなしえた後順位抵当権者の期待に反するものではない、というのが判例の実質歴理由です。
ウ 正しい。
共有土地上に、土地共有者の一人の単独所有たる建物が存在する場合、土地所有者の一人につき法定地上権の要件を充足したとしても法定地上権は成立しない、というのが判例です。
なお、本件類似の事例として、単一の所有者に属する土地上に、土地所有者を含む2人以上の共有に属する建物が存在する場合、法定地上権が成立するとされています(最判昭和46・12・21)。
エ 正しい。
抵当不動産に施工中の未成建物が存在し、抵当権者がその築造を承認していたとしても、更地としての評価に基づき抵当権を設定したと認められる場合は法定地上権は成立しない、というのが判例です(最判昭和36・2・10)。なお、事後の判例にて抵当権者が更地ではなく底地としての評価を行っていた場合であっても、抵当権者の承諾のみでは法定地上権は成立しない、と判示されています。
オ 誤り。更地に抵当権が設定された後、建物が建てられ、建物に抵当権が設定された場合は、建物について競売がなされて土地と建物の所有者が別人となったときに法定地上権が成立するが、その後、土地について競売がなされたときは、法定地上権は土地の買受人に対抗できません(大判昭11.12.15)。
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