司法書士の過去問
平成25年度
午前の部 問23

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問題

平成25年度 司法書士試験 午前の部 問23 (訂正依頼・報告はこちら)

Aを被相続人とする相続に係る遺留分減殺請求に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
なお、AとC、D、E、F又はGとの間には、親族関係はないものとする。


ア  Aが相続開始の2年前にその子Bに対して生計の資本として金銭を贈与した場合には、遺留分権利者とBとの間に生ずる不公平が到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情がない限り、当該贈与は、遺留分減殺の対象とならない。

イ  Aが相続開始の2年前にCに対して土地を贈与した場合において、当該贈与の当時、遺留分権利者に損害を加えることをAは知っていたものの、Cはこれを知らなかったときは、当該贈与は、遺留分減殺の対象とならない。

ウ  Aが相続開始の6か月前にDに対して甲土地を贈与するとともに、Eに対して乙土地を遺贈した場合には、当該贈与は、当該遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない。

エ  AのFに対する土地の贈与が減殺され、Fが当該土地を返還すべき場合には、Fは、当該土地のほか、当該贈与に基づき当該土地の引渡しを受けた日以後の果実を返還しなければならない。

オ  AがGに対して土地を遺贈し、その履行がされた後に当該遺贈が減殺された場合において、Gが価額の弁償により当該土地の返還を免れる効果を生ずるためには、価額の弁償を現実に履行するか、又はその弁済の提供をしなければならず、価額の弁償をすべき旨の意思表示をしただけでは足りない。
  • アウ
  • アエ
  • イウ
  • イオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 2 です。

誤っている選択肢はアとエなので、2が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 民法1030条前段で「贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、遺留分減殺請求の対象となります。」と規定しています。また、民法1044条及び民法903条1項によって、共同相続人の1人に対し生計の資本としてされた贈与については、相続開始1年前であるか否かを問わず、遺留分算定の基礎財産に算入されるとされています。従って、本選択肢は誤っています。

イ. 贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、遺留分減殺の対象となります。もっとも、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものであっても、遺留分減殺請求の対象となります。本選択肢では、当事者の一方であるAは遺留分権利者に害を与えることを知っていても、Cは知らなかったので、当該土地の贈与は遺留分減殺請求の対象とはならないので、正しい記述です。

ウ. 民法1033条では「贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができない」と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。

エ. 民法1036条では「受贈者は、その返還すべき財産のほか、減殺請求のあった日以後の果実を返還しなければならない」と規定しています。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 民法1041条では「受贈者及び受遺者は、減殺を受けるべき限度において、受贈又は遺贈の目的の価額を遺留分権利者に弁償して返還義務を免れることができる」と規定しています。そして、判例では、民法1041条の価格弁償の効果が認められるためには、価格弁償が現実にされることまで必要であるとしています。(最高裁平成54年7月10日判決)。従って、本選択肢は正しい記述です。


 

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02

正解 2

ア 誤り
相続人が生計の資本として受けた贈与は、相続開始前の10年間にしたものに限り、遺留分減殺請求の対象となります(民法1044条3項、1項)。

イ 正しい
贈与は、相続開始前の1年間にしたものに限り、遺留分減殺の対象となりますが、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、1年前の日より前にしたものであっても、遺留分減殺請求の対象となります(民法1044条1項)。
本肢の場合、当事者の一方であるCは、遺留分権利者に損害を与えることを知らなかったので、当該贈与は、遺留分減殺の対象となりません。

ウ 正しい
受遺者と受贈者とがあるときは、受遺者が先に遺留分侵害額を負担することになります(民法1047条1項1号)。
したがって、贈与は、遺贈を減殺した後でなければ、減殺することができません。

エ 誤り
旧民法では、「受贈者は、その返還すべき財産のほか、減殺請求のあった日以後の果実を返還しなければならない(旧民法1036条)」という規定がありましたが、同規定は、改正民法により削除されました。

オ 正しい
判例(最判昭和54年7月10日)は、「特定物の遺贈につき履行がされた場合に、受遺者が遺贈の目的の返還義務を免れるためには、価額の弁償を現実に履行するか又はその履行の提供をしなければならず、価額の弁償をすべき旨の意思表示をしただけでは足りない」と判示しています。

以上から、誤っている肢はアとエであり、2が正解となります。

※ 上記は、2020年4月1日から施行された改正民法に基づく解説になっています。

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03

正解は2(ア、エが誤り)です。

ア 誤り。
 相続人の一人が受けた生計の資本としての贈与は、相続の開始前1年以内に為されたものに限らず特別受益として減殺額算出の基礎となる相続財産に組み入れられます。よって本選択肢は誤りです。

イ 正しい。
 減殺の対象となる贈与は、(1)相続の開始1年以内に為された贈与、または(2)相続開始の1年以上前に為された贈与であって、贈与者・受贈者の双方が遺留分を侵害することを知り行ったもの、です。本件では受贈者のCが遺留分権利者の権利の侵害を認識していないため減殺の対象となりません。

ウ 正しい。
 贈与は、遺贈の減殺後でなければ減殺の対象となりません(1033条)。なお、贈与間の減殺の順序については1035条に規定されており、後の贈与から順に行われます。
 また、平成31年7月1日施行の改正後民法では1033条は削られ(配偶者居住権に関する規定に変更)ますが、遺留分にかかる負担を受遺者→受贈者の順で行うべき旨は1047条に引き継がれています。

エ 誤り。
 受贈者は、贈与の目的物に加え減殺の請求のあった日以降の果実を返還する義務を負います(1036条)。引き渡しを受けた日からではありません。

オ 正しい。
 贈与財産が減殺の対象となる場合、価格賠償によって贈与の目的物の返還を免れることが認められていますが(1041条)、これには現実の弁済を行うことが必要です。減殺請求者の、贈与の目的物に対する担保権類似の権利を認めたものといえます。
 なお、平成31年7月1日施行の改正後民法では遺留分減殺請求権は遺留分侵害請求権へと再構成され、遺留分権者は原則として受遺者・受贈者には金銭債権のみを有することとなります(「目的物の返還」が問題とならない)。

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