司法書士の過去問
平成25年度
午前の部 問28
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問題
平成25年度 司法書士試験 午前の部 問28 (訂正依頼・報告はこちら)
会社法上の公開会社における募集株式の発行に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 会社は、取締役会の決議によって募集事項を定めた場合(株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合を除く。)には、募集事項において定められた払込期日の2週間前までに、当該募集事項を公告し、かつ、株主に対し各別にこれを通知しなければならない。
イ 株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合であっても、その払込金額が当該株式の時価よりも相当程度低い金額であるときは、取締役は、株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
ウ 会社が譲渡制限株式である募集株式の引受けの申込みをした者の中から当該募集株式の割当てを受ける者を定める場合には、その決定は、取締役会の決議によらなければならない。
エ 募集株式の引受人の給付した現物出資財産の価額がこれについて募集事項として定められた価額に著しく不足する場合には、当該定められた価額の決定に関する取締役会に議案を提案した取締役は、裁判所の選任した検査役の調査を経たときであっても、会社に対しその不足額を支払う義務を負う。
オ 募集株式の引受人は、出資の履行をした募集株式の株主となった日から1年を経過した後は、その株式について権利を行使していない場合であっても、錯誤を理由として募集株式の引受けの無効を主張することができない。
ア 会社は、取締役会の決議によって募集事項を定めた場合(株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合を除く。)には、募集事項において定められた払込期日の2週間前までに、当該募集事項を公告し、かつ、株主に対し各別にこれを通知しなければならない。
イ 株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合であっても、その払込金額が当該株式の時価よりも相当程度低い金額であるときは、取締役は、株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
ウ 会社が譲渡制限株式である募集株式の引受けの申込みをした者の中から当該募集株式の割当てを受ける者を定める場合には、その決定は、取締役会の決議によらなければならない。
エ 募集株式の引受人の給付した現物出資財産の価額がこれについて募集事項として定められた価額に著しく不足する場合には、当該定められた価額の決定に関する取締役会に議案を提案した取締役は、裁判所の選任した検査役の調査を経たときであっても、会社に対しその不足額を支払う義務を負う。
オ 募集株式の引受人は、出資の履行をした募集株式の株主となった日から1年を経過した後は、その株式について権利を行使していない場合であっても、錯誤を理由として募集株式の引受けの無効を主張することができない。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はウとオなので、5が正解となります。
ア. 公開会社において、第三者割り当てによる募集事項を取締役会の決議によって定めた時は、払込期日の2週間前までに、株主に対して、当該募集事項の通知をしなければなりません。(会社法201条3項)。
しかし、この通知は、公告を持って代えることができます。(会社法201条4項)。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 第三者割当の場合、払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、公開会社であっても、株主総会において募集事項を決定しなければなりません。(会社法201条1項)。また、取締役は、株主総会において、当該払込金額でその者の募集を必要とする理由を説明しなければなりません。(会社法201条3項)。しかし、株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合には、この規定は適用されません。(会社法201条5項)。従って、本選択肢は誤りです。
ウ. 第三者割当の場合、株式会社は、申込者の中から募集株式の割合を受ける者を定め、かつ、その者に割り当てを受ける株式の数を定めなくてはなりません。(会社法204条1項、2項)。募集株式が譲渡制限株式であるときは、取締役会設置会社におけるこの決定は、定款に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によらなければなりません。(会社法204条2項)。従って、本選択肢は正解です。
エ. 募集株式の引受人の給付した現物出資財産の価額が、これについて募集事項として定められた価額に著しく不足する場合、現物出資財産の価額に関する取締役会の決議があったときは、当該取締役会に議案を提出した取締役は、株式会社に対して、その不足額を支払う義務を負います。(会社法213条1項3号参照)。しかし、現物出資財産について検査役の調査を経た場合には、取締役はこの責任を負いません。(会社法213条2項1号)。従って、本選択肢は誤りです。
オ. 会社法211条2項では「募集株式の引受人は、(中略)株主となった日から1年を経過した後又はその株主について権利を行為した後は、錯誤を理由として募集株式の引き受けの無効を主張し、又は詐欺若しくは脅迫を理由として募集株式の引受けの取消しをすることができない」と規定しています。従って、本選択肢は正解です。
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02
ア 誤り。
募集株式の発行に際する募集事項の決定は株主総会の特別決議に依るのが原則ですが(会社法199条)、公開会社の行う募集株式の発行であって、株主割り当てでなく、かつ有利発行でもない場合は取締役会にて決定することが可能です(会社法201条)。
そして、201条に基づき募集事項の決定を行った場合、会社は払込または給付の期日の2週間前までに株主へ通知を行う必要がありますが(201条3項)、これは公告を持って代えることができます(201条4項)。よって本選択肢は誤りです。
イ 誤り。
株主に引き受けの権利を与えずに有利発行(時価よりも相当程度低い価格での割当)を行う場合、会社法201条の規定(公開会社における募集事項の決定の特則)は適用されませんので、原則通り株主総会の特別決議によって募集事項を決定し(会社法199条)、かつ有利発行を必要とする事由を株主総会で説明しなくてはなりません(会社法199条3項)。
一方、株主に引き受けの権利を与え有利発行を行う場合は202条3項所定の機関の決定(公開会社の場合は取締役会の決議)により募集事項を決定でき、かつ株主総会での説明の必要はありません(202条5項)。株主割当が実施される場合は株主の利益が損なわれる恐れが少ないためです。
ウ 正しい。
募集株式の割当ては原則として申込数より少ない株式の割当や、株主平等の原則によらない割当ても可能であり(割当自由の原則)、取締役会の決定で割当てが可能です。
しかしながら、譲渡制限株式については株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議に依るべき旨が定められています。本件は問題文冒頭より公開会社についての事案ですので、取締役会の決議により割当てが可能です。
エ 誤り。
現物出資財産の価額が著しく不足する場合、(1)募集に関する職務を行った業務執行取締役およびこれに職務上関与した者(213号1項1号)・(2)株主総会にて価額の決定がされた場合、株主総会に議案を提出した取締役(213号1項2号)・(3)取締役会にて価額の決定がされた場合、取締役会に議案を提出した取締役(213号1項2号)は不足額を支払う義務を負います。
ただし、(1)現物出資財産につき検査役の調査を経た場合、および(2)当該取締役が職務を行うにつき注意を怠らなかったことを証明した場合、はこれを免れます(212条2項)。
本件は検査役の調査を経ていますので、不足額の支払義務はありません。
オ 正しい。
会社法211条2項の内容です。また、211条1項では募集株式の引き受けの申込みおよび割当て・総数引き受け契約にかかる意思表示につき民法の心裡留保・虚偽表示の適用を排除されています。
一方で、行為能力の制限および詐害行為に関しては除外規定がなく、民法の原則通りの処理となります。
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03
ア 誤り
公開会社は、取締役会の決議によって募集事項を定めたときは、払込期日の2週間前までに、株主に対し、当該募集事項を通知しなければなりません(会社法201条3項)。
もっとも、この通知は、公告をもってこれに代えることができます(同条4項)。
イ 誤り
第三者割当における払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければなりません(会社法199条3項)。
もっとも、株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合には、この規定は適用されません(同202条5項)。
ウ 正しい
募集株式が譲渡制限株式である場合には、募集株式の割当てを受ける者の決定は、定款に別段の定めがある場合を除き、株主総会(取締役会設置会社にあっては、取締役会)の決議によらなければなりません(会社法204条2項)。
エ 誤り
募集株式の株主となった時におけるその給付した現物出資財産の価額がこれについて定められた現物出資財産の価額に著しく不足する場合において、現物出資財産の価額の決定に関する取締役会の決議があったときは、当該取締役会に議案を提案した取締役は、株式会社に対し、その不足額を支払う義務を負います(会社法213条1項3号)。
もっとも、現物出資財産の価額について検査役の調査を経た場合は、取締役は現物出資財産についてこの責任を負いません(同条2項1号)。
オ 正しい
募集株式の引受人は、出資の履行により株主となった日から1年を経過した後は、錯誤を理由として募集株式の引受けの取消しをすることができません(会社法211条2項)。
以上から、正しい肢はウとオであり、5が正解となります。
※ 上記は、2020年4月1日から施行された改正民法に基づく解説になっています。
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