司法書士の過去問
平成25年度
午後の部 問44

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問題

平成25年度 司法書士試験 午後の部 問44 (訂正依頼・報告はこちら)

弁済供託に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  弁済の目的物について損傷のおそれがあるときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、これを競売に付し、その代金を供託することができる。

イ  建物の賃貸借における賃料の支払場所について別段の意思表示がない場合において、賃貸人が死亡し、その地位を承継すべき相続人が不明であるため、賃借人が賃貸人の死亡後に発生した賃料につき債権者不確知を原因とする弁済供託をするときは、賃借人の現在の住所地の供託所にしなければならない。

ウ  建物の賃貸借における賃料の支払日が「前月末日」、支払場所が「賃貸人の住所」とされている場合において、賃借人が平成25年6月17日に同年7月分の賃料を賃貸人の住所に持参したものの、賃貸人がその受領を拒否したときは、賃借人は、当該賃料の弁済供託をすることができる。

エ  建物の賃貸借における賃料の増額について当事者間に協議が調わない場合において、賃借人が賃貸人に従来の賃料と同じ額を相当と認める額として弁済の提供をしたのに対し、賃貸人がその受領を拒否したときは、賃借人は、その額の弁済供託をすることができる。

オ  受領拒否を原因とする弁済供託をする場合には、供託者は、供託官に対し、被供託者に供託通知書を発送することを請求しなければならない。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 1 です。

正しい選択肢はアとエなので、1が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 民法497条では「弁済の目的物が供託に適しないとき、又はその物について滅失若しくは損傷のおそれがあるときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、これを競売に付し、その代金を供託することができる。その物について過分の費用を要するときも同様とする」と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。

イ. 建物の賃貸借における賃料の支払い場所について別段の意思表示がない場合において、賃貸人が死亡し、その地位を承継するべき相続人が不明であるため、賃借人が賃貸人の死亡後に発生した賃料につき、債権者不確知を原因とする弁済供託をするときは、被相続人の最後の住所地を管轄する供託所に供託しなければならないとされています。(昭和39年全国決議参照)。従って、本選択肢は誤りです。

ウ. 賃料の支払いが前月末日となっている場合においては、その支払い日前に賃料を提供しても、適法な弁済とはならず、その提供を拒絶されても、弁済供託をすることはできません。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 賃料の増額請求があり、当事者間の協議が整わない場合には、賃借人は、従来の賃料と同じ額を相当として認める額として支払うことで足りるとされています。(借地借家法32条2項前段)。従って、弁済期が到来し、賃借人が当該相当として認める額を提供して受領を拒否された場合には、弁済供託をすることができます。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 供託規則16条前段では「供託者が被供託者に供託の通知をしなければならない場合には、供託者は、供託官に対し、被供託者に供託遺通知書を発送することを請求することができる」と規定しています。従って、供託官に供託通知書の発送を請求しなければならないわけではないので、本選択肢は誤りです。

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02

正解は1(ア、エ)です。


ア 正しい。
 民法497条の規定です(「弁済の目的物が供託に適しないとき、又はその物について滅失若しくは損傷のおそれがあるときは、弁済者は、裁判所の許可を得て、これを競売に付し、その代金を供託することができる。その物の保存について過分の費用を要するときも、同様とする」)。

イ 誤り。
 弁済者は過失なく債権者を確知することができないとき供託を行うことができ(民法494条)、494条に基づく供託は債務の履行地の供託所にて行う必要がありますが(民法495条)、本選択肢の如く債務の履行地につき別段の意思表示が存在しないときは持参債務の原則(民法484条)から債権者の住所地が履行地となります。よって、供託すべきは債権者(賃貸人)の住所地の供託所であり、弁済者(賃借人)の住所地において行うことはできません。

ウ 誤り。
 本選択肢の事例の場合、賃料の支払日が「前月末日」と定められているため、平成25年7月分の賃料債務弁済の履行期日は平成25年6月30日となります。よって、当該期日以前の平成25年6月17日における持参・弁済では債務の本旨に即した履行とは認められず、これを以て供託を行うことはできません。

エ 正しい。
 借地借家法11条2項は「地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる」と定めています。よって、本事例の場合協議が整わない間において賃借人が提供すべき賃借料は相当と認める額で足り、賃貸人が受領を拒絶した場合は弁済供託を行うことができます。

オ 誤り。
 弁済供託を行った弁済者は供託を行った旨を債権者に通知する義務がありますが(民法495条3項)、この場合供託者(弁済者)は「供託官に対し、被供託者に供託通知書を発送することを請求することができる」(供託規則16条1項)旨定められています。すなわち、供託者は供託通知書の発送を請求しうるに留まり、供託官を介さない通知も認められていることから本選択肢は誤りです。

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03

正解は1。

ア:正

弁済者は、弁済の目的物について損傷のおそれがあるときは、裁判所の許可を得て、この目的物を競売に付し、その代金を供託することができます(民法497条2号)。

よって、正しい記述です。

イ:誤

弁済供託(民法494条)は、債務の履行地の供託所にしなければなりません(495条1項)。

建物の賃貸借における賃料の支払い場所について、別段の意思表示がなければ、その履行地は賃貸人の住所地となります。このことは、賃貸人が死亡し、その地位を承継すべき相続人が不明であっても変わりません。

よって、誤った記述です。

ウ:誤

建物の賃貸借における賃料の支払日が「前月末日」、支払場所が「賃貸人の住所」とされている場合、平成25年7月分の賃料の履行期は同年6月30日であり、同年6月17日の時点では未到来です。この場合に、賃貸人に受領を拒否されたとしても、その賃料の弁済供託をすることはできません。

昭和42年1月9日民甲16号認可が、賃料の支払日が「前月末日」とされている場合には、末日に提供すべきとしていることが参考となります。

よって、誤った記述です。

エ:正

建物の賃貸借における賃料の増額について、当事者間に協議が調わない場合には賃借人は事故が相当と認める額を提供し、受領を拒否されたときには、その提供額を供託することができます(昭和41年7月12日1860号)。

オ:誤

弁済供託をした者は、遅滞なく、債権者に供託の通知をしなければなりません(民法495条3項)。この場合に、供託者は、供託官に対し、被供託者に供託通知書を発送することを請求することができるとされています(供託規則16条1項前段)。すなわち、必ず、供託間に対し、供託通知書の発送の請求をしなければならないということではありません。

よって、誤った記述です。

参考になった数1