問題
なお、当該持分の移転の登記の申請は、平成25年7月1日にされたものとする。
(参考)
民法
第646条(略)
2 受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
第667条 組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
2(略)
正解は4。
1:申請することができない
「民法646条第2項による移転」を登記原因とする持分移転の登記原因の日付は、持分移転の日につき特約があるときはその日、それ以外の場合には登記申請の日です(登記研究457号148頁、登記研究526号192頁)。
設例では、委任契約において持分移転の日を平成25年6月30日と定めていますので、同年7月1日を登記原因の日付とする持分移転の登記を申請することはできません。
2:申請することができない
離婚に際して、財産分与とは別に、不法行為に基づく慰謝料およびその遅延損害金に代えて不動産の持分を移転することを約した場合、「代物弁済」を登記原因とする持分移転の登記を申請します(登記研究531号121頁)。また、不動産の所有権を目的物とする代物弁済においては、代物弁済契約がされたときに、当該不動産の所有権が移転します(最判昭和57年6月4日集民136号39頁)。したがって、平成25年6月30日に代物弁済契約がされている設例では、同日を登記原因の日付とすべきであり、同年7月1日を登記原因の日付とする持分移転の登記を申請することはできません。
3:申請することができない
被保佐人が不動産を売却する場合には、保佐人の同意を得なければなりませんが(民法13条1項3号)、この同意を欠くとしても、取消がされない限り、売却は有効です(同条4項参照)。そのため、後に同意がされたとしても、それは登記原因の日付に影響を与えません。したがって、設例では、BとXとの間で甲土地の売買が行われた平成25年6月30日を登記原因の日付とする登記をすべきであり、同年7月1日を登記原因の日付とする持分移転の登記を申請することはできません。
4:申請することができる
組合契約による出資として、組合員から業務執行組合員に不動産の持分を移転した場合には、「民法667条1項の出資」を登記原因とする持分の移転登記を申請します(平成3年12月19日民三6149号回答)。登記原因の日付は、組合契約を締結した日です。したがって、設例では、組合契約を締結した平成25年7月1日を登記原因の日付とする持分移転の登記申請をすることができます。
5:申請することができない
持分権の放棄は、相手方のない単独行為です。そのため、その放棄の意思表示により効力を生じます。そして、これによりその持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。設例では、平成25年6月30日に持分権の放棄の意思表示がされています。したがって、平成25年6月30日を登記原因の日付とすべきであり、同年7月1日を登記原因の日付とする持分移転の登記を申請することはできません。