司法書士の過去問
平成25年度
午後の部 問56

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問題

平成25年度 司法書士試験 午後の部 問56 (訂正依頼・報告はこちら)

登記記録に次のような記録(抜粋)がある甲土地について、後記1から5までの記述のうち、第1欄に掲げる事由が生じた場合に、第2欄に掲げる登記原因及びその日付でXを登記権利者とする持分の移転の登記の申請をすることができるものは、どれか。
なお、当該持分の移転の登記の申請は、平成25年7月1日にされたものとする。

(参考)
民法
第646条(略)

2  受任者は、委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転しなければならない。
第667条  組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。
2(略)

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は4です。

当該組合契約に基づくB持分のXへの所有権移転の効力は、7月1日に生じているために、本選択肢は正解です。

その他の選択肢の解説は、以下のとおりです。

1. 民法第646条第2項による移転の効力発生日は、特約日がある場合にはその特約日、特約日がない場合には登記申請日です。従って、原因日付は特約日である6月30日となるため、本選択肢の登記原因及び日付では登記の申請はできません。

2. 本選択肢による代物弁済の効力発生日は、持分移転契約を約した6月30日となるため、本選択肢の登記原因及び日付では登記の申請はできません。

3. 被保佐人が、所有権持分を売買する場合には、保佐人の同意が必要となりますが、この保佐人の同意がなくても、売買契約は有効に成立するため、本選択肢の所有権持分の移転の効力は6月30日に発生しています。従って、本選択肢の登記原因及び日付では登記の申請はできません。

5. 持分放棄の意思表示による、他の共有者への持分移転の効力は、放棄の意思表示をした日に発生するので、本選択肢の登記原因及び日付では登記の申請はできません。

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02

第2欄で掲げる登記原因及びその日付とする登記を申請することができる記述は4であり、4が正解です。

1 民法646条2項による移転の原因日付は、当該移転の日につき特約があるときはその日であり、それ以外の場合には登記を申請した日付となります。本記述の場合、原因日付についての特約がありますので、日付は、平成25年6月30日となります。したがって、本記述では、第2欄で掲げる登記原因及びその日付とする登記を申請することができません。

2 離婚に際し、当事者間の協議により、不貞行為をした夫(有責配偶者)が妻に財産分与とは別に慰謝料として不動産を給付する場合、登記原因は、「年月日慰謝料債権の給付」ではなく「代物弁済」となります。代物弁済による所有権移転の登記の原因日付は、登記申請の日ではなく、契約の日ですから、本記述の場合、日付は、平成25年6月30日となります。したがって、本記述では、第2欄で掲げる登記原因及びその日付とする登記を申請することができません。

3 保佐人の同意は、登記原因の日付に影響しません。本記述の場合、日付は契約日の平成25年6月30日となります。したがって、本記述では、第2欄で掲げる登記原因及びその日付とする登記を申請することができません。

4 民法上の組合において、各組合員から組合契約による出資として、業務執行組合員に不動産の所有権を移転した場合の所有権移転登記の登記原因は、「年月日民法第667条第1項の出資」となります。原因日付は、出資をした日であり、本記述の場合は、平成25年7月1日となります。したがって、本記述では、第2欄で掲げる登記原因及びその日付とする登記を申請することができます。

5 持分の放棄は、相手方のない単独行為であり、他の共有者の了知は日付に影響しません。本記述の場合、原因日付は、持分の放棄の意思表示がなされた平成25年6月30日となります。したがって、本記述では、第2欄で掲げる登記原因及びその日付とする登記を申請することができません。

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03

正解は4。

1:申請することができない

「民法646条第2項による移転」を登記原因とする持分移転の登記原因の日付は、持分移転の日につき特約があるときはその日、それ以外の場合には登記申請の日です(登記研究457号148頁、登記研究526号192頁)。

設例では、委任契約において持分移転の日を平成25年6月30日と定めていますので、同年7月1日を登記原因の日付とする持分移転の登記を申請することはできません。

2:申請することができない

離婚に際して、財産分与とは別に、不法行為に基づく慰謝料およびその遅延損害金に代えて不動産の持分を移転することを約した場合、「代物弁済」を登記原因とする持分移転の登記を申請します(登記研究531号121頁)。また、不動産の所有権を目的物とする代物弁済においては、代物弁済契約がされたときに、当該不動産の所有権が移転します(最判昭和57年6月4日集民136号39頁)。したがって、平成25年6月30日に代物弁済契約がされている設例では、同日を登記原因の日付とすべきであり、同年7月1日を登記原因の日付とする持分移転の登記を申請することはできません。

3:申請することができない

被保佐人が不動産を売却する場合には、保佐人の同意を得なければなりませんが(民法13条1項3号)、この同意を欠くとしても、取消がされない限り、売却は有効です(同条4項参照)。そのため、後に同意がされたとしても、それは登記原因の日付に影響を与えません。したがって、設例では、BとXとの間で甲土地の売買が行われた平成25年6月30日を登記原因の日付とする登記をすべきであり、同年7月1日を登記原因の日付とする持分移転の登記を申請することはできません。

4:申請することができる

組合契約による出資として、組合員から業務執行組合員に不動産の持分を移転した場合には、「民法667条1項の出資」を登記原因とする持分の移転登記を申請します(平成3年12月19日民三6149号回答)。登記原因の日付は、組合契約を締結した日です。したがって、設例では、組合契約を締結した平成25年7月1日を登記原因の日付とする持分移転の登記申請をすることができます。

5:申請することができない

持分権の放棄は、相手方のない単独行為です。そのため、その放棄の意思表示により効力を生じます。そして、これによりその持分は他の共有者に帰属します(民法255条)。設例では、平成25年6月30日に持分権の放棄の意思表示がされています。したがって、平成25年6月30日を登記原因の日付とすべきであり、同年7月1日を登記原因の日付とする持分移転の登記を申請することはできません。

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