司法書士の過去問
平成25年度
午後の部 問57

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問題

平成25年度 司法書士試験 午後の部 問57 (訂正依頼・報告はこちら)

司法書士法務太郎は、甲土地の所有権の登記名義人であるAと乙土地の地上権の登記名義人であるBから、次のアからカまでの事情を聴取するとともに、聴取した事情に基づき、甲土地にBを権利者とする用益権の設定の登記をしたいが、その登記をすることができるかどうかを教えてほしいとの相談を受けたことから、どのような用益権を設定すべきかについて検討した上、回答することとした。後記1から5までの回答のうち、司法書士法務太郎の回答として正しいものは、どれか。


<A及びBから聴取した事情>

ア  甲土地の地目は雑種地であり、現在、Aが駐車場として使用している。

イ  用益権の設定の契約及び当該用益権の設定の登記の申請は、AとBが行う。

ウ  用益権の設定の目的は、Bにおいて、甲土地の東側1メートルの範囲に、乙土地上のB所有の設備から引いた地中電線路を埋設することにある。

エ  用益権は、甲土地の東側1メートルの範囲にのみ設定するものとし、当該用益権の設定のために分合筆等の甲土地についての表示に関する登記は、しない。

オ  用益権の存続期間は、50年とし、乙土地の地上権の存続期間内にとどめる。

カ  Bは、設定した用益権に基づく甲土地の使用収益の対価として、年1万円をAに支払う。
  • 「登記をすることができません。なぜなら、Bは、乙土地の所有権者ではないからです。」
  • 「登記をすることができません。なぜなら、甲土地の一部に対する用益権の設定となるからです。」
  • 「登記をすることができます。その際、用益権の設定の目的は、登記事項とはなりません。」
  • 「登記をすることができます。その際、『存続期間50年』を登記事項とすることができます。」
  • 「登記をすることができます。その際、Bの住所は、登記事項とはなりません。」

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は「登記をすることができます。その際、Bの住所は、登記事項とはなりません。」です。

他人の土地に登記することができる用益権を設定する場合には、まず、地上権、永小作権、賃借権、地役権、の4つの登記が考えられます。
まず、選択肢ウによって、用益権設定の目的が、地中電線路の埋設なので、この段階で、本選択肢の用益権が、永小作権である可能性がなくなります。
次に、選択肢エによって、用益権は、土地の一部に設定するのであるが、当該用益権の設定のために、甲土地の分合筆は行わないとあります。従って、この段階で、本選択肢の用益権が、地上権、賃借権である可能性がなくなります。
従って、この問題における用益権は、地役権であるということになります。
この前提に基づいて、各選択肢を見てみると、以下のとおりとなります。

選択肢1. 「登記をすることができません。なぜなら、Bは、乙土地の所有権者ではないからです。」

地役権は、要役地の所有権者でなくても登記することが可能なので、本選択肢は誤りです。

選択肢2. 「登記をすることができません。なぜなら、甲土地の一部に対する用益権の設定となるからです。」

地役権は、要役地の一部についても設定できるので、本選択肢は誤りです。

選択肢3. 「登記をすることができます。その際、用益権の設定の目的は、登記事項とはなりません。」

地役権設定登記においては、用益権の設定の目的は登記事項となるため、本選択肢は誤りです。

選択肢4. 「登記をすることができます。その際、『存続期間50年』を登記事項とすることができます。」

地役権の存続期間は登記事項とすることはできないので、本選択肢は誤りです。

選択肢5. 「登記をすることができます。その際、Bの住所は、登記事項とはなりません。」

地役権の登記では、登記権利者の氏名又は名称及び住所は登記事項とはならないため、本選択肢は正しいです。

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02

正しい記述は「登記をすることができます。その際、Bの住所は、登記事項とはなりません。」です。

選択肢1. 「登記をすることができません。なぜなら、Bは、乙土地の所有権者ではないからです。」

本問の用益権は、甲土地を承役地とし、乙土地を要役地とし、設定の目的を「地中電線路の埋設」とする地役権です。地役権は、土地の高度利用を図る権利ですから、承役地又は要役地に用益権が設定されている場合は、当該用益権者が設定契約の当事者となり、地役権設定の登記の申請人となることができます。したがって、本記述は誤りです。

選択肢2. 「登記をすることができません。なぜなら、甲土地の一部に対する用益権の設定となるからです。」

地役権は、承役地の一部を目的として設定し、登記をすることができます。地役権設定の登記においては、地役権の範囲が登記事項となります(不登法80条1項2号)。したがって、本記述は誤りです。

選択肢3. 「登記をすることができます。その際、用益権の設定の目的は、登記事項とはなりません。」

設定の目的は、地役権設定の登記の絶対的登記事項となります(不登法80条1項2号)。したがって、本記述は誤りです。

選択肢4. 「登記をすることができます。その際、『存続期間50年』を登記事項とすることができます。」

地役権設定の登記においては、存続期間は登記事項ではありません。したがって、本記述は誤りです。

選択肢5. 「登記をすることができます。その際、Bの住所は、登記事項とはなりません。」

地役権設定の登記においては、地役権者の氏名及び住所は登記事項ではありません。したがって、本記述は正しいです。

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03

正解は「登記をすることができます。その際、Bの住所は、登記事項とはなりません。」

選択肢1. 「登記をすることができません。なぜなら、Bは、乙土地の所有権者ではないからです。」

乙土地に設定された地上権のために、甲土地に地役権の設定の登記を申請することは認められています(昭和36年9月15日民甲2324号回答、また記録例285「地上権を目的とする地役権の設定」も参照)。

よって、誤った回答です。

選択肢2. 「登記をすることができません。なぜなら、甲土地の一部に対する用益権の設定となるからです。」

地役権は、一筆の土地の一部を目的として設定の登記をすることもできます。登記すべきでないときを定める不動産登記令20条4号において「申請が一個の不動産の一部についての登記(承役地についてする地役権の登記を除く。)を目的とするとき」とかっこ書での除外があること、同令別表35添付情報欄ロにおいて「地役権設定の範囲が承役地の一部であるときは、地役権図面」があげられていることからも、上述のような登記が法において予定されていることがわかります。

よって、誤った回答です。

選択肢3. 「登記をすることができます。その際、用益権の設定の目的は、登記事項とはなりません。」

承役地についての地役権の設定の登記において、地役権の設定の目的は登記事項となります(不動産登記法80条1項2号)。

よって、誤った回答です。

選択肢4. 「登記をすることができます。その際、『存続期間50年』を登記事項とすることができます。」

地役権の設定の登記を申請する場合、存続期間は登記事項となりません。

よって、誤った回答です。

選択肢5. 「登記をすることができます。その際、Bの住所は、登記事項とはなりません。」

地役権の設定の登記の申請をする場合、地役権者の氏名または名称および住所は登記事項になりません(不動産登記法80条2項)。

よって、正しい回答です。

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