司法書士の過去問
平成25年度
午後の部 問59
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問題
平成25年度 司法書士試験 午後の部 問59 (訂正依頼・報告はこちら)
登記記録に次のような記録(抜粋)がある甲土地について、抵当権の登記の申請がされる場合に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア DがBの持分に対する抵当権を放棄した場合には、A及びBを登記権利者とし、Dを登記義務者として、乙区1番の抵当権をA持分の抵当権とする変更の登記を申請することができる。
イ Cが死亡し、Cの相続人であるX及びY間において、遺産分割協議によりXがDの承認を得てCの債務を単独で引き受けた場合には、相続を登記原因として、Xを債務者とする乙区1番の抵当権の変更の登記を申請することができる。
ウ 乙区1番の抵当権の設定の登記を申請する際、損害金の定めとして、「年14.5%(年365日の日割計算)」とするところを誤って「年14.5%」と申請していた場合には、Eの承諾を証するEが作成した情報又はEに対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供しなければ、乙区1番の抵当権の更正の登記を申請することができない。
エ A及びBがEに対して甲土地を代物弁済したことによりEを登記権利者とする共有者全員持分全部移転の登記をした場合には、Eは、代物弁済を登記原因として、乙区2番の抵当権の登記の抹消を申請することができる。
オ A及びBがEに対して甲土地に譲渡担保権を設定したことによりEを登記権利者とする共有者全員持分全部移転の登記をした場合には、Eは、混同を登記原因として、乙区2番の抵当権の登記の抹消を申請することができる。
ア DがBの持分に対する抵当権を放棄した場合には、A及びBを登記権利者とし、Dを登記義務者として、乙区1番の抵当権をA持分の抵当権とする変更の登記を申請することができる。
イ Cが死亡し、Cの相続人であるX及びY間において、遺産分割協議によりXがDの承認を得てCの債務を単独で引き受けた場合には、相続を登記原因として、Xを債務者とする乙区1番の抵当権の変更の登記を申請することができる。
ウ 乙区1番の抵当権の設定の登記を申請する際、損害金の定めとして、「年14.5%(年365日の日割計算)」とするところを誤って「年14.5%」と申請していた場合には、Eの承諾を証するEが作成した情報又はEに対抗することができる裁判があったことを証する情報を提供しなければ、乙区1番の抵当権の更正の登記を申請することができない。
エ A及びBがEに対して甲土地を代物弁済したことによりEを登記権利者とする共有者全員持分全部移転の登記をした場合には、Eは、代物弁済を登記原因として、乙区2番の抵当権の登記の抹消を申請することができる。
オ A及びBがEに対して甲土地に譲渡担保権を設定したことによりEを登記権利者とする共有者全員持分全部移転の登記をした場合には、Eは、混同を登記原因として、乙区2番の抵当権の登記の抹消を申請することができる。
- アエ
- アオ
- イウ
- イエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
選択肢イ及びエが正しいので、正解は4となります。
各選択肢の解説は以下のとおりです。
ア. 乙区1番の抵当権をAの持分の抵当権とする変更の登記は、Bを登記権利者、Dを登記義務者として行います。Aは、登記権利者にも登記義務者にもなりません。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 抵当権の債務者が死亡し、相続人間の遺産分割協議によって、被担保債務を引き受けた相続人がいる場合、相続を登記原因として、抵当権の債務者を、被相続人から、被担保債権を引き受けた相続人に、直接、変更することができます。従って、本選択肢は正解です。
ウ. 乙区1番の抵当権の更正登記は、利害関係人の承諾が得られてた場合には付記登記で、得られなかった場合は主登記で行われます。よって、Eの承諾を証する情報又はEに対抗できる裁判があったことを証する情報の提供がないと、登記ができないわけではありません。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 抵当権者が、代物弁済によって、抵当不動産の所有権を取得した場合には、代物弁済を登記原因として、抵当権の抹消登記を申請できます。よって、本選択肢は正解です。
オ. 譲渡担保を取得しただけでは、確定的に所有権が移転したわけではないので、譲渡担保によって抵当不動産の所有権を取得した抵当権者は、混同を原因として、抵当権の抹消登記をすることはできません。よって、本選択肢は誤りです。
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02
正解は4。
ア:誤
DがBの持分に対する抵当権を放棄した場合には、Bを登記権利者とし、Dを登記義務者として、乙区1番の抵当権をA持分の抵当権とする変更の登記を申請することができます(不動産登記法60条、記録例416参照)。
よって、誤った記述です。
イ:正
被担保債権の債務者Cが死亡し、Cの相続人であるXおよびYの間での遺産分割協議によりXがDの承諾を得てCの債務を単独で引き受けた場合には、相続を登記原因として、Xを債務者とする乙区1番の抵当権の変更の登記をすることができます(昭和33年5月10日民甲964号通達、記録例410(「共同相続人の一人が遺産分割により、債権者の承諾を得て債務を引き受けた場合」)参照)。
よって、正しい記述です。
ウ:誤
乙区1番の抵当権の設定の登記を申請する際、損害金の定めとして、「年14.5%(年365日の日割計算)」とするところを誤って「年14.5%」と申請していた場合には、後順位で設定の登記がされている抵当権の登記名義人Eは、登記上の利害関係を有する第三者に該当します(登記研究406号)。この場合にはおいて、Eの承諾を証するEが作成した情報又はEに対抗することができる裁判があったことを証する情報が提供されれば抵当権の更正の登記が付記登記で実行されますが、これらの情報の提供がされなくとも主登記で登記が実行されます(不動産登記法66条)。したがって、登記の申請をすることは可能です。
よって、誤った記述です。
エ:正
土地の共有者であるA及びBが、乙区2番の抵当権の登記名義人Eに対して甲土地を代物弁済したことによりEが甲土地の所有権を取得します。ここで、Eを登記権利者とする共有者全員持分全部移転の登記をした場合には、Eは、代物弁済を登記原因として、乙区2番の抵当権の登記の抹消を請求することができます(登記研究270号)。
よって、正しい記述です。
オ:誤
AおよびBの共有名義の甲土地に、乙区2番の抵当権名義人Eへの譲渡担保を登記原因とする共有者全員持分全部移転の登記がされた場合でも、Eは、混同を登記原因として、乙区2番の抵当権の登記の抹消を申請することができません。
譲渡担保権を取得したというだけでは本件不動産の所有権が確定的に移転しているということはできないため、混同により抵当権が消滅したとはいえないからです(最決平成17年11月11日金法1768号44頁)。
よって、誤った記述です。
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03
ア DがBの持分に対する抵当権を放棄した場合は、Dの抵当権はA持分のみを目的とするものとなりますので、1番抵当権をA持分の抵当権とする変更登記を申請します。この登記は、Bが登記権利者となり、Dが登記義務者となって共同で申請します(不登法60条)。その持分に抵当権が存続するAは登記上利益を受けないため登記権利者とはなりません。したがって、本記述は誤りです。
イ 抵当権の債務者について相続が開始した場合において、共同相続人が債権者の承諾を得て遺産分割によって相続人の一人を抵当債務の承継人とした場合は、相続を登記原因とし、当該相続人だけを債務者とする抵当権変更登記を申請することができます。したがって、本記述は正しいです。
ウ 損害金を「年14.5%」から「年14.5%(年365日の日割計算)」と更正することは、抵当権にとって利益となりますので、後順位抵当権者(本問の場合はE)が登記上の利害関係を有する第三者となります。Eの承諾証明情報を提供しない場合には付記登記では実行できませんが(不登法66条)、主登記で実行されます。承諾証明情報を提供しなければ登記を申請することができないわけではありません。したがって、本記述は誤りです。
エ 不動産の代物弁済による債権消滅の効力は所有権移転の登記をした時に生じます(最判昭和40.4.30)。本記述の場合、2番抵当権者Eへの共有者全員持分全部移転の登記をした時に2番抵当権の消滅の効力が生じますから、Eが登記権利者兼登記義務者となって抵当権の登記の抹消を申請することができます。したがって、本記述は正しいです。
オ Eが譲渡担保権を取得しただけでは不動産の所有権が確定的に移転しているということはできませんので、譲渡担保により不動産の所有権が抵当権者に移転したとしても、当該抵当権が混同で消滅したということもできません(最判平成17.11.11)。したがって、本記述は誤りです。
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