司法書士の過去問
平成25年度
午後の部 問61
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問題
平成25年度 司法書士試験 午後の部 問61 (訂正依頼・報告はこちら)
仮登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 仮登記の登記義務者の住所地を管轄する地方裁判所は、仮登記の登記権利者の申立てにより、仮登記を命ずる処分をすることができる。
イ 仮登記の登記権利者が書面申請の方法により単独で仮登記を申請する場合には、当該登記権利者が登記手続をすることについて仮登記の登記義務者が承諾する旨の条項がある公正証書の正本を申請書に添付したとしても、当該登記義務者の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。
ウ 所有権移転請求権保全の仮登記のされた請求権の一部が移転した場合において、当該仮登記に基づく本登記は、仮登記の登記権利者のうちの一人から申請することができる。
エ 代物弁済の予約を仮登記原因とする所有権移転請求権保全の仮登記の本登記の申請は、非金銭債務を担保するためにされたものであることを証する情報を提供すれば、登記原因の日付が仮登記原因の日付として登記されている日から2か月の期間の経過後の日でなくても、することができる。
オ 抵当権の設定の登記について当該抵当権の放棄による抹消の仮登記がされた後、債権譲渡による当該抵当権の移転の登記がされている場合には、当該抵当権の譲受人を登記義務者として、当該仮登記に基づく本登記を申請することができる。
ア 仮登記の登記義務者の住所地を管轄する地方裁判所は、仮登記の登記権利者の申立てにより、仮登記を命ずる処分をすることができる。
イ 仮登記の登記権利者が書面申請の方法により単独で仮登記を申請する場合には、当該登記権利者が登記手続をすることについて仮登記の登記義務者が承諾する旨の条項がある公正証書の正本を申請書に添付したとしても、当該登記義務者の印鑑に関する証明書を添付しなければならない。
ウ 所有権移転請求権保全の仮登記のされた請求権の一部が移転した場合において、当該仮登記に基づく本登記は、仮登記の登記権利者のうちの一人から申請することができる。
エ 代物弁済の予約を仮登記原因とする所有権移転請求権保全の仮登記の本登記の申請は、非金銭債務を担保するためにされたものであることを証する情報を提供すれば、登記原因の日付が仮登記原因の日付として登記されている日から2か月の期間の経過後の日でなくても、することができる。
オ 抵当権の設定の登記について当該抵当権の放棄による抹消の仮登記がされた後、債権譲渡による当該抵当権の移転の登記がされている場合には、当該抵当権の譲受人を登記義務者として、当該仮登記に基づく本登記を申請することができる。
- アイ
- アウ
- イオ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はエとオになりますので、5が正解です。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 仮登記を命ずる処分の申し立ては、必ず、不動産の所在地を管轄する地方裁判所に行わなくてはなりません。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 登記義務者が、登記申請に関して、承諾する旨の条項がある公正証書の正本を登記申請書に添付した場合には、登記義務者の印鑑証明書の添付は不要です。従って、本選択肢は誤りです。
ウ. 所有権移転請求権保全仮登記がされた後、仮登記された請求権の一部が移転した場合には、当該仮登記に基づく本登記は、仮登記の登記権利者全員から申請する必要があります。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 担保仮登記の場合には、登記原因の日付が、仮登記原因の日付として登記されている日から、2か月の期間の経過後でなければならないが、非金銭債務を担保することの証明がある場合には、担保仮登記として取り扱わなくてもよいとされています。従って、本選択肢は正解です。
オ. 抵当権放棄による抹消の仮登記がされている抵当権について、仮登記の後に、債権譲渡による抵当権の移転登記がされている場合には、当該抹消仮登記の本登記をする場合には、抵当権の譲受人を登記義務者として差し支えないとされます。従って、本選択肢は正解です。
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02
ア 仮登記を命ずる処分の管轄裁判所は、不動産の所在地を管轄する地方裁判所となります(不登法108条3項)。したがって、本記述は誤りです。
イ 仮登記義務者の承諾がある場合は、仮登記権利者が単独で仮登記を申請することができます(不登法107条1項)。この場合、仮登記義務者は申請人となりませんので、「登記義務者の印鑑証明書」の提供は必要ありませんが、承諾書の押印に関する印鑑証明書の提供は必要となります。ただし、承諾書が公正証書で作成されている場合は、その印鑑証明書の提供も必要ありません。したがって、本記述は誤りです。
ウ 所有権移転請求権の一部移転登記がされている場合、すなわち、請求権が共有の場合は、各共有者のための本登記は同時に申請しなければなりません(昭和35.5.10民三328号)。本登記をするための余白は1つしかないからです。したがって、本記述は誤りです。
エ 担保仮登記に基づく所有権移転の本登記の原因日付は、清算金見積額の通知が債務者等に到達して2か月を経過した日となり(初日不算入で2か月の期間の末日の翌日である )、それより前の日付による申請はすることができません(昭和54.4.21民三2592号)。仮登記原因が、「代物弁済予約」 「条件付代物弁済」であるときは、担保仮登記として取り扱われ、上記の原因日付の制約が生じます。ただし、この場合であっても、本登記の申請に際して非金銭債務担保である旨(仮登記担保法の適用はない)を証する情報を提供した場合は、担保仮登記としては取り扱われません(原因日付の制約はありません)。したがって、本記述は正しいです。
オ 抵当権抹消仮登記に基づく本登記(抵当権抹消登記)を申請する場合において、抵当権移転登記がなされている場合の登記義務者は、当初の抵当権登記名義人でも、現在の抵当権登記名義人でもどちらでもかまいません(昭和37.10.11民甲2810号)。この場合、当初の登記名義人が登記義務者となる場合は、現在の登記名義人は登記上の利害関係を有する第三者となり、その承諾証明情報の提供を要します。したがって、本記述は正しいです。
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03
正解は5。
ア:誤
「裁判所は、仮登記の登記権利者の申立てにより、仮登記を命ずる処分をすることができ」ますが(不動産登記法108条1項)、この申立てに係る事件は、「不動産の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に専属する」とされています(同条3項)。したがって、仮登記の登記義務者の住所地を管轄する地方裁判所は仮登記を命ずる処分をすることはできません。
よって、誤った記述です。
イ:誤
仮登記の登記権利者が書面申請の方法により単独で仮登記を申請する場合には、当該登記権利者が登記手続をすることについて仮登記の登記義務者の承諾を証する情報を提供しなければなりません(不動産登記法107条1項、不動産登記令別表68添付情報欄ロ)。この承諾を証する情報には、作成者の記名押印を要し(不動産登記令19条1項)、その者の印鑑証明書の添付が必要とされます(同令2項)。
しかし、この承諾書について公証人またはこれに準ずる者の認証を受けた場合には、印鑑証明書を添付する必要はありません(不動産登記規則50条2項・48条1項2号)。
したがって、仮登記の登記義務者が承諾する旨の条項がある公正証書の正本を申請書に添付した場合には、当該義務者の印鑑証明書を添付する必要はありません。
よって、誤った記述です。
ウ:誤
所有権移転請求権保全の仮登記のされた請求権の一部が移転した場合において、当該仮登記に基づく本登記は、仮登記の登記権利者のうちの一人から申請することができません。この場合には、仮登記権利者の全員が同時に申請しなければならないのです(昭和35年5月10日民三328号回答)。
よって、誤った記述です。
エ:正
金銭債務を担保するためにされた代物弁済の予約を仮登記原因とする所有権移転請求権保全の仮登記がされている場合、所有権の移転時期に特則があり(仮登記担保に関する法律1条、2条1項)、原則としては、登記が可能となる時期も影響を受けます。
しかし、非金銭債務を担保するためにされたものであることを証する情報が提供された場合には、当該仮登記を担保仮登記として取り扱うことを要しないとされています(昭和54年4月21日民三2592号通達)。この場合には、登記原因の日付が仮登記原因の日付として登記されている日から2か月の期間の経過後の日でなくても、本登記の申請をすることができます。
よって、正しい記述です。
オ:正
抵当権の設定の登記について当該抵当権の放棄による抹消の仮登記がされた後、債権譲渡による当該抵当権の移転の登記がされている場合には、当該抵当権の譲受人と従前の抵当権の登記名義人とのいずれを登記義務者としても、当該仮登記に基づく本登記を申請することができます(昭和37年10月11日民三2810号通達)。したがって、当該抵当権の譲受人を登記義務者として、当該仮登記に基づく本登記を申請することができます。
よって、正しい記述です。
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