司法書士の過去問
平成26年度
午前の部 問17

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

平成26年度 司法書士試験 午前の部 問17 (訂正依頼・報告はこちら)

次の対話は、債権譲渡と債権者の交替による更改に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


教授:債権者が交替するための制度としては、債権譲渡のほかに債権者の交替による更改がありますが、これらの制度の違いについて考えていきましょう。要件について、二つの制度に違いはありますか。

学生 : ア  はい。債権譲渡は、譲渡人と譲受人との契約によって成立しますが、債権者の交替による更改は、元の債権者と新たに債権者となる者と債務者の三者間の契約によって成立します。

教授 : 民法上の第三者対抗要件について、二つの制度に違いはありますか。

学生 : イ  債権譲渡と債権者の交替による更改のいずれについても、確定日付のある証書による通知又は承諾がなければ、第三者に対抗することができないとされています。

教授 : 動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律によって、金銭の支払を目的とする債権の譲渡のうち、法人が債権の譲渡人となるものについては、登記をした場合にも第三者に対抗することができるとされていますね。債権者の交替による更改についても、登記をすることによって第三者に対抗することができるのでしょうか。

学生 : ウ  金銭の支払を目的とする債権についての債権者の交替による更改のうち、法人が元の債権者で、あるものについては、登記をすることによって第三者に対抗することができるとされています。

教授 : ところで、債権譲渡は債権が同一性を保ったまま移転するけれども、債権者の交替による更改では旧債務と同一性のない債務が成立するという点で、二つの制度に違いがあると言われていますね。このことから、二つの制度にどのような違いがあるのかについて考えてみたいと思います。まず、抗弁の承継の有無について、二つの制度に違いがあるかどうかを教えてください。

学生 : エ  債権譲渡については、債務者が異議をとどめないで承諾をすると、譲渡人に対抗することができた事由があったとしても、譲受人には対抗することができなくなります。これに対し、債権者の交替による更改は、旧債務と同一性のない債務が成立しますから、債務者が異議をとどめて承諾をしたとしても、譲渡人に対抗することができた事由を譲受人には対抗することができません。

教授 : 第三者が所有する不動産に設定された抵当権によって担保されている債権について、債権譲渡がされた場合と、債権者の交替による更改がされた場合とで、その抵当権の移転について違いはありますか。

学生 : オ  債権譲渡がされた場合には、抵当権を設定した第三者の承諾がなくても抵当権は債権とともに移転しますが、債権者の交替による更改がされた場合には、抵当権を移転させるには、更改の当事者の合意のほか、抵当権を設定した第三者の承諾を得る必要があります。
  • アウ
  • アオ
  • イエ
  • イオ
  • ウエ

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

正しい記述はアとオであり、2が正解です。

ア 債権譲渡は、譲渡人と譲受人の譲渡契約によって成立します。これに対し、債権者の交替による更改は、新旧債権者と債務者の三面契約によって成立します(民法515条1項)。更改は、債務者に新債務者との間で新たな債務を負担させるものであり、債務者の意思も無視できないため、債権譲渡と異なり、必ず債務者も契約の当事者となっていなければなりません。したがって、本記述は正しいです。

イ 債権譲渡の第三者に対する対抗要件は、譲渡人からの確定日付のある証書によってする通知又は債務者の承諾です(民法467条1項、2項)。これに対し、債権者の交替による更改の第三者に対する対抗要件は、確定日付のある証書によってする契約です(民法515条2項)。債務者は必ず契約の当事者となりますから(ア参照)、これに対する通知又は承諾は対抗要件となりません。したがって、本記述は誤りです。

ウ 債権譲渡登記制度は、法人が金銭債権(指名債権に限る)の譲渡をした場合において、当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該債権の債務者以外の第三者については、確定日付のある証書による通知があったものとみなす制度です(動産、債権譲渡特例法1条、4条1項参照)。更改は債権譲渡ではありませんので、この制度の適用はありません。したがって、本記述は誤りです。

エ 民法改正により、債務者が異議をとどめないで承諾をした場合は、債務者は対抗要件が具備されるまでに生じた抗弁事由をもって、譲受人に対抗することができないとする改正前民法468条1項は削除されました。改正後は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができます(改正民法468条1項)。債権者の交替による更改の場合には、新旧両債務に同一性がありませんので、旧債務に付着していた抗弁権は消滅します。したがって、本記述は誤りです。

オ 抵当権の被担保債権が譲渡された場合は、それが物上保証人が設定した抵当権であっても、当然に抵当権も債権の譲受人に移転します(随伴性)。これに対し、更改の当事者は、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された質権又は抵当権を更改後の債務に移すことができます(民法518条1項本文)。新旧債務には同一性はないため、旧債務の担保は消滅するのが原則であるところ、当事者の合意により特に存続することを認めたものです。ただし、第三者がこれを設定した場合(物上保証の場合)には、その承諾を得なければなりません(同項ただし書)。したがって、本記述は正しいです。

参考になった数20

02

正解は2です。

正しい選択肢はアとオであるので、2が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 債権譲渡は、譲渡人と譲受人の間の契約によって成立します。一方、債権者の交代による更改は、新債権者、旧債権者、債権者の三面契約とされます。従って、本選択肢は正しいです。

イ. 氏名債権の譲渡は、譲渡人が、確定日付のある証書によって、債務者に通知をするか、又は、債務者が承諾をしなければ、債権譲渡を第三者に対抗できません。一方、債権者の交代による更改は、更改契約を確定日付のある証書で行わなければ、第三者に対抗することはできません。債権者の交代による更改の場合、債務者には通知する必要はありません。従って、本選択肢は誤りです。

ウ. 動産債権譲渡特例法4条1項は、「法人が債権を譲渡した場合において、当該債権の譲渡について債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされた時は、当該債権の債務者以外の第三者については、民法467条の規定による確定日付けのある証書によって通知があったものとみなす。この場合において、当該登記の日付をもって、確定日とする」と規定していますが、この規定を、債権者が法人である場合に、債権者の交替による更改に準用するという規定はないため、本選択肢は誤りです。

エ. 債権譲渡については、債務者が異議をとどめないで承諾をすると、譲渡人に対抗することができた事由があったとしても、譲受人には対抗することができなくなります。この規定は、債権者の交替による更改契約に準用されているため、債務者が更改に異議なく承諾した場合には、債務者が旧債務者に対抗できた事由があったとしても、新債務者にそれを対抗することができなくなります。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 抵当権の被担保債権となっている債権を譲渡した場合には、抵当権は、設定者の承諾なく、譲渡人から譲受人に移転しますが、債権者の交替による更改の場合には、当該債権を担保している抵当権が、旧債権者から新債権者に移転するためには、債務者の同意が必要です。従って、本選択肢は正しいです。
 

参考になった数8

03

正解 2

ア 正しい
債権譲渡は、譲渡人と譲受人が債権譲渡契約を締結することによって成立します。
これに対し、債権者の交替による更改は、更改前の債権者、更改後に債権者となる者及び債務者の契約によって成立します(民法515条1項)。

イ 誤り
債権の譲渡は、確定日付のある証書による通知又は承諾がなければ、第三者に対抗することができません(民法467条1項、2項)。
また、債権者の交替による更改は、確定日付のある証書によってしなければ、第三者に対抗することができません(民法515条2項)。
したがって、債権者の交替による更改の場合は、確定日付のある証書によって契約をすることで足り、通知又は承諾までは求められていません。

ウ 誤り
債権譲渡登記制度は、法人がする動産及び債権の譲渡の対抗要件に関し民法の特例等を定めた法律です(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律1条)。
したがって、更改については、同制度は適用されません。

エ 誤り
債務者は、対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由をもって譲受人に対抗することができます(民法468条1項)。
これに対し、債権者の交替による更改の場合、旧債務と同一性のない債務が新債務として成立することになるため、旧債務に付着していた抗弁権は更改により消滅することになります。

オ 正しい
抵当権の随伴性から、抵当権の被担保債権が譲渡された場合には、当然に抵当権も債権とともに移転します。
これに対し、更改前の債権者は、第三者がその債務の担保として抵当権を設定した場合には、その承諾を得ることを条件として、また、更改前の債権者が抵当権を設定した場合には無条件で、更改前の債務の目的の限度において、その債務の担保として設定された抵当権を更改後の債務に移すことができます(民法518条1項)。

以上から、正しい肢はアとオであり、2が正解となります。

※上記解説は、2020年4月1日から施行された改正民法に対応した内容になっています。

参考になった数7