司法書士の過去問
平成26年度
午前の部 問16

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問題

平成26年度 司法書士試験 午前の部 問16 (訂正依頼・報告はこちら)

次の対話は、債権者代位権と詐害行為取消権に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、幾つあるか。


教授 : 金銭債権を有する債権者が、債権者代位権により債務者の第三債務者に対する金銭債権を代位行使する場合と、詐害行為取消権により債務者が受益者に対して金銭債務の弁済を取り消す場合とを比較してみましょう。まず、債権者の債務者に対する金銭債権の履行期は、到来している必要がありますか。

学生 : ア  債権者代位権を行使するためには、裁判上の代位の許可を得た場合又は代位行使が保存行為に当たる場合を除き、代位行使の時点で履行期が到来している必要があるのに対し詐害行為取消権を行使するためには、債務者の受益者に対する弁済の時点で履行期が到来している必要があります。

教授 : 債権者の債務者に対する金銭債権の額と比べて、債務者の第三債務者に対する金銭債権の額や、債務者の受益者に対する弁済の額が高い場合には、債権者代位権や詐害行為取消権の行使の範囲は制限されますか。

学生 : イ  債権者代位権については、債権者の債務者に対する金銭債権の額の範囲でのみ代位行使をすることができるのに対し詐害行為取消権については、弁済の全部を取り消すことができます。

教授 : 債権者は、債権者代位権や詐害行為取消権を行使するために必要な費用を支出した場合に、債務者に対してその費用の償還を請求することができますか。

学生 : ウ  債権者代位権を行使した債権者は、費用の償還を請求することができないのに対し、詐害行為取消権を行使した債権者は、費用の償還を請求することができます。

教授 : 債権者代位権や詐害行為取消権の行使は、訴えの提起による必要がありますか。

学生 : エ  債権者代位権の行使は、訴えの提起による必要がないのに対し詐害行為取消権の行使は、訴えの提起による必要があります。

教授 : 債権者代位訴訟や詐害行為取消訴訟では、誰を被告とする必要がありますか。

学生 : オ  債権者代位訴訟では、第二債務者及び債務者を被告とする必要があるのに対し、詐害行為取消訴訟では、受益者のみを被告とする必要があります。
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この過去問の解説 (3件)

01

正解は1です。

正しい選択肢の個数は1個なので、1が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 前段は正しい記述です。しかし、後段について、詐害行為取消権を行使するためには、債権者の債務者に対する金銭債務の履行期は到来している必要はないので、本選択肢は誤りです。

イ. 前段は正しい記述です。しかし、後段について、詐害行為取消権も、債権者の債務者に対する金銭債権の額の範囲でのみ行使をすることができるので、本選択肢は誤りです。

ウ. 債権者代位権を行使した債権者も、詐害行為取消権を行使した債権者も、どちらも費用の償還を請求すことができるので、本選択肢は誤りです。

エ. 債権者代位権は、必ずしも裁判上で行使する必要がないのですが、詐害行為取消権は、必ず裁判上で行使しなくてはなりません。従って、本選択肢は正しいです。


オ. 後段は正しいです。しかし、前段において、債権者代位権は、第三債務者を被告とする必要がありますので、本選択肢は誤りです。

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02

正しい記述はエの1個であり、1が正解です。

ア 債権者代位権は、原則として被保全債権の履行期が到来していなければ行使できませんが、保存行為の場合は、履行期が到来していなくても債権者代位権を行使することができます(民法423条2項)。これに対し、詐害行為取消権の被保全債権については、その取得時期が詐害行為前であれば、詐害行為の当時に履行期が到来していなくてもよいとするのが判例です(最判昭和46.9.21)。したがって、本記述は誤りです。

イ 債権者が金銭債権を保全するために金銭債権を代位行使する場合は、代位行使することができる範囲は、自己の債権額の範囲に限られます(民法423条の2。最判昭和44.6.24を明文化)。また、受益者への弁済について詐害行為取消権を行使して取り戻す場合も、詐害行為時における債権者の債権額が限度となります(民法424条の8第1項)。したがって、本記述は誤りです。

ウ 債権者が債権者代位権を行使した場合と詐害行為取消権を行使した場合のいずれの場合も、債権者が支出した費用は債務者に求償することができます。これは、一種の法定委任関係に基づく費用償還請求権と解されています(民法650条1項)。したがって、本記述は誤りです。

エ 債権者代位権は、裁判上、裁判外を問わず行使することができます。これに対し、詐害行為取消権の行使は、必ず訴えによらなければなりません(民法424条1項本文)。

オ 債権者代位権を行使して代位訴訟をする場合の被告は第三債務者です。債務者の権利を代位行使するので債務者が被告となることはありません。他方、詐害行為取消権を行使して訴えを提起する場合の被告は受益者のみです(民法424条の7第1項1号)。

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03

正解 1

ア 誤り
債権者は、保存行為を除き、その債権の期限が到来しない間は、被代位権利を行使することができません(民法423条2項)。
これに対し、詐害行為取消権については、「調停によって毎月一定額を支払うことと定められた将来の婚姻費用の分担に関する債権は、詐害行為当時いまだその支払期日が到来しない場合であっても、詐害行為取消権の成否を判断するにあたっては、これをもってすでに発生した債権というを妨げず、詐害行為当時、当事者間の婚姻関係その他の事情から、右調停の前提たる事実関係の存続がかなりの蓋然性をもって予測される限度において、これを被保全債権とする詐害行為取消権が成立するものと解すべきである。」とするのが判例です(最判昭和46年9月21日)。
したがって、詐害行為取消権を行使するためには、債務者の受益者に対する弁済の時点で履行期が到来している必要があるとしている点で本肢は誤りです。

イ 誤り
債権者は、被代位権利を行使する場合において、被代位権利の目的が可分であるときは、自己の債権の額の範囲においてのみ、被代位権利を行使することができます(民法423条の2)。
また、詐害行為取消権についても、債権者は、債務者がした行為の目的が可分であるときは、自己の債権の額の限度においてのみ、その行為の取消しを請求することができます(民法424条の8第1項)。

ウ 誤り
受任者は、委任事務を処理するのに必要と認められる費用を支出したときは、委任者に対し、その費用及び支出の日以後におけるその利息の償還を請求することができます(民法650条1項)。
そして、債権者代位権を行使した債権者及び詐害行為取消権を行使した債権者が費用を支出した場合は、いずれについても、民法650条1項に基づき、費用の償還を請求することができると解されています。

エ 正しい
債権者が被代位権利の行使に係る訴えを提起したときは、遅滞なく、債務者に対し、訴訟告知をしなければなりません(民法423条の6)。この規定からも、債権者代位権は、裁判上、裁判外を問わず行使できるものと想定されています。
これに対し、詐害行為取消権は、必ず訴えの提起によって行使しなければなりません(民法424条1項)。

オ 誤り
債権者代位訴訟において被告となるのは、第三債務者のみであって、債務者は被告に含まれません。これは、債権者代位訴訟が、債務者の権利を債権者が代位行使するための訴訟であるからです。
これに対し、詐害行為取消訴訟では、受益者または転得者が被告とする必要があります(民法424条の7第1項)。

以上から、正しい肢はエの一つであり、1が正解となります。

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