司法書士の過去問
平成26年度
午前の部 問18
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問題
平成26年度 司法書士試験 午前の部 問18 (訂正依頼・報告はこちら)
請負人の瑕疵担保責任に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。なお、住宅の品質確保の促進等に関する法律については、考慮しないものとする。
ア 請負契約における仕事の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、その損害賠償額に相当する範囲内に限り報酬の支払を拒むことができる。
イ 建物の建築請負契約においては、完成した建物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができない場合であっても、注文者は、契約の解除をすることができない。
ウ 木造建物の建築請負契約において、請負人は、建物又は地盤の瑕疵について引渡しの後5年間その担保の責任を負うが、この期間は、民法第167条の規定による消滅時効の期間内に限り、契約で伸長することができる。
エ 請負契約における仕事の目的物に瑕疵がある場合において、その修補が不可能であるときは、注文者は直ちに損害賠償を請求することができるが、修補が可能であるときは、注文者はまず修補を請求しなければならない。
オ 請負契約における仕事の目的物に瑕疵がある場合において、注文者が請負人に対して修補に代わる損害賠償の請求をした後、係争中の物価の高騰により、その請求時における修補費用よりも多額の費用を要することとなったときは、注文者は、請負人に対しその増加後の修補費用を損害として請求することができる。
(参考)
民法
第167条 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。
ア 請負契約における仕事の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、その損害賠償額に相当する範囲内に限り報酬の支払を拒むことができる。
イ 建物の建築請負契約においては、完成した建物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができない場合であっても、注文者は、契約の解除をすることができない。
ウ 木造建物の建築請負契約において、請負人は、建物又は地盤の瑕疵について引渡しの後5年間その担保の責任を負うが、この期間は、民法第167条の規定による消滅時効の期間内に限り、契約で伸長することができる。
エ 請負契約における仕事の目的物に瑕疵がある場合において、その修補が不可能であるときは、注文者は直ちに損害賠償を請求することができるが、修補が可能であるときは、注文者はまず修補を請求しなければならない。
オ 請負契約における仕事の目的物に瑕疵がある場合において、注文者が請負人に対して修補に代わる損害賠償の請求をした後、係争中の物価の高騰により、その請求時における修補費用よりも多額の費用を要することとなったときは、注文者は、請負人に対しその増加後の修補費用を損害として請求することができる。
(参考)
民法
第167条 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、20年間行使しないときは、消滅する。
※ 民法改正(2017(平成29)年5月成立、2020(令和2)年4月施行)により、改正前民法634条、635条、638条、639条は削除されました。 この設問は2014(平成26)年に出題された設問となります。
- アイ
- アエ
- イウ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア 請負の目的物に瑕疵がある場合の損害賠償請求権と、報酬支払債権相互間には、当事者のどちらか一方が相殺の意思表示をするまで同時履行の抗弁権が成立します(民法634条2項後段)。報酬額の方が損害賠償額より大きい場合でも、注文者は、信義則に反する場合を除き、損害賠償を受けるまで報酬全額の支払いを拒むことができます(最判平成9.2.14)。したがって、本記述は誤りです。
※ 改正により、瑕疵担保責任が契約不適合責任へと改められ、一般的に追完請求が認められるようになった関係で(改正民法562条1項)、請負の瑕疵修補請求に関する改正前民法634条は削除されました。
イ 仕事の目的物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約の解除をすることができます(民法635条本文)。ただし、建物その他の土地の工作物については、解除することはできません(同条ただし書)。したがって、本記述は(出題当時は)正しいです。
※ 改正により、改正前民法635条は削除されています。
ウ 建物その他の土地の工作物の請負で、工作物又は地盤に瑕疵がある場合、担保責任の追求は、仕事の目的物を引き渡したときから5年以内にしなければなりません(民法638条1項本文)。担保責任の存続期間は、契約で民法167条の消滅時効期間(10年)まで伸長することができます(民法639条)。したがって、本記述は(出題当時は)正しいです。
※ 改正により、改正前民法638条、639条は削除されています。
エ 注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができる(民法634条2項前段)。したがって、本記述は誤りです。
※改正により、改正前民法634条は削除され、改正後は564条が根拠となると考えます。
オ 判例(最判昭和36.7.7)は、「請負契約における仕事の目的物の瑕疵について、修補に代える損害の賠償を請求する場合の損害の額の算定は、修補請求の時が基準となる」としています。したがって、本記述は誤りです。
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02
正しい選択肢はイとウなので、3が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. このケースでは、注文者は、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬の全額の支払を拒むことができます。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 民法635条但書きでは「仕事の目的物には瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができないときは、注文者は、契約を解除することができます。ただし、建物その他の土地の工作物については、この限りではない」と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。
ウ. 民法639条は、「民法637条の期間及び前条(民法638条)第1項の期間は、第167条の消滅時効の期間内に限り、契約で伸長することができる」と規定しています。民法638条1項では、「建物その他の土地の工作物の請負人は、その工作物又は地盤の瑕疵について、引渡しの後5年間その担保責任を負う」と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。
エ. 最高裁昭和54年3月20日判決で「仕事の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の修補が可能なときであっても修補を請求することなく、直ちに、修補に代わる損害の賠償を請求することができる」と規定しています。従って、本選択肢は誤りです。
オ. 最高裁昭和36年7月7日判決では「請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、請負人に対して修補を請求したがこれに応じないので、修補に代わる損害の賠償を請求する場合においては、右修補請求の時を基準として、損害額を算定するのが相当である」としています。したがって、損害賠償の後の事情によって増加した修補費用は、損害の額には含まれず、注文者は、その損害賠償請求をすることができません。従って、本選択肢は誤りです。
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03
ア 誤り
請負契約の注文者が瑕疵の修補に代わる損害賠償債権をもって報酬全額の支払との同時履行を主張することの可否について、判例(最判平成9年2月14日)は、「請負契約の目的物に瑕疵がある場合には、注文者は、瑕疵の程度や各契約当事者の交渉態度等にかんがみ信義則に反すると認められるときを除き、請負人から瑕疵の修補に代わる損害の賠償を受けるまでは、報酬全額の支払を拒むことができ、これについて履行遅滞の責任も負わない。」と判示しています。
したがって、損害賠償額に相当する範囲内に限り報酬の支払を拒むことができるとしている点で本肢は誤りです。
イ 正しい
民法改正前では、建物の建築請負契約において、完成した建物に瑕疵があり、そのために契約をした目的を達することができない場合は、注文者は、契約の解除をできることとされていました(改正前民法635条)。
その後、民法改正により、改正前民法635条は削除されています。
ウ 正しい
民法改正前では、建物の建築請負契約において、請負人は、建物又は地盤の瑕疵について引渡しの後5年間その担保の責任を負い(改正前民法638条1項)、この期間は、民法167条の規定による消滅時効の期間内に限り、契約で伸長することができるとされていました(同639条)。
その後、民法改正により、改正前民法638条ないし639条は削除されています。
エ 誤り
民法改正前では、注文者は、瑕疵の修補に代えて、又はその修補とともに、損害賠償の請求をすることができるとされていました(改正前民法634条2項)。
その後、民法改正により、改正前民法634条は削除されています。
オ 誤り
請負契約の目的物の瑕疵修補に代る損害賠償請求と損害額算定の基準時について、判例(最判昭和36年7月7日)は、「請負契約における仕事の目的物の瑕疵につき、請負人に修補を請求したがこれに応じないので、修補に代る損害の賠償を請求する場合においては、右修補請求の時を基準として損害の額を算定するのが相当である。」と判示しています。
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