司法書士の過去問
平成26年度
午後の部 問62

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問題

平成26年度 司法書士試験 午後の部 問62 (訂正依頼・報告はこちら)

工場抵当又は工場財団の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  工場に属する土地ではない甲土地について抵当権の設定の登記がされている場合において、その後、甲土地が工場に属する土地となったときであっても、当該抵当権を工場抵当法第2条による抵当権に変更する旨の抵当権の変更の登記を申請することはできない。

イ  甲土地について工場抵当法第2条による抵当権の設定の登記がされている場合において、その後、新たに機械を甲土地に備え付けたときは、当該抵当権の登記名義人及び甲土地の所有権の登記名義人は、当該抵当権の変更の登記を共同して申請しなければならない。

ウ  工場財団について設定された抵当権の登記が全て抹消された後、当該工場財団について新たに抵当権の設定の登記を申請する場合には、抵当権の設定の登記が全て抹消されたときから6か月以内に申請しなければならない。

エ  工場財団の所有権の登記名義人が当該工場財団について賃貸借契約を締結した場合には、当該工場財団の抵当権者の同意があっても、当該工場財団について賃借権の設定の登記を申請することはできない。

オ  工場財団に属した旨の登記がされている甲土地の所有権の登記名義人が甲土地について賃貸借契約を締結した場合には、その工場財団の抵当権者の同意があっても、甲土地について賃借権の設定の登記を申請することはできない。


( 参考 )
工場抵当法
第2条 工場ノ所有者カ工場ニ属スル土地ノ上ニ設定シタル抵当権ハ建物ヲ除クノ外其ノ土地ニ附加シテ之ト一体ヲ成シタル物及其ノ土地ニ備附ケタル機械、器具其ノ他工場ノ用ニ供スル物ニ及フ但シ設定行為ニ別段ノ定アルトキ及民法第四百二十四条ノ規定ニ依リ債権者カ債務者ノ行為ヲ取消スコトヲ得ル場合ハ此ノ限ニ在ラス
2 ( 略 )
  • アイ
  • アウ
  • イオ
  • ウエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 4 です。

正しい選択肢はウとエなので、4が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 「機械器具目録に記録すべき事項を明らかにした情報」を提供すれば、普通抵当権を工場抵当法2条に規定する抵当権に変更する旨の登記ができます。従って、本選択肢は誤りです。

イ. 新に機械を備え付けたときは、機械器具目録の変更登記をしなければ、抵当権の効力が及ぶことを対抗することができません。この変更登記は工場所有者が単独で申請することができます(工場抵当法38条、39条、3条4項参照)。従って、本選択肢は誤りです。

ウ. 工場財団は、抵当権の目的とするために設定されるものであるので、工場財団の所有権保存の登記をした後、6か月以内に抵当権設定の登記をしないときは、その効力を失うものとされています(工場抵当法10条参照)。従って、本選択肢は正しいです。

エ. 工場財団は、抵当権者の同意を得て賃貸することはできますが、賃借権の設定登記をすることはできません(工場抵当法14条2項参照)。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 工場財団に属するものは、これを譲渡し又は所有権以外の権利、差押え、仮差押え若しくは仮処分の目的となすことはできないが、抵当権者の同意を得れば、賃借権を設定することはできます(工場抵当法13条2項参照)。従って、本選択肢は誤りです。

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02

正解は4です。工場抵当法の条文をよくおさえておく必要があります。

ア…誤りです。いったん通常の抵当権が設定された不動産であっても、当該不動産が工場財団に属するようになった場合、工場抵当法3条にいう工場目録を提出して、工場抵当法の適用のある抵当権(工場抵当権)への変更ができるとされています(昭26・10・22民甲2050号回答)。なお、工場目録の提出は、工場財団の組成物に関して、第三者ならびに後順位抵当権者に対する対抗要件でもあります(先例)。

イ…誤りです。工場抵当法の適用のある抵当権がすでに設定されており、工場抵当法3条にいう工場目録に変更を生じた場合、工場財団の所有者は遅滞なくその変更の登記を申請しなければなりませんが、抵当権者と共同で申請する必要はなく、抵当権者の同意を証する書面、または、これに代わる裁判所の命令を証する書面を付せば十分です(工場抵当法38条1項、2項)。

ウ…正しいです。工場財団にかけられた抵当権の抹消または消滅があった場合、6か月以内に新たに抵当権を設定しないときは、工場財団が消滅します(工場抵当法8条3項)。

エ…正しいです。工場財団は、工場に属する工作物や機械器具などだけでなく、地上権、賃借権なども含めて、一個の不動産として抵当権の対象とすることを目的としています(工場抵当法11条各号)。抵当権者の同意がある場合、賃貸借をすることはできますが、工場財団全体には所有権と抵当権以外の事項を登記することはできないようになっています(工場抵当法14条2項、20条3項)。

オ…誤りです。上述の通り、一個の工場財団としては賃借権の登記はできませんが、工場財団のうちの組成物については、その組成物が不動産である場合に限り、賃借権の登記が認められています(工場抵当法13条2項ただし書)。本問においては、工場財団成立後に、賃貸借契約がされていますので、問題なく登記できます(工場抵当法13条1項)。

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03

ア誤
普通抵当権を工場抵当法2条による抵当権に変更することはできます。

イ誤
新たに機械を設置した際の登記は単独申請が可能です。

ウ正
その通り。工場財団は6カ月以内に抵当権設定登記の申請をしなければなりません。

エ正
工場財団について賃借権の設定登記はできません。

オ誤
賃借権の設定は抵当権者の同意により可能です。

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