司法書士の過去問
平成26年度
午後の部 問65

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問題

平成26年度 司法書士試験 午後の部 問65 (訂正依頼・報告はこちら)

取締役会設置会社の本店移転又は支店移転の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  本店を甲県所在のA登記所の管轄区域内から乙県所在のB登記所の管轄区域内に移転する本店移転の登記の申請を取り下げる場合には、B登記所に対し、取下書1通 ( A登記所及びB登記所宛ての申請をともに取り下げる旨の記載のあるもの )を提出すれば足りる。

イ  本店を甲県所在のA登記所の管轄区域内から乙県所在のB登記所の管轄区域内に移転する本店移転の登記を代理人によって申請する場合には、A登記所宛ての申請書及びB登記所宛ての申請書のいずれにも、代理人の権限を証する書面を添付しなければならない。

ウ  取締役会で支店の移転の時期を「平成26年7月1日から1週間」と概括的に定めた後、その範囲内の日に現実に支店を移転した場合であっても、当該支店の移転の後に改めて取締役会で当該支店の移転を承認しなければ、支店移転の登記を申請することができない。

エ  本店の移転に当たり定款の変更を要しない場合において、現実に本店を移転した後に取締役会で当該本店の移転を承認する決議をしたときは、当該決議の日に本店の移転があったものとみなして本店移転の登記を申請することができる。

オ  本店を甲県所在のA登記所の管轄区域内から乙県所在のB登記所の管轄区域内に移転する本店移転の登記が申請された場合において、B登記所の登記官が新所在地における登記の申請を却下したときは、その旨の通知を受けたA登記所の登記官は、旧所在地における登記の申請を却下しなければならない。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 4 です。

正しい選択肢はイとエなので、4が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 先例は、管轄外への本店移転の登記を取り下げる場合には、①旧所在地を管轄する登記所が新所在地あての登記の申請書を送付する前であるときは、旧所在地を管轄する登記所に対して取下書1通提出すれば足り、②旧所在地を管轄する登記所が新所在地あての登記申請書を送付した後にあっては、新所在地を管轄する登記所に対して取下書を2通提出しなければならない、としています(昭和39年8月6日民甲2712参照)。従って、本選択肢は誤りです。

イ. 管轄外への本店移転の登記を代理人によって申請する場合、旧所在地あて及び新所在地あて申請書のいずれについても、代理人の権限を証する書面を添付しなければなりません(商業登記法51条参照)。従って、本選択肢は正しいです。

ウ. 先例は、株式会社の支店移転登記申請において、移転の日が取締役会議事録の記載と相違するときは、当該申請は却下される。もっとも、取締役会で支店の移転時期を概括的に定めた場合、移転の日がその決議の範囲内であれば、改めて取締役会で支店移転の承認をしなくても、当該登記の申請は受理されます(昭和41年2月7日民4.75参照)。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 先例は、定款の変更を伴わない本店の移転を行う場合につき、現実に本店を移転した後に、取締役会で当該本店移転の決議を承認した時は、その決議の日に本店移転があったものとして本店移転の登記を申請することができる、としています(昭和35年12月6日民甲3060参照)。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 管轄外への本店移転の登記の申請は、旧所在地を管轄する登記所を経由してしなければなりません。この場合において、新所在地を経由する登記所の登記官が当該登記の申請を却下したときは、旧所在地における登記の申請は、却下したものとみなされます。従って、本選択肢は誤りです。

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02

ア誤
管轄外への本店移転登記を取り下げる際に取下書は二通要する場合があります。

イ正
その通り。商業登記法51条。

ウ誤
移転時期が概括的に定められている場合は期間内であれば改めて取締役の移転承認が不要です。

エ正
その通り。決議の日に移転があったものとされます。

オ誤
旧所在地における登記申請を却下しなければならないわけではありません。

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03

正解は4です。

本店の移転に際しては、原則として定款の変更を要し、株主総会の特別決議が必要ですが、定款の変更を要しない場合(定款で本店の市町村まで定められており、同一市町村内で移転する場合など)には、取締役会の決議(取締役会非設置会社にあっては、取締役の過半数の一致)をもって本店の移転場所を決定することができます。しかし、移転の効力が発生するのは、あくまで本店が現実に移転したとき、すなわち新しい所在地で実際に営業を開始したときです(H16過去問)。

ア…誤りです。本問のように本店がいわゆる管轄外移転を行う場合、旧所在地での(A登記所への)本店移転の登記申請と、新所在地での(B登記所への)本店移転の登記申請が必要です(会社法916条)。また、B登記所への申請は、必ずA登記所を経由してしなければなりません(商業登記法51条1項、2項)。したがって、本店移転の登記の取下げを行うにあたり、①A登記所がB登記所への申請書を送付する前に取下げられた場合には、A登記所への取下書1通、②A登記所がB登記所への申請書を送付した後に取り下げられた場合には、B登記所への取下書2通、が必要とされています(昭39・8・6民甲2712号)。

イ…正しいです。管轄外移転の場合の添付書類は、本問の場合、A登記所へは、管轄内移転と同じく、①定款を変更した場合、株主総会議事録(商業登記法46条1項)、②定款を変更しなかった場合、取締役会議事録(取締役会非設置会社にあっては、取締役の過半数の一致があったことを証する書面)(商業登記法46条1項、2項)、③代理権限証書(商業登記法18条)、が必要です。B登記所には、代理権限証書のみ必要です(商業登記法51条3項、18条)。

ウ…誤りです。支店の移転に関しては、取締役会の決議(取締役会非設置会社にあっては、取締役の過半数の一致)をもって決定することができます。本問のように現実に移転した日を含む概括的な日付を決定することもでき、移転の日がその決定の期間内である場合にも、移転の登記を問題なく申請することができます(昭41・2・7民四75号)。

エ…正しいです。本店の営業を開始した日の後に取締役会の決議(取締役会非設置会社にあっては、取締役の過半数の一致)があった場合には、取締役会の決議のあった日から移転があったとみなすことができるとされています(昭35・12・6民甲3060号)。

オ…誤りです。本店移転の申請がされた後、A登記所では、B登記所での本店移転の登記がされるまで、本店移転の登記をしません。B登記所で本店移転の登記が却下された際には、A登記所でも本店移転の登記が却下されたものとみなされます(商業登記法52条5項)。A登記所では、あらためて却下処分を行うわけではありません。

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