司法書士の過去問
平成28年度
午前の部 問3

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

平成28年度 司法書士試験 午前の部 問3 (訂正依頼・報告はこちら)

司法権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  大学における単位認定行為は、一般市民法秩序と直接の関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情のない限り、大学の内部的な問題として、司法審査の対象とならない。

イ  国会議員の資格に関する争訟は、法律上の争訟であるから、司法審査の対象となる。

ウ  下級裁判所の裁判官は、司法権の独立の観点から、最高裁判所によって任命される。

エ  再審を開始するか否かを定める刑事訴訟法の手続は、刑罰権の存否及び範囲を定める手続ではないから、公開の法廷における対審の手続によることを要しない。

オ  裁判所は、政治犯罪、出版に関する犯罪又は憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件を除いて、裁判官の過半数をもって、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあると決した場合には、非公開で対審を行うことができる。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • ウオ

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

正解は 1 です。

正しい選択肢はアとエなので、1が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 判例は、単位授与行為は、他にそれが一般市民法秩序と直接関係を有するものであることを肯認するに足りる特段の事情がない限り、純然たる大学内部の問題として、大学の自主的、自立的な判断にゆだねられるべきであり、裁判所の司法審査の対象とならないと解するのが、相当である」としています(最高裁昭和52年3月15日判決)。従って、本選択肢は正しいです。

イ. 国会議員の資格に関する争訟は、法律上の争訟ではあるが、憲法76条の例外として、司法審査から除外されています。従って、本選択肢は誤りです。

ウ. 下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命します(憲法80条1項参照)。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 判例は「憲法82条は、刑事訴訟についていうと、刑罰権の存否並びに範囲を定める手続きについて、公開の法廷における対審及び判決によるべき旨を定めたものであって、再審を定める手続きはこれに含まないと解すべき」と規定しています(最高裁昭和42年7月5日判決)。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良な風俗を害する恐れがあると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行うことができます。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又は憲法第3章で保障する国民の権利が問題となっている事件の対審は、常にこれを公開しなければなりません(憲法82条2項参照)。従って、本選択肢は誤りです。

参考になった数22

02

正解は1です。

ア…正しいです。国立大学の学生らが、ある教授の単位認定の試験に合格したが、大学側はあらかじめ当該学生らに不行跡の科で同教授の授業担当停止措置をとっており、単位認定が認められなかった件で、大学側の行為が違法でないかについて、判例は「国公立大学であるかに関わらず、特殊な部分社会である大学における法律上の係争のすべてが司法審査の対象となるわけではなく、単位認定行為は、純然たる大学内部の問題として大学の自主的、自律的判断に委ねられるものであって、司法審査の対象とはならない」としています(最判昭52・3・15、富山大学単位不認定事件)。

イ…誤りです。国会議員の資格争訟は各議院で行われ、出席議員の3分の2以上の議決があった際には議員は議席を失います(55条ただし書)。これは憲法自らが司法権の限界について定めたものであり、当該議員が裁判所に対し、議員の資格争訟に関する司法審査を訴え出ることはできません。

ウ…誤りです。司法権の独立は、裁判所の独立および裁判官の独立をいい、内閣や国会など司法権以外の権力から、裁判所と裁判官が干渉を受けないことを指します。下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名によって、内閣により任命されます(80条1項)。裁判官の人事について完全に独立しているわけではありません。

エ…正しいです。裁判の対審および判決は、公開法廷で行われます(82条1項)。しかし、刑事訴訟について、刑事事件の再審を行うか否かを定める刑事訴訟法の手続きは、刑罰権の存否および範囲を定める手続きでないため、公開の法廷で行う必要はないとしています(最判昭42・7・15)。

オ…誤りです。政治犯罪、出版に関する犯罪または憲法第三章で保障する国民の権利が問題になっている事件の対審は、つねにこれを公開しなければなりません(82条2項ただし書)。また、これに該当しない場合でも、裁判官の「全員一致」で、公の秩序または善良の風俗を害すると決した場合でなければ、対審を非公開にできません(82条2項)。

参考になった数9

03

ア正
大学の単位認定処分は司法審査の対象となりません。

イ誤
国会議員の資格に関する争訟は司法審査の対象となりません。

ウ誤
下級裁判官は内閣によって任命されます。

エ正
再審決定の判断は公開であることを要しませんm。

オ誤
非公開決定は裁判官の過半数ではなく全員一致で決まります。

参考になった数8