司法書士の過去問
平成28年度
午前の部 問5

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問題

平成28年度 司法書士試験 午前の部 問5 (訂正依頼・報告はこちら)

Aは、Bから代理権を授与されていないにもかかわらず、Bの代理人と称して、Cとの間でB所有の甲土地の売買契約(以下「本件売買契約」という。)を締結した。この事例に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。なお、本件売買契約に関する行為は、商行為には当たらないものとする。


ア  本件売買契約の締結後にBがAに対して追認をした場合において、追認の事実をCが知らないときは、これをCに対抗することができない。

イ  本件売買契約の締結後にCがBに対し相当の期間内に追認をするかどうかを確答すべき旨の催告をした場合において、Bがその期間内に確答をしないときは、Bは、本件売買契約に基づく責任を負う。

ウ  本件売買契約の締結後にBが追認を拒絶した場合には、その後にAがBを単独で相続したとしても、本件売買契約は有効にならない。

エ  本件売買契約の締結後にAが他の相続人と共にBを共同相続した場合には、当該他の相続人が追認を拒絶したとしても、Aの相続分に相当する部分において、本件売買契約は有効になる。

オ  本件売買契約の締結後にAがBから甲土地の譲渡を受けた場合においても、Cは、その選択に従い、Aに対し、履行の請求又は損害賠償の請求をすることができる。
  • アイ
  • アオ
  • イエ
  • ウエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

誤っている選択肢はイとエです。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

選択肢3. イエ

ア. 民法113条2項では、追認又はその拒絶は、相手方に対してしなければ、その相手方に対抗できない。ただし、相手方がその事実を知った時はその限りではない、と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。

イ. 民法114条は、無権代理に場合において、相手方は、本人に対して、相当の期間を定めて、その期間内に追認するかどうかを確答すべき旨を催告することができる。この場合において、本人がその期間内に確答をしない時は、追認を拒絶したものとみなす、と規定しています。本選択肢のBは追認を拒絶したものとみなされ、本件売買契約に基づく責任を負うことはないので、本選択肢は誤りです。

ウ. 判例は、本人が無権代理行為の追認を拒絶した場合には、その後に無権代理人が本人を相続したとしても、無権代理行為が有効になるものではない、としています(最高裁平成10年7月17日判決)。従って、本選択肢は正しいです。

エ. 判例は、追認は、共同相続人が全員で共同してこれを行使しない限り、無権代理行為が有効になるものではない、としています(最高裁平成5年1月21日判決)。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 民法117条1項は、他人の代理人として契約した者は、自己の代理権を証明することができず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときは、相手方の選択に従い、相手方に対して履行又は損害賠償の責任を負う、と規定しています。また、判例は、無権代理人は、民法117条の定めるところにより、相手方の選択に従い、履行又は損害賠償の責任に任ずべく、相手方が履行を選択し、無権代理人が前記不動産の所有権を取得するに至った場合においては、前記売買契約が無権代理人自身との間に成立したと同様の効果を生じると解するのが相当である、としています(最高裁昭和41年4月26日)。従って、本選択肢は正しいです。

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02

ア正
その通り。BがCに対して対抗するにはCに追認の意思表示をしなければなりません。

イ誤
催告に対して期間内に確答しないときは追認を拒絶したものとみなされます。

ウ正
Bの追認拒絶によって本件売買契約が有効にならないことが確定します。

エ誤
当該記述の場合売買契約はAの相続分に相当する部分において有効となりません。

オ正
その通り。CはAに対して履行の請求又は損害賠償の請求をすることができます。

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03

正解はイエです。

選択肢3. イエ

ア…正しいです。無権代理の追認またはその拒絶は、相手方に対してしなければ、その効力は生じません(113条2項)。また、相手方がその事実を知ったときは、相手方に対してしたのと同じく、追認または拒絶の効力が生じますが(同項ただし書)、知らなかったときは効力が生じません。

イ…誤りです。無権代理を行った人間Aが代理した本人Bが、契約の相手方Cから、相当の期間内に追認をするかどうか催告された場合、Bが期間内に追認をしなかったときは、追認を拒絶したものとみなされます(114条)。契約は無効になるので、契約に関する責任は負いません。制限行為能力者による契約の場合と混同しないようにしてください。

ウ…正しいです。無権代理を行った人間Aが代理した本人Bが、追認を拒絶した場合、無権代理の効力がBに及ばないことが確定しており、その後にAがBを単独で相続しても、追認拒絶の効果に何らの影響も及ぼしません(最判平10・7・17)。

エ…誤りです。無権代理行為を行ったAが、他の相続人とともに本人Bを相続した場合、無権代理行為を追認する権利は、共同相続人全員に受け継がれており、無権代理を行ったAは信義則上追認を拒絶することができませんが、その他の相続人には追認を拒絶する権利があると考えられます。判例は、他の共同相続人全員の同意がない限り、無権代理人の相続分に相当する部分においても、無権代理行為は当然には有効にならないとしています(最判平5・1・21)。

オ…正しいです。無権代理行為の相手方Cは無権代理人Bに対し、契約の履行または損害賠償を請求できます(民法117条1項)。無権代理人がこの責任を逃れるためには、(相手側が悪意・有過失であるか、無権代理人自身が制限行為能力者でない限り)自己の代理権を証明するか、本人からの追認を得なければなりません(117条1項の例外、同条2項)。無権代理人Aが本人Bから、契約の目的物である不動産の譲渡を受けてその所有権を取得するに至った場合も、この例外ではなく、本人(本問のB)の追認など、責任を免れると主張しうるに足る事実が明らかにされない限り、相手方Cが履行を請求したときには、AとCとの契約が成立したと同様の効果を生ずる(=無権代理行為自体の無効を理由に、契約の無効を主張することはできない)とされます(最判昭41・4・26)。

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