司法書士の過去問
平成28年度
午前の部 問8

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問題

平成28年度 司法書士試験 午前の部 問8 (訂正依頼・報告はこちら)

Aの所有するパソコン(以下「動産甲」という。)の取引に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  Aが動産甲をBに貸していたところ、Bの家から動産甲を盗んだCが、自己の所有物であると偽って、Cが無権利者であることについて善意無過失のDに動産甲を売り渡した場合には、Bは、盗難の時から2年以内であれば、Dに対して動産甲の返還を請求することができる。

イ  Aから動産甲を詐取したBが、自己の所有物であると偽って、Bが無権利者であることについて善意無過失のCに動産甲を売り渡した場合には、Aは、詐取された時から2年以内であれば、Cに対して動産甲の返還を請求することができる。

ウ  Aの家から動産甲を盗んだBが、自己の所有物であると偽って、Bが無権利者であることについて善意無過失のCに代物弁済により動産甲を引き渡した場合には、Aは、盗難の時から2年を経過した後であっても、Cに対して動産甲の返還を請求することができる。

エ  Aの家から動産甲を盗んだBが、自己の所有物であると偽って、公の市場において、Bが無権利者であることについて善意無過失のCに動産甲を売り渡した場合において、AがCに対して動産甲の返還を請求する前に動産甲が滅失したときは、Aは、盗難の時から2年以内であれば、Cに対して動産甲の回復に代わる賠償を請求することができる。

オ  Aの家から動産甲を盗んだBが、自己の所有物であると偽って、公の市場において、Bが無権利者であることについて善意無過失のCに動産甲を売り渡した場合には、AがCに対して盗難の時から2年以内に動産甲の返還を請求し、Cが動産甲をAに返還した後であっても、Cは、Aに対して、CがBに支払った代価の弁償を請求することができる。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 民法193条は、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は、盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対して、そのの回復を請求することができる、と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。

イ. 民法193条は、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対して、そのの回復を請求することができる、と規定していますが、詐取されたものは盗品又は遺失物に該当しないため、本選択肢には民法193条の適用はなく、従って、本選択肢は誤りです。

ウ. 民法193条は、占有物が盗品又は遺失物であるときは、被害者又は遺失者は盗難又は遺失の時から2年間、占有者に対して、そのの回復を請求することができる、と規定していますが、本選択肢では、2年が経過している以上、AはCに対して動産甲の返還を請求することができず、従って、本選択肢は誤りです。

エ. 判例は、盗品回収請求権を行使する前に物が滅失したときは、盗品回復請求権は消滅し、回復に代わる賠償も請求することができない、としています(最高裁昭和26年11月27日判決)。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 判例は、占有者は動産の引渡し後も、なお、民法194条に基づき、被害者に対して代価の弁償を請求することができる、としています(最高裁平成12年6月27日判決)。従って、本選択肢は正しいです。

選択肢2. アオ

正解です。

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02

正解は2です。

ア…正しいです。本問のDは、動産を無権利者Cから取引行為によって取得し、Cが無権利者であることにつき善意・無過失であるので、動産甲を即時取得できます(192条)。よって、元の占有者Bでも占有回収の訴えなどを適用することはできず、動産甲につき盗品の回復を主張することになります。よって、盗まれた被害者であるBは、盗難から2年以内であれば、無償で動産甲の回復を請求することができます(193条)。

イ…誤りです。本問のCは、選択肢アと同様、動産を無権利者Bから取引行為によって取得し、Bが無権利者であることにつき善意・無過失であるので、動産甲を即時取得できますが、元の所有者Aは詐欺によって動産を奪われたので、民法193条または194条を適用することはできません。また詐欺を行ったのは第三者ではなく、動産甲を譲渡した相手方Bであるので、譲渡の取消しを主張することもできません。よってAはCに動産甲を返還するよう主張できません。

ウ…誤りです。本問のCは、選択肢イと同様、動産甲を即時取得でき、元の所有者Aは盗品の回復を主張することになります(193条)。しかし、盗難の時から2年を経過した場合は、占有者Cに対して盗品の回復を主張できません。この期間は除斥期間とみなされており、当事者による援用がなくても当然に盗品回復請求権は消滅します。よってAはCに動産甲の返還を請求することができません。なお、代物弁済も192条にいう取引行為として認められています。

エ…誤りです。本問のCは、選択肢イと同様、動産甲を即時取得できるので、元の所有者Aは盗品の回復を主張することになり、Cは公の市場で当該動産を買い受けているので、AはCが支払った代価を弁償して回復請求を行うことになります(194条)。しかし盗品の回復請求前に、その物が滅失したときは、盗品回復請求権は消滅するのみならず、回復に代わる賠償も請求することができません(最判昭26・11・17)。

オ…正しいです。本問のCは、選択肢イと同様、動産甲を即時取得できるので、元の所有者Aは盗品の回復を主張することになり、Cは公の市場で当該動産を買い受けているので、AはCが支払った代価を弁償して回復請求を行うことになります(194条)。Aが代価を弁償せずにCから動産甲の引渡しを受けた場合でも、本来Cは引渡しを拒むことができる立場にあり、Aは動産の回復を諦めるか、代価の弁償をして回復するかという選択ができるところ、Cから動産の引渡しを受けたことにより、代価を弁償して回復することを選択したとみなされるので、動産がAに返還された後も、CはAに対し代価の弁償を請求することができるとされます(最判平12・6・27)。

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03

ア正
民法193条。占有者から動産甲を盗んだ場合、譲受人が善意であっても被害者は占有者に対して、二年間物の回復を請求できます。

イ誤
民法193条は詐欺によって占有を奪われた場合には適用されません。

ウ誤
盗難から二年が経過すると193条によって占有権の回復を図ることはできません。

エ誤
仮に動産甲が滅失していない場合、Aは自己の費用で即時取得者が支払った代価を弁償しなければなりません。したがって、Cに対して賠償の請求をすることできません。

オ正
その通り。動産を返還した後にも194条に基づき弁償請求をすることができます。

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