司法書士の過去問
平成28年度
午前の部 問13

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問題

平成28年度 司法書士試験 午前の部 問13 (訂正依頼・報告はこちら)

法定地上権に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  Aが、その所有する更地である甲土地にBのために抵当権を設定した後、甲土地上に乙建物を建築し、その後、抵当権が実行され、Cが甲土地の所有者になった。この場合、AとBが抵当権設定当時、将来Aが甲土地上に建物を建築したときは競売の時に地上権を設定したものとみなすとの合意をしていたとしても、乙建物のための法定地上権は成立しない。

イ  Aが、その所有する更地である甲土地にBのために抵当権を設定した後、甲土地上に乙建物を建築し、さらに甲土地にCのために抵当権を設定し、その後、Cの申立てにより抵当権が実行され、Dが甲土地の所有者になった。この場合、AB間の抵当権設定当時、BがAによる乙建物の建築に同意していたときは、乙建物のための法定地上権が成立する。

ウ  Aが、Bの所有する甲土地をBから買い受けて、甲土地上に乙建物を建築し、甲土地について所有権の移転の登記をする前に、乙建物にCのために抵当権を設定し、その後、その抵当権が実行され、Dが乙建物の所有者になったときは、乙建物のための法定地上権は成立しない。

エ  Aの所有する甲土地及び甲土地上の乙建物にBのための共同抵当権が設定された後、乙建物が取り壊され、甲土地を賃借したCが丙建物を新築した。この場合、甲土地についての抵当権が実行され、Dが甲土地の所有者になったときは、丙建物のための法定地上権は成立しない。

オ  Aが、その所有する甲土地にBのために抵当権を設定した当時、甲土地上にA及びCが共有する乙建物が存在し、その抵当権が実行され、Dが甲土地の所有者になったときは、乙建物のための法定地上権が成立する。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 3 です。

誤っている選択肢は、イ及びウとなりますので、3が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 判例は、更地に抵当権が設定され、その際、設定当事者間で将来建物を建築したときは地上権を設定したものと見做すとの合意があった場合でも、その合意自体は、買受人に対抗できるものではない、としています。(大審院昭和7年12月6日判決)。従って、本選択肢は正しいです。

イ. 判例は、民法388条により法定地上権が成立するためには、抵当権設定当時において地上に建物が存在することを要するのであって、抵当権設定後の土地の上に建物を築造した場合には、原則として同条の適用はないものと解するのが相当である、としています。(最高裁昭和36年2月10日判決)。従って、本選択肢は誤りです。

ウ. 建物抵当権者は、建物に抵当権の設定を受ける時点で、土地と建物の所有関係及び土地の利用権限を調査し、両者が共に同一人に属していることを確認するので、判例は、本記述と類似の事案において、抵当権の実行において本件建物を競落した被上告人が法定地上権を取得する、としています。(最高裁昭和53年9月29日判決)。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 判例は、所有者が土地及び地上建物に共同抵当権を設定した後、右建物が取り壊され、右土地上に新たに建物が建築された場合には、新建物の所有者が土地の所有者と同一であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたとき等の特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しないと解するのが相当である、としています。(最高裁平成9年2月14日判決)。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 判例は、建物の共有者の一人がその建物の敷地たる土地を単独で所有する場合には、同人が右土地に抵当権を設定し、この抵当権の実行により、第三者が右土地を競落したときは、民法388条の趣旨により、抵当権設定当時同人が土地及び建物を単独で所有していた場合と同様、右土地の法定地上権が成立するものと解するのが相当である、としています。(最高裁昭和46年12月21日判決)。従って、本選択肢は正しいです。 

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02

正解は3です。

法定地上権が成立する条件は、①抵当権設定当時に土地の上に建物が存在していること、②抵当権設定当時に土地と建物の所有者が同じであること、③土地と建物の少なくとも一方に抵当権が存在していること、④競売の結果、土地と建物が異なる所有者になったこと、です(388条)。

ア…正しいです。土地に抵当権を設定した時に、建物が存在していない場合、法定地上権は成立しません。たとえ建物の建築について、土地の抵当権者の同意があったとしても、土地に対する抵当権の設定時に、更地としての評価しかできないため、法定地上権は成立しないといえます(最判昭36・2・10)。

イ…誤りです。土地に1番抵当権を設定した後に、建物が築造され、さらにその後当該土地に2番抵当権が設定され、抵当権が実行されて競売された場合でも、土地は1番抵当権の設定時を基準に競売されているので、法定地上権は成立しません(最判昭47・11・2)。

ウ…誤りです。土地と建物の所有者が抵当権設定当時に同一であるが当該土地について所有権移転の登記がなされていなかった場合でも、後に建物が競売されて所有者が異なったときは、法定地上権が成立します(最判昭53・9・29)。法定地上権は建物の保護に意義があり、もともと同一の所有であった建物と土地とが異なる所有になることによって、建物の収去を余儀なくされる場合に備え、建物所有のための土地利用権を保護するためのものであることから、所有権の登記ではなく所有の実態を優先して考えるという方針です(最判昭48・9・18)。

エ…正しいです。土地と建物に共同抵当権を設定した後に、建物が建て替えられた場合、新建物と土地の所有者が同一人であり、かつ、新建物が建築された時点での土地の抵当権者が新建物について土地の抵当権と同順位の共同抵当権の設定を受けたときなど、特段の事情のない限り、新建物のために法定地上権は成立しません。抵当権設定者は、建物が取り壊されたときは、法定地上権の制約のない更地としての担保価値を把握しようとする合理的意思であり、新建物について法定地上権を認めるとすると、抵当権者が当初は土地全体の価値を把握していたのに、法定地上権の価額相当分だけ減額された土地の価値に限定されることによって、不測の損害を被る結果になるからです(最判平9・2・14)。

オ…正しいです。建物を共有している共有者の一人が、法定地上権の成立要件を満たす場合、共有建物について原則として法定地上権が成立します。土地を共有する場合と異なり、建物を共有している場合は、他の共有者の不利益とはならないためです。本問のように、建物の建っている土地が、建物の共有者のうちの一人の単有である場合、当該土地に抵当権を設定して実行され、土地のみ第三者の所有になったときは、共有物である建物のために法定地上権が成立します(最判昭46・12・21)。

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03

イとウが誤りの肢ですので、3が正解になります。

ア. 法定地上権が成立するためには抵当権設定時、土地上に建物があることが要件となります。更地に抵当権を設定後、建物が建築されても設定時に建物がない以上、法定地上権は成立しません。
当事者の合意については判例が買受人に対抗できないとしています。

イ. 上記アのとおり設定時に建物がない場合、法定地上権は成立しません。Bのために抵当権を設定したときに土地上に建物がないため成立しません。

ウ. 抵当権設定時にAの土地にAの建物があるため成立します。登記上、同一人物でなくとも実際上同一人物である場合は成立するとする判例があります。

エ. 抵当権設定時に土地上に建物があるため成立要件を満たしそうですが、この場合は例外のケースになります。建物が取り壊されることにより担保価値が下がり、抵当権者に不測の損害をもたらすからです。平成9年2月14日の判例を押さえてください。

オ. Aの土地上にA、Cの共有建物が存在します。法定地上権は共有者Cにとっても有益ですのでこの場合は成立します。

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