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司法書士の過去問 平成28年度 午前の部 問14

問題

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甲土地(価額4000万円)及び乙土地(価額6000万円)についてAのBに対する債権(債権額5000万円)を担保するために第1順位の共同抵当権が設定された後、甲土地についてCのBに対する債権(債権額6000万円)を担保するために第2順位の抵当権が設定され、乙土地についてDのBに対する債権(債権額4000万円)を担保するために第2順位の抵当権が設定された場合に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。なお、各債権の利息その他の附帯の債権及び執行費用は、考慮しないものとする。


ア  甲土地及び乙土地をBが所有する場合において、Aが乙土地に設定された抵当権を実行してその代価から5000万円の配当を受けた後、Cが甲土地に設定された抵当権を実行したときは、Dは、甲土地の代価から3000万円の配当を受けることができる。

イ  甲土地及び乙土地をEが所有する場合において、Aが甲土地に設定された抵当権を放棄した後に、乙土地に設定された抵当権が実行されたときは、Dは、乙土地の代価から3000万円の配当を受けることができる。

ウ  甲土地をEが、乙土地をBが所有する場合において、Aが甲土地に設定された抵当権を実行してその代価から4000万円の配当を受けた後、Aが乙土地に設定された抵当権を実行したときは、Cは、乙土地の代価から4000万円の配当を受けることができる。

エ  甲土地をEが、乙土地をBが所有し、AE間に「Eが弁済等によって取得する権利は、AとBとの取引が継続している限りAの同意がなければ行使しません。」との特約がある場合において、Aが甲土地に設定された抵当権を実行してその代価から4000万円の配当を受けた後、Aが乙土地に設定された抵当権を実行したときは、Cは、乙土地の代価から配当を受けることができない。

オ  甲土地をEが、乙土地をBが所有し、AE間に「Eは、Aがその都合によって担保又はその他の保証を変更、解除しても免責を主張しません。」との特約がある場合において、Aが乙土地に設定された抵当権を放棄した後、FがEから甲土地を買い受けたときは、Fは、甲土地に設定されたAの第1順位の抵当権の抹消登記手続を請求することができる。
   1 .
アエ
   2 .
アオ
   3 .
イウ
   4 .
イエ
   5 .
ウオ
( 平成28年度 司法書士試験 午前の部 問14 )
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この過去問の解説 (3件)

11
正解は 3 です。

正しい選択肢はイ及びウなので、3が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 民法392条2項前段では、共同抵当権の目的不動産をいずれも債務者が所有している場合において、ある不動産の代価のみを配当するときは、抵当権者は、その代価から債権の全部の弁済を受けることができる、と規定しています。また、民法392条2項後段では、その場合、次順位の抵当権者は、代価が同時に配当されていれば抵当権者が受けるべきであった額を限度として、その抵当権者に代位して抵当権を行使することができる、と規定しています。よって、Aは、同時に配当がされていれば、甲土地から2,000万円の配当を受けるべきであったので、DがAに代位して配当を受けることができるのは、2,000万円となるので、本選択肢は誤りです。

イ. 判例は、共同抵当権者が、その目的となっている1つの不動産上の抵当権を放棄して他の不動産のみを実行した場合、当該他の不動産に後順位の抵当権者がいる場合には、もし放棄がなければ後順位抵当権者が代位し得た額については、共同抵当権者は、後順位抵当権者に優先することはできない、と規定しています。(最高裁昭和53年7月4日判決)。よって、乙土地の後順位抵当権者Dは、乙土地の代価から3,000万円の配当を受けることができるので、本選択肢は正しいです。

ウ. 判例は、共同抵当権の目的の一方が債務者の所有、他方が後順位抵当権者のある物上保証人の所有にかかる場合において、物上保証人所有の不動産のみが競売されたときは、物上保証人は債務者所有の不動産の1番抵当権に代位することができる。そして、物上保証人の抵当不動産の後順位抵当権者は、当該物上保証人の取得した1番抵当権から優先して弁済を受けることができる、と規定しています。(最高裁昭和53年7月4日判決)。従って、CはEに代位して乙土地から4,000万円の配当を受けることができるので、本選択肢は正しいです。

エ. 判例は、債権者と物上保証人との間に代位権不行使特約が締結されている場合でも、後順位抵当権者の権利を消滅させる効力を有するとは解されない、と規定しています。(最高裁平成60年5月23日判決)。従って、Cは乙土地から配当を受けることができるので、本選択肢は誤りです。

オ. 民法504条では、債権者が故意又は過失によってその担保を喪失し又は減少させたときは、代位することができる者は、償還を受けることができなくなった限度において、その責任を免れる、と規定しています。しかし、判例は、この義務を免れる特約も有効である、と規定します。そして、この特約によって、物上保証人が民法504条の免責の効果を主張できない時は、物上保証人から目的不動産を取得した者もまた、
当該免責の効果を主張することができない、と規定します。(最高裁平成7年6月23日判決)。従って、Fは、抵当権の抹消登記手続きの請求ができないため、本選択肢は誤りです。
 

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4
正解は3です。

共同抵当権者は、共同抵当権の設定された不動産のうち、全部の不動産を売却して配当を得ることも(同時配当)、一部の不動産を売却して配当を受けることもできます(異時配当)。同時配当の場合は、それぞれの不動産価額の割合に応じて債権額の弁済を受けることができます(392条1項)。本問を例にとると、共同抵当権者Aにより、甲土地と乙土地が同時に売却された場合、それぞれの価額の割合4000万円:6000万円=2:3に応じて、Aは債権額5000万円を按分し、甲土地から2000万円、乙土地から3000万円の弁済を受けます。異時配当の場合はこのような制限はなく、売却された不動産の売却代価から、債権額全部の弁済を受けることができます(392条2項)。本問でもしCとDの抵当権がなく、Aにより乙土地のみが売却された場合は、Aは5000万円全部の配当を受けられます。

ア…誤りです。異時配当の場合は、売却された不動産につき共同抵当権者より後順位である抵当権者が、同時配当のときより損をすることになってしまうので、利益保護のための措置がとられています。すなわち、抵当権を実行された不動産(本問の乙土地)において共同抵当権者より後順位の抵当権者(本問のD)は、売却されなかった不動産(本問の甲土地)につき、共同抵当権者に代位して、同時配当がされたときの共同抵当権者の優先弁済額(自己の債権額ではありません)を限度として優先弁済を受けられます(392条2項)。よってDが配当を受けられる価額は、甲土地に関してAが同時配当で得られたはずの2000万円です。また、売却価額の残部の2000万円はCに配当されます。

イ…正しいです。後順位抵当権者のいない抵当権の放棄の場合は、異時配当と同様に共同抵当権者の権利を認めてしまうと、放棄されなかった不動産につき、共同抵当権者より後順位の抵当権者が損をすることになってしまいます。よって、後順位抵当権者のいない不動産につき共同抵当権が放棄されていて、後順位抵当権者のいる不動産の抵当権が実行され売却される際には、共同抵当権者は、抵当権を放棄しなければ異時配当がされたときに受けられたはずの共同抵当権者の優先弁済額につき、後順位抵当権者に優先できません(大判昭11・7・14)。これは共同抵当の目的不動産のいずれもが物上保証人の所有に属する場合でも同様です(最判平4・11・6)。よって、Aは仮に甲土地と乙土地の同時配当であった場合、甲土地の売却価額から2000万円の優先弁済を受けられていたはずですので、これはDのものになります。また、Aの債権額の残部(5000万円-Dへの優先弁済額2000万円=3000万円)がAに支払われても、乙土地の売却代価はなお1000万円残り、Dは債権の全部を回収できていませんので、これもDに支払われます。以上より、Dは3000万円の配当を受けられます。

ウ…正しいです。共同抵当権は、抵当不動産どうしの所有者が異なってもかまいません。抵当不動産の一部が債務者(本問のB)の所有であり、一部が物上保証人(本問のE)の所有であるとき、物上保証人の所有である不動産(本問の甲土地)のみが売却され共同抵当権者が債権の弁済を受けた場合は、まだ競売にかけられていない乙土地につき、共同抵当権者が弁済を受けた限度において、物上保証人が代位することになります。しかし、本問のように、債務者所有の不動産につき後順位の抵当権者(C)がいる場合は、物上保証人Eは後順位抵当権者Cに優先できません。Cは自身の抵当権の対象が、共同抵当権の対象の一部であることを知っており、またEも後順位抵当権の設定による負担を甘受しているとみなせるため、CはEの代位権に物上代位する形で優先弁済を受けられるとされています(最判昭53・7・4)。よって、乙土地の競売の際には、EはAが弁済を受けた額である4000万円分を代位することができますが、Cはそれを物上代位して4000万円の配当を得ます。Aは残部の1000万円を得ることになります。

エ…誤りです。債務者所有の不動産(本問の乙土地)と物上保証人所有の不動産(本問の甲土地)に共同抵当権がかけられており、共同抵当権者(本問のA)により、甲土地が先に競売され、その後乙土地が競売された場合、甲土地につき共同抵当権者より後順位の抵当権者(本問のC)は、乙土地につき、物上保証人が代位した一番抵当権の限度で、共同抵当権者より後順位の抵当権者(本問のD)に優先して弁済を受けることができます。これは、共同抵当権者が物上保証人と代位権不行使の特約を結んだ場合でも関係ありません。なぜなら、当該特約の主旨は、物上保証人が弁済等を行ったときに、債権者(=共同抵当権者)の意思に反して独自に抵当権の設定をすることを禁止するにとどまり、すでに債権者が競売を実行した以上、後順位抵当権者の代位権を妨げるものではないと解されるからです(最判昭60・5・23)。よってCは物上保証人Eが代位した4000万円の配当から、物上代位する形で弁済を受けられます。

オ…誤りです。(注.2017(平成29)年の民法改正により、民法504条1項、2項に、本問のような場合の免責適用範囲について、判例の内容が新設で追加されました。以下、解説は改正民法の条文も参照します)何も特約がない場合、債務者所有の不動産(本問の乙土地)と物上保証人所有の不動産(本問の甲土地)に共同抵当権がかけられており、共同抵当権者(本問のA)が乙土地の抵当権を放棄した場合、担保の喪失によって償還を受けられなくなる代位権者(本問のE)ならびにその不動産の譲受人(本問のF)は、その償還を受けることができなくなる限度において、責任を免れます(504条1項、最判平3・9・3)。本問の特約は、504条1項における免責の効果を主張させないとする担保保存義務免除特約となります。この特約は、債権者の行った「担保の喪失や減少」に当たる行為が、取引上の社会通念に照らして合理的であると判断される場合は、債権者側から主張することもできます。また、免責の効果が生じなかったときは、本問のFのような物上保証人所有の抵当不動産の譲受人も、免責の効果を主張することはできません(504条2項、最判平7・6・23)。譲渡によって改めて免責の効果が生ずるとは考えられないためです。よって、FはAに対して抵当権の抹消の請求はできません。

3
イ及びウが正しい肢なので、3が正解になります。

ア. 債務者Bの土地が異時配当されてます。
この場合、後順位抵当権者は同時配当された場合の割付額を限度として、抵当権者に代位して行使できます。甲土地の割付額は2000万円ですのでDが代位できる限度額は2000万円になります。

イ. Aが甲土地の抵当権を放棄しています。放棄するのは自由ですが、後順位抵当権者を害することは不当です。この場合、放棄がなければ代位できた限度でAはDに優先できません。
よってDは代位できた2000万円ともともと2番抵当権者として受けることができる1000万円をあわせて3000万円の配当をうけることができます。

ウ. 甲土地が物上保証人E所有、乙土地が債務者B所有です。
この場合、物上保証人の土地が競売されると、Eは債務者Bの土地に代位でき、後順位抵当権CはEが取得した1番抵当権から優先して弁済をうけることができる、とする判例があります(昭和53年7月4日)。よってCはEに代位して乙土地から配当をうけることができます。

エ. 物上保証人所有の甲土地につきAが実行した場合、甲土地の後順位抵当権であるCは、代位権不行使の特約に関わらず物上保証人が代位した抵当権の実行によって受ける配当物に物上代位できます。

オ. 本肢の債権者と物上保証人であるEの間の担保保存義務を免除する特約は有効ですが、Eが免責の効果を主張できない以上、Eから譲り受けた第三取得者Fも免責の主張はできないとする判例があります。よってFが抵当権の抹消登記手続きを請求することはできません。

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