司法書士の過去問
平成28年度
午前の部 問16
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問題
平成28年度 司法書士試験 午前の部 問16 (訂正依頼・報告はこちら)
債務の不履行による損害賠償に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 金銭債務の不履行が不可抗力による場合であっても、債務者は、その金銭債務の遅延損害金を支払わなければならない。
イ 債務の不履行について損害賠償の額の予定があっても、債権者は、債務の不履行によって被った損害額がその予定額を超えることを立証すれば、その超過する部分について損害賠償の請求をすることができる。
ウ 当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合には、その合意は、有効である。
エ 貸金債務について年3パーセントの利率で利息を支払うとの約定がある場合において、貸金債務の遅延損害金について利率の約定がないときは、遅延損害金の額は年3パーセントの利率により定まる。
オ 債務者の責めに帰すべき事由により債務の履行が遅滞している間にその債務が履行不能となったとしても、その履行不能が債務者の責めに帰することができない事由によるときは、債務者は、その履行不能につき損害賠償責任を負わない。
ア 金銭債務の不履行が不可抗力による場合であっても、債務者は、その金銭債務の遅延損害金を支払わなければならない。
イ 債務の不履行について損害賠償の額の予定があっても、債権者は、債務の不履行によって被った損害額がその予定額を超えることを立証すれば、その超過する部分について損害賠償の請求をすることができる。
ウ 当事者が金銭でないものを損害の賠償に充てるべき旨を予定した場合には、その合意は、有効である。
エ 貸金債務について年3パーセントの利率で利息を支払うとの約定がある場合において、貸金債務の遅延損害金について利率の約定がないときは、遅延損害金の額は年3パーセントの利率により定まる。
オ 債務者の責めに帰すべき事由により債務の履行が遅滞している間にその債務が履行不能となったとしても、その履行不能が債務者の責めに帰することができない事由によるときは、債務者は、その履行不能につき損害賠償責任を負わない。
※ 平成29年(2017年)の民法改正に伴い、商法514条は削除され、民法404条により法定利率は年3%となりました。
この問題は平成28年(2016年)に出題されたものになります。
この問題は平成28年(2016年)に出題されたものになります。
- アウ
- アオ
- イウ
- イエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解は 1 です。
正しい選択肢はア及びウなので、1が正解となります。
各選択肢の解説は以下のとおりです。
ア. 民法419条3項では、金銭の債務不履行に関する損害賠償については、不可抗力をもって抗弁とすることができない、と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。
イ. 民法420条1項では、当事者は、債務の不履行につい損害賠償の額を予定することができることと、その場合において、裁判所は、その額を増減することができない、と規定しています。従って、本選択肢は誤りです。(この問題が出題された平成28年(2016年)では本選択肢は誤りですが、平成29年(2017年)の民法改正によって「裁判所は、その額を増減することができない」の部分が削除されています。)
ウ. 民法417条では、損害賠償額は、別段の意思表示がないときは、金銭をもってその額を定める、と規定しています。反対解釈によって、別段の意思があれば、金銭でないものをもって損害賠償の額を定めることも可能であることになります。従って、本選択肢は正しいです。
エ. 民法419条1項では、金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超える場合には、約定利率による、と規定しています。従って、本選択肢は誤りです。
オ. 判例は、債務者が履行期限後履行を怠れる間に、その責に帰すべからざる事由によって履行不能となった場合でも、債務者はその履行に関して責任を免れることはできない、と規定しています。(大審院明治39年10月29日判決)。従って、本選択肢は誤りです。
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02
ア…正しいです。金銭の給付を目的とする債務の不履行については、債務者は不可抗力をもって抗弁とすることができません(419条3項)。よって遅延損害金は支払わなければいけません。これに対し、金銭債務以外の債務について生じた損害賠償の場合は、不可抗力を持って抗弁とすることができます(415条1項)。
イ…誤りです。(注.2017(平成29)年の民法改正により、裁判所が予定額を変更できないとした420条1項後段は削除されました。よって選択肢は必ずしも間違いとはいえませんが、判例では実際の損害額の多寡とは別に理由があり、かつ賠償額が減額になる場合に関してのみ請求が認められています。以下、解説は改正民法によります)当事者である債権者と債務者は、損害賠償の額を予定することができます(420条1項)。例として、遅延損害金の約定利率などがあります。この予定額については、単に損害の有無や損害賠償額の立証を不要にする合意に過ぎないとされています(最判平6・4・21)。よって、債務者と債権者は、予定額と損害額が異なる場合でも、その異なる部分について互いに損害賠償請求をしないという合意をしたものとみなせるので、公序良俗違反(90条)・過失相殺(418条)などの特段の理由がない限り、賠償額を増減することはできないと考えられます。
ウ…正しいです。当事者間では、金銭でないものも債務の賠償として予定することができます(421条)。
エ…(誤りです。)(注.2017(平成29)年の民法改正により、遅延損害金に対する法定利率は5%から3%に変更になりました。よって、本問の貸金債務の利息が発生した時期により、正誤が異なります。以下、解説は改正民法によります)貸金債務については、利息と遅延損害金に異なる利率を設定することができます。利息の利率が約定利率を超えるときは、遅延損害金についても約定利率が適用されますが(419条1項ただし書)、本問では利息の利率が3%ですので、法改正の前後にかかわらず法定利率を超えることはなく、遅延損害金に対する約定利率の適用はありません。遅延損害金について、利率のみ定められていないときは、その利率は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定められます(419条1項)。よって遅延が発生した最初の時点が2020年4月1日以前(法改正の効力を生じる前)であるときは、法定利率5%が適用されるので、選択肢は誤りとなります。同様に、2020年4月1日から2022年3月31日(施行の日から3年以内)であるときは、法定利率3%が適用されるので、選択肢は(結果的に)正しいです(404条2項)。2022年4月1日以降は、3年ごとに利率の見直しが入るため、正誤が確実にいえません(404条3項、4項、5項)。
オ…誤りです。債務者が債務について履行遅滞の責任を負っている間に、当該債務が当事者双方の責めに帰することができない事由により履行不能となったときは、その履行の不能は、債務者の責めに帰すべき事由によるものとみなされます(413条の2第1項、大判明39・10・29)。
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03
アとウが正しい肢ですので、1が正解になります。
ア. 民法419条3項の条文通りです。金銭債務の不履行における損害賠償は、不可抗力をもって抗弁とすることができません。
イ. 民法420条1項の条文通りです。賠償額の予定はできますが、裁判所はその額を増減できません。(この問題が出題された平成28年(2016年)では本選択肢は誤りですが、平成29年(2017年)の民法改正によって「裁判所はその額を増減できません」の部分が削除されています。)
ウ. 民法417条の反対解釈によります。別段の意思表示がないときは金銭をもって定める、とありますので別段の意思表示があれば金銭以外のものをもって賠償額を定めることも可能です。
エ. 民法419条但書により、約定利率が法定利率より高い場合は約定利率になります。法定利率は年5分ですので、本肢の場合は3分にはなりません。
オ. 履行不能の場合は債務者に故意・過失が必要ですが、履行遅滞中に履行不能となった場合は故意・過失がなくとも責任を負うとする判例があります。
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