司法書士の過去問
平成28年度
午前の部 問32

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問題

平成28年度 司法書士試験 午前の部 問32 (訂正依頼・報告はこちら)

持分会社に関する次の1から5までの記述のうち、正しいものは、どれか。
  • ある事業年度の利益又は損失は、当該事業年度の終了後に新たに社員となった者にも、出資の価額に応じて分配される。
  • 持分会社の社員の死亡は、無限責任社員については退社事由に当たるが、有限責任社員については退社事由に当たらず、当該有限責任社員の相続人が当該有限責任社員の持分を承継する。
  • 持分会社の社員は、当該持分会社の業務を執行する権利を有しないときであっても、その業務及び財産の状況を調査する権利を有し、この権利が定款で制限されていたとしても、裁判所の許可を得れば、これを行使することができる。
  • 合名会社又は合資会社の社員は、持分の全部を他人に譲渡した場合には、その旨の登記をする前に生じた当該合名会社又は当該合資会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負うが、合同会社の社員は、持分の全部を他人に譲渡した場合には、このような責任を負わない。
  • 社員が持分会社に対して社員の責任を追及する訴えの提起を請求した場合において、当該持分会社が当該請求の日から60日以内に当該訴えを提起しないときは、当該請求をした社員は、当該持分会社のために、自らが原告となって、当該訴えを提起することができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 4 です。

正しい選択肢は4なので、4が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

1. 各事業年度の損益は、その事業年度の損益を受けるべき社員に対して分配されるから、定款に別段の定めがなければ、当該事業年度において社員ではなかった者に対し、当該事業の損益は分配されません(会社法622条参照)。従って、本選択肢は誤りです。

2. 会社法607条1項3号では、持分会社の社員は、死亡により退社する、と規定しています。この点で、社員の責任の種類による違いはありません。従って、本選択肢は誤りです。

3. 業務を執行する社員を定款で定めた場合、各社員は、持分会社の業務を執行する権利を有しない時であっても、その業務及び財産の状況を調査することができます(会社法592条1項)。この調査権に関して、定款で別段の定めをすることによって制限することが可能ですが(会社法592条2項)、その定めを設けた場合において、裁判所の許可を得れば、調査権を行使することができるという規定は存在しません。従って、本選択肢は誤りです。

4. 合名会社及び合資会社において、持分の全部を他人に譲渡した社員は、その旨の登記をする前に生じた持分会社の債務について、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負います(会社法586条1項)。この規定は、社員の登記制度(業務執行者社員に関するものを除く)が存在しない合同会社には適用されないので、本選択肢は正しいです。

5. 会社法602条では、社員が持分会社に対して社員の責任を追及する訴えの提起をした場合において、持分会社が当該請求の日から60日以内に当該訴えを提起しない場合には、当該請求をした社員は持分会社を代表することができる、と規定しています。従って、本選択肢においては、持分会社自身が原告であり、社員自らが原告となるのではないので、本選択肢は誤りです。
 

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02

正解は4です。

1.…誤りです。損益分配の割合は、各社員の出資の価額に応じて決まります(622条1項)。したがって出資の価額が確定していない時点では、原則として、利益の配当を受けられません。ただし、定款に定めがあれば、事業年度の終了前に配当を受けることもできるとされています。

2.…誤りです。持分会社の社員は、死亡したときに退社します(法定退社、607条1項3号)。無限責任社員と有限責任社員の違いはありません。

3.…誤りです。業務を執行しない持分会社の社員であっても、業務を執行する社員が別に定款で定められているときは、その業務及び財産の状況を調査する権利を有します(592条1項)。また、この権利を定款で制限することはできますが、事業年度の終了時または重要な事由があるときは、定款の制限にかかわらず調査をすることができます(同条2項)。特に裁判所の許可などは必要としません。

4.…正しいです。持分会社の社員は、持分全部を第三者に譲渡した場合には、譲渡の登記をする前に、従前の責任の範囲内でこれを弁済する責任を負います(586条1項)。しかし、合同会社における業務執行をしない社員は、そもそも登記されておらず、適用の範囲外とされています。

5.…誤りです。社員が持分会社に対して社員の責任を追及する訴えの提起を請求した場合において、当該持分会社が請求の日から60日以内に訴えを提起しないときは、当該請求をした社員は、当該訴えについて自ら持分会社を代表することができます(602条)。この場合でも、あくまで持分会社が訴えを起こすのであり、当該代表の社員が持分会社のためにすることを示して自身が原告になるわけではありません。

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03

正しい肢は4になります。

1. 各事業年度における各社員の出資の価額によって定まります。


2. 社員の死亡は退社事由になります。これは無限責任社員でも有限責任社員でも変わりません。

3. 裁判所の許可を得て行使できる、という条文が存在しません。

4. 合同会社においては業務執行権限のない社員が登記されません。よって合同会社の社員は本問の責任を負いません。

5. この場合、原告は持分会社になります。原告の社員は訴訟おいて代表にはなりますが、自らが原告になるのではありません。

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