司法書士の過去問
平成28年度
午前の部 問33
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問題
平成28年度 司法書士試験 午前の部 問33 (訂正依頼・報告はこちら)
次の対話は、新設分割に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のア からオまでの学生の解答のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
教授 : A株式会社(以下「A社」という。)がその事業に関して有する権利義務を新設分割により設立するB株式会社(以下「B社」という。)に承継させる事例を考えてみましょう。まず、B社は、A社に対し、承継する権利義務に代わる対価を交付しないことができますか。
学生 : ア いいえ。B社は、対価として、B社が発行する株式(以下「B社株式」という。)を必ずA社に対して交付しなければなりません。
教授 : それでは、B社は、対価として、譲渡制限株式であるB社株式をA社に対して交付することができますか。
学生 : イ はい。ただし、A社が会社法上の公開会社である場合には、A社の株主保護のため、A社がB社に承継させる資産の合計額がいわゆる簡易分割の要件を満たすときであっても、株主総会の決議によって、新設分割計画の承認を受けなければなりません。
教授 : B社株式をA社の株主に対して交付する場合には、どのような手続がとられますか。
学生 : ウ A社が新設分割計画においてB社株式をA社の株主に割り当てる旨を定めれば、A社の株主が新設分割によりB社の株主となるため、B社株式が新設分割に際してB社からA社の株主に対して交付されます。
教授 : 新設分割について異議を述べることができない債権者の保護は、どのように図られますか。
学生 : エ そのような債権者は、B社に対して、民法上の詐害行為取消権の特則として、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求することができる場合があります。その場合には、民法上の詐害行為取消権を行使することはできません。
教授 : 最後に、持分会社も、新設分割をすることはできますか。
学生 : オ 合名会社及び合資会社は、新設分割をすることはできません。なお、新設分割により合名会社又は合資会社を設立することはできます。
教授 : A株式会社(以下「A社」という。)がその事業に関して有する権利義務を新設分割により設立するB株式会社(以下「B社」という。)に承継させる事例を考えてみましょう。まず、B社は、A社に対し、承継する権利義務に代わる対価を交付しないことができますか。
学生 : ア いいえ。B社は、対価として、B社が発行する株式(以下「B社株式」という。)を必ずA社に対して交付しなければなりません。
教授 : それでは、B社は、対価として、譲渡制限株式であるB社株式をA社に対して交付することができますか。
学生 : イ はい。ただし、A社が会社法上の公開会社である場合には、A社の株主保護のため、A社がB社に承継させる資産の合計額がいわゆる簡易分割の要件を満たすときであっても、株主総会の決議によって、新設分割計画の承認を受けなければなりません。
教授 : B社株式をA社の株主に対して交付する場合には、どのような手続がとられますか。
学生 : ウ A社が新設分割計画においてB社株式をA社の株主に割り当てる旨を定めれば、A社の株主が新設分割によりB社の株主となるため、B社株式が新設分割に際してB社からA社の株主に対して交付されます。
教授 : 新設分割について異議を述べることができない債権者の保護は、どのように図られますか。
学生 : エ そのような債権者は、B社に対して、民法上の詐害行為取消権の特則として、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求することができる場合があります。その場合には、民法上の詐害行為取消権を行使することはできません。
教授 : 最後に、持分会社も、新設分割をすることはできますか。
学生 : オ 合名会社及び合資会社は、新設分割をすることはできません。なお、新設分割により合名会社又は合資会社を設立することはできます。
- アイ
- アオ
- イウ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はア及びオなので、2が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 新設分割設立会社は、新設分割会社に対して、必ず株式を交付しなければなりません(会社法763条1項6号参照)。従って、本選択肢は正しいです。
イ. 簡易分割の要件を満たす場合、新設分割株式会社の株主総会による承認は不要です(会社法805条)。このことは、公開会社でも異なりません。従って、本選択肢は誤りです。
ウ. 新設分割においては、対価は分割会社に交付され、それらが分割会社からその株主に剰余金が配当されたり、あるいは、全部取得条項付種類株主の取得の対価ととなると構成されており、一度会社を経由することになっています。従って、B社から直接A社の株主に対して交付されるわけではないので、本選択肢は誤りです。
エ. 会社法764条4項は、承継した財産の価額を限度として債務の履行を請求することができると定めています。この請求権は、詐害行為取消権とは趣旨を異にするものであり、詐害行為取消権の特則として定められているものではありません。従って、詐害的な会社分割が行われた場合、承継されない債権者は、会社法764条4項の請求権と詐害行為取消権のいずれも行使することができるとされているので、本選択肢は誤りです。
オ. 新設分割ができる主体は、株式会社と合同会社です。一方、新設分割によって設立される会社には制限がなく、合名会社や合資会社も新設分割設立会社になることができます(会社法2条30号参照)。従って、本選択肢は正しいです。
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02
ア…正しいです。新設分割設立会社が株式会社である場合には、その定款に、新設分割会社に対して交付する株式の数またはその数の算定方法を記載しなければなりません(763条1項6号)。新設分割会社への対価には、新設分割設立会社の株式を必ず含み、株主の存在を保障することとされています。
イ…誤りです。簡易分割とは、新設分割設立会社の資産の帳簿価額の合計額が、新設分割会社の総資産額として法務省令で定める方法により算定される額の5分の1を下回る分割のことを指します。新設合併の場合、譲渡制限株式を新たに設立する会社に対して交付する場合には株主総会の承認が必要です(804条3項)。しかし、新設分割の場合、分割の対価は新設分割会社に対して支払われます。したがって譲渡制限株式であるかにかかわらず、簡易分割の場合には、株主総会の承認は必要ないとされます(805条)。
ウ…誤りです。上述の通り、新設分割設立会社は、新設分割会社に対して株式を交付するので、新設分割会社の株主に対して交付するのではありません。
エ…誤りです。新設分割設立会社に承継されない債務の債権者(いわゆる残存債権者)は、会社が新設分割により残存債権者の利益を害することを知ってした場合には、承継した財産の価額を限度として、債務の履行を請求できます(764条3項、4項)。民法上の詐害行為取消権に会社法上で特則を認めた形になります。しかし、元々民法で保障されている詐害行為取消権の行使を妨げるものではなく、民法に基づく請求も可能です。
オ…正しいです。新設分割会社となれるのは、株式会社または合同会社のみです(762条1項)。これは吸収分割の場合と同様に、新設分割会社に無限責任社員が不在となりうる可能性を排除するためです。一方、新設分割設立会社は、株式会社・持分会社いずれもなることができます。
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03
ア. 新設分割においては新設分割設立会社は必ず対価として株式を交付しなければなりません。
イ. 対価は株主ではなく分割会社に交付されます。よって株主総会の特殊決議は不要です。
ウ. 対価が直接株主に交付されることはありません。つまり、B社からA社の株主に交付されることはありません。
エ. 会社法上の取消権を請求しても、民法上の取消権の請求ができなくなるわけではありません。
オ. 分割会社となることができるのは株式会社・合同会社のみです。一方、設立会社に制限はありません。
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