司法書士の過去問
平成28年度
午後の部 問38

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問題

平成28年度 司法書士試験 午後の部 問38 (訂正依頼・報告はこちら)

弁論主義に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  間接事実についての自白は、裁判所を拘束しないが、自白した当事者を拘束し、当該当事者は、当該自白を撤回することができない。

イ  所有権に基づく土地明渡請求訴訟において、原告が自ら被告に対しその土地の使用を許したとの事実を主張し、当該事実が証拠により認められる場合には、被告が抗弁として当該事実を自己の利益に援用しなかったときであっても、裁判所は、原告の請求の当否を判断するについて当該事実を斟酌しなければならない。

ウ  裁判所が民事訴訟法第186条に基づく調査の嘱託によって得られた調査の結果を証拠とするには、当事者の援用が必要である。

エ  留置権のような権利抗弁にあっては、抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張されたとしても、権利者においてその権利を行使する意思を表明しない限り、裁判所においてこれを斟酌することはできない。

オ  外国の法規を適用すべき民事訴訟事件において、裁判所は、当該法規の内容及び解釈については、当事者の主張及び立証に基づかなければならず、職権による探知は許されない。

(参考)
民事訴訟法
(調査の嘱託)
第186条  裁判所は、必要な調査を官庁若しくは公署、外国の官庁若しくは公署又は学校、商工会議所、取引所その他の団体に嘱託することができる。
  • アイ
  • アオ
  • イエ
  • ウエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 3 です。

正しい選択肢はイ及びエなので、3が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 判例は、間接事実についての自白は、裁判所を拘束しないのはもちろん、自白した当事者を拘束するものでないと解するのが相当である、としています(最高裁昭和41年9月22日判決)。従って、本選択肢は誤りです。

イ. 判例は、甲から乙に対する所有権に基づく建物収去土地明渡請求と、甲から乙への当該土地の所有権移転登記請求権との併合請求がされ、当該土地の時効取得を主張する乙に対して、甲がその土地の使用を許した事実を主張したが、乙がその事実を否認し援用しない事案において、相手方が当該事実陳述を自己の利益に援用しなかった時でも、裁判所は請求の当否を判断するについてその事実を斟酌すべきである、としています(最高裁昭和41年9月8日判決)。従って、本選択肢は正しいです。

ウ. 判例は、民訴法262条に基づく調査嘱託によって得られた回答等の調査結果を証拠とするには、裁判所が口頭弁論において提示して当事者に意見陳述の機会を与えれば足り、当事者の援用を要しないとしています(最高裁昭和45年3月26日判決)。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 判例は、留置権のような権利抗弁にあっては、弁済事実等の事実抗弁が、苟もその抗弁を主張する事実関係の主張がされた以上、それがその抗弁により利益を受ける者により主張されたると、その相手方により主張されたるを問わず、常に裁判所においてこれを斟酌しなければならないのとは異なり、たとえ、抗弁権取得の事実関係が訴訟上主張されたとしても、権利者においてその権利を行使する意思を表明しない限り、裁判所においてこれを斟酌することはできない、としています(最高裁昭和27年11月27日判決)。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 外国の法規については、事実の主張でない以上、弁論主義の適用はなく、裁判所は職権探知義務を負います。従って、本選択肢は誤りです。



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02

正しい肢はイとエで3が正解です。

ア. 間接事実についての自白は裁判所も当事者も拘束しません。

イ. 当該事実が証拠で認められれば、相手方の援用がなくとも裁判所は当該事実を基礎として判決をしなければならない、とする判例があります。

ウ. 意見陳述の機会を与えれば足り、当事者の援用を要しない、とする判例があります。

エ. 権利者が行使する意思がない場合は、裁判所は当該留置権を判決の基礎としてはならない、とする判例があります。

オ. 外国法規は裁判所の職権で探知します。

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03

正解は3です。

ア…誤りです。当事者の間接事実についての自白は、裁判所を拘束することがないのはもちろん、当事者も拘束することがないとされます(最判昭41・9・22)。弁論主義では、主要事実についてのみ、当事者が、主張、立証または認否ができます。したがって、主要事実を推認させる間接事実については、その認否に対し、当事者による主張や認否を必要としません。

イ…正しいです。所有権に基づきその土地の明渡しを求めた当事者が、相手方に土地の使用を許した事実を主張し、裁判所がこれを確定した場合には、相手方がこれを援用しなかったときでも、裁判所はその当事者の請求の当否を判断するについて当該事実を斟酌すべきである、とされます(最判昭41・9・8)。弁論主義では、当事者間に争いのない事実(=自白した事実)は当然に判決の基礎としなければなりません。相手方が主張した事実につき、何もしなかった事実(=沈黙)は、自白と同様とされます。

ウ…誤りです。調査の嘱託によって得られた調査の結果を証拠とするには、裁判所がこれを口頭弁論において提示して当事者に意見陳述の機会を与えれば足り、当事者の援用を要しないとされています(最判昭45・3・26)。

エ…正しいです。留置権のような権利抗弁(同時履行の抗弁権)については、当事者がこれを主張しない限り、裁判所はこれを斟酌することができず、判決の基礎とすることができません(最判昭27・11・27、H6過去問)。この判例の中で、権利抗弁の主張は、権利が行使されて初めて当事者に利益をもたらすのであるから、事実抗弁のようにその権利が存在することを述べるだけではなく、権利を行使する意思を主張することが必要とされています。

オ…誤りです。海外の法規にかぎらず、実体法をどのように適用するかの調査および決定は、裁判所の行う職権調査事項のうちの一つに該当します。適用すべき実体法やその解釈を当事者任せにすると、誤った解釈がされるおそれがあるからです。したがって職権探知主義が貫かれ、ここに弁論主義(当事者主義)は適用されません。

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