司法書士の過去問
平成28年度
午後の部 問41
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問題
平成28年度 司法書士試験 午後の部 問41 (訂正依頼・報告はこちら)
係争物に関する仮処分に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 裁判所は、係争物に関する仮処分命令において、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めることができない。
イ 土地の売買に基づく所有権移転登記手続請求権を被保全権利として、当該土地について処分禁止の仮処分を得た債権者は、当該売買が無効であっても、当該売買によって当該土地の占有を開始し仮処分後にこれを時効により取得したときは、時効完成後に当該土地を債務者から取得した第三者に対し、当該仮処分が時効取得に基づく所有権移転登記手続請求権を保全するものとして、その効力を主張することができる。
ウ 占有移転禁止の仮処分命令の執行後、第三者がその執行がされたことを知らないで係争物である土地について債務者の占有を承継した場合であっても、債権者は、本案の債務名義に基づき、当該第三者に対し、当該土地の明渡しの強制執行をすることができる。
エ 占有移転禁止の仮処分命令は、債務者を特定することを困難とする特別の事情がある場合には、係争物が動産であるときであっても、債務者を特定しないで発することができる。
オ 土地について処分禁止の仮処分がされる前に債務者が第三者に当該土地を売っていた場合には、その売買による所有権の移転の登記が当該仮処分の登記より後にされたときであっても、当該第三者は、債権者に対し、当該土地に係る所有権の取得を対抗することができる。
ア 裁判所は、係争物に関する仮処分命令において、仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めることができない。
イ 土地の売買に基づく所有権移転登記手続請求権を被保全権利として、当該土地について処分禁止の仮処分を得た債権者は、当該売買が無効であっても、当該売買によって当該土地の占有を開始し仮処分後にこれを時効により取得したときは、時効完成後に当該土地を債務者から取得した第三者に対し、当該仮処分が時効取得に基づく所有権移転登記手続請求権を保全するものとして、その効力を主張することができる。
ウ 占有移転禁止の仮処分命令の執行後、第三者がその執行がされたことを知らないで係争物である土地について債務者の占有を承継した場合であっても、債権者は、本案の債務名義に基づき、当該第三者に対し、当該土地の明渡しの強制執行をすることができる。
エ 占有移転禁止の仮処分命令は、債務者を特定することを困難とする特別の事情がある場合には、係争物が動産であるときであっても、債務者を特定しないで発することができる。
オ 土地について処分禁止の仮処分がされる前に債務者が第三者に当該土地を売っていた場合には、その売買による所有権の移転の登記が当該仮処分の登記より後にされたときであっても、当該第三者は、債権者に対し、当該土地に係る所有権の取得を対抗することができる。
- アエ
- アオ
- イウ
- イエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はイ及びウなので、3が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 民事保全法25条1項では、裁判所は、保全すべき権利が金銭の支払いを受けることをもってその行使の目的を達成することができるものであるときに限り、債権者の意見を聴いて、仮処分の執行停止を得るため、又は、既にした仮処分の執行の取消しを得るために、債務者が供託すべき金銭の額を仮処分命令において定めることができる、と規定しています。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 判例は、不動産の売買に基づく所有権移転登記請求権を被保全権利として、処分禁止の仮処分を得た仮処分債権者は、当該売買が無効であっても、当該売買によって当該不動産の占有を開始した仮処分後にこれを時効により取得したときは、時効完成後に当該不動産を債務者から取得した第三者に対して、当該仮処分が取得時効に基づく所有権移転登記請求権を保全するものとして、その効力を主張することができる、としています(最高裁昭和59年9月20日判決)。従って、本選択肢は正しいです。
ウ. 民事保全法62条1項2号では、占有移転禁止の仮処分命令の執行がなされた時は、債権者は、本案の債務名義に基づき、当該占有移転禁止の仮処分命令の執行後にその執行がされたことを知らないで当該係争物について債務者の占有を承継した者に対して、係争物の引渡し又は明渡しの強制執行をすることができる、と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。
エ. 民事保全法25条の2第1項では、占有移転禁止の仮処分命令であって、係争物が不動産であるものについては、その執行前に債務者を特定することが困難な特別の事情があるときは、裁判所は、債務者を特定しないで、これを発することができる、と規定しています。
この規定は不動産について適用されるので、本選択肢は誤りです。
オ. 判例は、処分禁止の仮処分前に仮処分債権者の処分行為により、目的不動産について権利を取得した場合であっても、仮処分登記当時、いまだその登記を経由しない場合にあっては、その権利の取得をもって第三者に対抗できない関係にあるのであり、従って、その登記前にすでに処分禁止の仮処分登記がなされた以上その後の権利の取得の登記をしても、その権利の取得が仮処分前なることを理由としてもはやこれをもって仮処分債権者に対抗することができないものといわなければならない、と規定しています(最高裁昭和30年10月25日判決)。従って、本選択肢は誤りです。
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02
ア…誤りです。裁判所は、保全すべき権利が金銭をもってその行使の目的を達することができるものであるときに限り、仮処分の執行の停止を得るため、もしくは既にした仮処分の執行の取消しを得るため、債務者が供託すべき金銭の額を定めることができます(仮処分解放金、民事保全法25条1項)。
イ…正しいです。土地の売買に基づく所有権移転登記手続請求権を被保全権利として、当該土地について処分禁止の仮処分を得た債権者は、売買原因が無効であった場合、「売買に基づく所有権移転登記手続請求権」を被保全権利として主張することはできませんが、その後時効取得が完成した場合、「時効取得に基づく所有権移転登記手続請求権」を被保全権利として、仮処分により処分禁止の効力が生じたと主張することができます(最判昭59・9・20)。
ウ…正しいです。占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたときは、➀その執行を知って係争物を占有した者、②執行後に係争物の占有を開始した者、③その執行がされた事を知らないで係争物の占有を承継した者、に対して、債権者は、係争物の引渡しまたは明渡の強制執行ができます(民事保全法62条)。
エ…誤りです。占有移転禁止の仮処分命令の執行がされたとき、係争物が不動産であるときに限り、債務者を特定することを困難とする特別の事情がある場合は、債務者を特定しないで発することができます(民事保全法25条の2第1項)。
オ…誤りです。処分禁止の仮処分の前になされた処分行為に基づく権利取得の登記であっても、その登記が当該仮処分の登記後になされたときは、これをもって仮処分の債権者に対抗することはできません(最判昭30・10・25)。すなわち、仮処分前に不動産である係争物を売買で取得した第三者は、仮処分後に自己へ所有権移転の登記をすることはできません。仮処分登記前の段階では、当該不動産の所有権につき登記が対抗要件であり、登記がない以上、売却の相手方である第三者も債権者に対抗できません。一方、仮処分の登記がされることにより、仮処分債権者は、当該第三者の登記の欠缺を主張し、自らの被保全権利を主張しうるようになると解されるためです。
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03
ア. 民保25条に仮処分の執行の停止を得るため、又は既にした仮処分の執行の取消しを得るために債務者が供託すべき金銭の額を定めることができる場合が規定されています。
イ. 当該土地について処分禁止の仮処分を得た債権者は、当該売買が無効であっても、当該売買によって当該土地の占有を開始し仮処分後にこれを時効により取得したときは、時効完成後に当該土地を債務者から取得した第三者に対し、当該仮処分が時効取得に基づく所有権移転登記手続請求権を保全するものとしてその効力を主張することができる、とする判例があります。
ウ. 民保62条1項2号によると、占有を承継したものは善意であっても引き渡しの強制終了をされてしまいます。
エ. 債務者を特定せずに占有移転禁止の仮処分命令を発することができるのは係争物が「不動産」の場合に限ります。
オ. 本肢では権利の取得は仮処分の登記より先ですが、売買による所有権の移転の登記が当該仮処分の登記より「後」にされたときですので所有権を対抗することはできません。
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