司法書士の過去問
平成28年度
午後の部 問46
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問題
平成28年度 司法書士試験 午後の部 問46 (訂正依頼・報告はこちら)
弁済供託に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 持参債務の債務者は、弁済期日に弁済をしようとして、債権者の住居に電話で在宅の有無を問い合わせた場合において、債権者以外の家人から、債権者が不在であるため受領することができない旨の回答があっただけでは、受領不能を原因とする弁済供託をすることはできない。
イ 不法行為の加害者は、自ら算定した損害賠償額と不法行為発生時から提供日までの遅延損害金の合計額を被害者に提供した場合において、被害者がその受領を拒んだときは、受領拒絶を原因とする弁済供託をすることができる。
ウ 建物の賃貸借における賃借人は、債務の本旨に従って賃料を賃貸人に提供し、賃料の受領と引き替えに受領証の交付を請求した場合において、賃貸人が賃料は受領しようとしたものの、受領証の交付を拒んだとしても、受領拒絶を原因とする弁済供託をすることはできない。
エ 建物の賃貸借における賃借人は、賃貸人が死亡しその共同相続人二人がその地位を承継した場合において、賃貸人の死亡後に発生した賃料全額を当該共同相続人のうちの一人に提供し、その受領を拒まれたとしても、賃料全額について、受領拒絶を原因とする弁済供託をすることはできない。
オ 譲渡禁止特約のある債権の債務者は、当該債権が譲渡され、債務者に対する確定日付のある証書による通知がされた場合において、債権譲受人の善意・悪意を知ることができないときは、債権者不確知を原因とする弁済供託をすることができる。
ア 持参債務の債務者は、弁済期日に弁済をしようとして、債権者の住居に電話で在宅の有無を問い合わせた場合において、債権者以外の家人から、債権者が不在であるため受領することができない旨の回答があっただけでは、受領不能を原因とする弁済供託をすることはできない。
イ 不法行為の加害者は、自ら算定した損害賠償額と不法行為発生時から提供日までの遅延損害金の合計額を被害者に提供した場合において、被害者がその受領を拒んだときは、受領拒絶を原因とする弁済供託をすることができる。
ウ 建物の賃貸借における賃借人は、債務の本旨に従って賃料を賃貸人に提供し、賃料の受領と引き替えに受領証の交付を請求した場合において、賃貸人が賃料は受領しようとしたものの、受領証の交付を拒んだとしても、受領拒絶を原因とする弁済供託をすることはできない。
エ 建物の賃貸借における賃借人は、賃貸人が死亡しその共同相続人二人がその地位を承継した場合において、賃貸人の死亡後に発生した賃料全額を当該共同相続人のうちの一人に提供し、その受領を拒まれたとしても、賃料全額について、受領拒絶を原因とする弁済供託をすることはできない。
オ 譲渡禁止特約のある債権の債務者は、当該債権が譲渡され、債務者に対する確定日付のある証書による通知がされた場合において、債権譲受人の善意・悪意を知ることができないときは、債権者不確知を原因とする弁済供託をすることができる。
- アイ
- アウ
- イエ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解は 2 です。
誤っている選択肢はアとウで、2が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 判例は、受領不能により弁済供託をする場合の債権者の不在は、一時的な物でも差し支えない、とされています(大審院昭和9年7月17日判決)。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 法務省通達は、加害者自ら算定した損害額と不法行為時から提供日までの遅延損害金の合計額を加害者が提供したが、その受領を拒んだときは、弁済供託をすることができる、と規定しています(昭和32年4月15日付民甲710、昭和55年6月9日付民4.3273参照)。従って、本選択肢は正しいです。
ウ. 賃貸人が賃料を提供して賃貸人が受領書を交付しない場合には、受領拒否を原因として弁済供託することができます(昭和39年3月28日付民甲773参照)。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 地代家賃の賃貸借契約につき、貸主の死亡により共同相続人がその地位を承継している場合、借主が賃料を相続人の一人に提供して拒否された場合でも、賃料全額の弁済供託はできません(昭和35年全国供託会議決議参照)。従って、本選択肢は正しいです。
オ. 譲渡禁止特約の付された債権が譲渡された場合、譲受人が善意・無重過失であれば保護されます。
この場合、債務者としては譲受人の善意・無重過失が裁判で確定されるまでは、債権者を確知できないことになるので、債権者不確知を供託原因として、弁済供託ができます(民法466条2項、最高裁昭和48年7月19日判決、昭和36年7月31日付民甲1866参照)。従って、本選択肢は正しいです。
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02
ア…誤りです。持参債務においては、債権者または債権者に代わり受領の権限を有する者が一時的に不在であり、弁済の受領ができない場合でも、債務者は「受領不能」を原因として弁済供託をすることができます(大審院昭9・7・17)。ただし、一時的な不在により受領不能が認められるためには、事前に弁済期日を指定するなど、信義則上可能な限り、現実または口頭による提供に努める必要があると解されています。
イ…正しいです。不法行為の加害者は、自らが任意に算定した損害賠償額と、不法行為発生時から提供日までの遅延損害金の合計額を被害者に提供した場合において、被害者がその受領を拒んだときは、「受領拒否」を理由として供託ができます(昭32・4・15民甲710号、昭41・7・5民甲1749号)。
ウ…誤りです。債権者に対して弁済済受領証を交付することは弁済供託の有効要件ではなく、弁済の効力は供託そのものによって生じます(最判昭37・3・30)。よって賃借人は、弁済済受領証の交付が拒否されている状態であっても、賃料弁済の供託ができます。なお、本問では賃料については合意がありますが、賃料について争いがある場合、➀増額請求がされている場合は、賃借人が相当と考える額を、②減額請求がされている場合は、賃貸人が相当と考える額を供託する必要があります(借地借家法32条)。
エ…正しいです。可分債権が共同相続人の相続分に応じて承継された場合は、共同相続人それぞれに弁済の提供をしなければならず、そのうちの一人に弁済の全額を供託することはできません(昭36・4・4民甲808号)。そして、共同相続人が賃貸人である場合は、賃料債権は可分債権とされます(民法427条)。
オ…正しいです。譲渡禁止特約のある債権が譲渡された場合は、(譲受人の善意・悪意の証明により対抗関係が決せられるとすると、その証明は非常に困難であることから)債務者は「債権者不確知」を理由として弁済供託をすることができます(昭36・7・31民甲1866号)。
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03
誤りの肢はアとウで2が正解です。
ア. 債権者が不在であるため受領することができないことは受領不能になります。
イ. 自ら相当と認めた損害賠償額と不法行為発生時から提供日までの遅延損害金の合計額を被害者に提供した場合、被害者がその受領を拒んだときは弁済供託ができます。
ウ. 賃貸人が賃料の受領書を交付しない場合には受領拒否による供託をすることができます。
エ. 相続人に一人に提供して拒否された場合、拒否された額のみを供託できます。全額はできません。
オ. 善意・無重過失かどうかが判明するまで債権者不確知として供託をすることができます。
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