司法書士の過去問
平成28年度
午後の部 問49
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問題
平成28年度 司法書士試験 午後の部 問49 (訂正依頼・報告はこちら)
不動産登記の申請の代理に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 家庭裁判所が未成年者Aのために選任した特別代理人Bが、Aを代理して、Aとその親権者Cとの利益が相反する法律行為をした場合であっても、Cは、Aを代理して当該法律行為に基づく登記を申請することができる。
イ 司法書士Xが、株式会社の代表取締役Aから同社を申請人とする登記の申請について委任を受けた場合において、当該委任後にAが代表取締役を辞任したときは、Xは、当該委任に係る登記を申請することができない。
ウ 申請人Aが代理人Bに対して甲土地を目的とする地上権の設定の登記の申請を委任した場合において、A作成の委任状に委任事項として「登記原因証明情報である平成何年何月何日付地上権設定契約証書記載のとおりの地上権の設定の登記の申請を委任する」旨の記載があるときは、この委任状をBの代理権を証する情報として提供して、地上権の設定の登記を申請することができる。
エ Aの成年後見人Bが、Aを所有権の登記名義人とする不動産に係る登記を申請する場合には、Bの代理権を証する情報として、後見登記等ファイルに記録された事項を証明した書面を提供することができる。
オ 株式会社の代表取締役Aが同社を代表して不動産の登記を申請した後、当該登記が完了するまでの間に、Aについて破産手続開始の決定がされたときは、当該申請は却下される。
ア 家庭裁判所が未成年者Aのために選任した特別代理人Bが、Aを代理して、Aとその親権者Cとの利益が相反する法律行為をした場合であっても、Cは、Aを代理して当該法律行為に基づく登記を申請することができる。
イ 司法書士Xが、株式会社の代表取締役Aから同社を申請人とする登記の申請について委任を受けた場合において、当該委任後にAが代表取締役を辞任したときは、Xは、当該委任に係る登記を申請することができない。
ウ 申請人Aが代理人Bに対して甲土地を目的とする地上権の設定の登記の申請を委任した場合において、A作成の委任状に委任事項として「登記原因証明情報である平成何年何月何日付地上権設定契約証書記載のとおりの地上権の設定の登記の申請を委任する」旨の記載があるときは、この委任状をBの代理権を証する情報として提供して、地上権の設定の登記を申請することができる。
エ Aの成年後見人Bが、Aを所有権の登記名義人とする不動産に係る登記を申請する場合には、Bの代理権を証する情報として、後見登記等ファイルに記録された事項を証明した書面を提供することができる。
オ 株式会社の代表取締役Aが同社を代表して不動産の登記を申請した後、当該登記が完了するまでの間に、Aについて破産手続開始の決定がされたときは、当該申請は却下される。
- アウ
- アオ
- イエ
- イオ
- ウエ
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この過去問の解説 (3件)
01
誤っている選択肢はイ及びオで、4が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 先例は、利益相反行為に該当するため、特別代理人を選任し、法律行為がなされた場合、その行為による物権変動に基づく登記の申請は、特別代理人、親権者、未成年者の子自身のいずれからも申請し得る、としています。(昭和32年4月13日民甲3.379)。従って、本選択肢は正しいです。
イ. 不動産登記法17条4号では、登記を申請する者の委任による代理人の権限は、法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更によっては消滅しない、と規定しています。従って、本選択肢は誤りです。
ウ. 先例は、「登記原因証明情報記載ののとおり〇〇の登記の申請を委任する」等の振り合いにより、登記原因証明情報を引用して作成した委任状を作成することも認める、としています(昭和39年8月24日民甲2864)。従って、本選択肢は正しいです。
エ. 成年後見人が成年被後見人に代わって登記を申請する場合において添付すべき代理権限証明情報は、成年後見人の権限を証する後見登記の登記事項証明書であり、後見登記等に記録された事項を証明した書面は、当該登記事項証明書に該当するため、本選択肢は正しいです(不動産登記令7条1項2号、後見登記等に関する法律4条、10条参照)。
オ. 法人の代表者が破産手続開始決定を受けたときは、会社との委任関係が終了し、代理権も消滅します。しかし、法人の代表者の代理権が消滅しても、登記の申請を委任された者の代理権は消滅しません。従って、本選択肢は誤りです(民法653条2号、111条2項、不動産登記法17条4号参照)。
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02
ア. 特別代理人が選任された場合、利益相反であっても親権者が当該子を代理して申請できます。
イ. 登記を申請する者の委任による代理人の権限は、法定代理人の死亡又はその代理権の消滅若しくは変更によっては消滅しない、と17条4項にあります。代表権が消滅しても交付を受けた委任状により申請可能です。
ウ. 登記原因証明情報を援用するかたちで作成された委任状でも問題ありません。
エ. 代理権を証明する情報として登記事項証明書が該当します。
オ. 代表者の代理権が消滅しても、肢イのとおり登記申請の委任を受けたものの代理権は消滅しません。
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03
ア…正しいです。未成年者が、親権者と自身の利益が相反する行為を行うときは、親権者はその子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければなりません(民法826条1項)。しかし、利益相反に該当する行為を、特別代理人が未成年者を代理して行った場合、これにもとづく登記の申請は、親権者・特別代理人・意思能力のある未成年者のいずれからも行うことができます(昭32・4・13民甲379号回答)。
イ…誤りです。法人の代表者から司法書士等代理人へ登記の委任がされた後、登記が完了する前に当該代表者が代表者たる資格を失った場合でも、(新代表者の委任を必要とすることなく)委任された代理人は登記の申請ができます。この場合、➀前代表者の委任状(=代理権限を証する書面)のほか、②閉鎖登記簿謄本または閉鎖登記事項証明書等(=委任当時に前代表者が代表権限を有していたことを証する書面)、③履歴事項証明書等(=登記申請時に前代表者の代表権限が消滅していることを証する書面)が必要です(平6・1・14民三366号通知、先例)。閉鎖登記事項証明書については、3ヶ月以内に作成されたものであることを要しません。
ウ…正しいです。委任状の委任事項には、登記原因証明情報の内容を援用することができます。例として、所有権移転登記をする場合、「年月日付け登記原因証明情報に記載のとおりの所有権移転登記の申請を委任する」などと書けばよいとされます(昭39・8・24民甲2864号民事局長通達)。本問でも、登記原因証明情報に登記すべき事項が記載されていますので、援用できると考えられます。
エ…正しいです。成年後見人の代理権限を証する情報には、後見登記事項証明書があります(後見登記等に関する法律10条)。
オ…誤りです。株式会社の代表取締役が破産手続開始の決定を受けた場合、委任の終了事由に当たることから、代表取締役を退任することになります(民法653条2項)。当該元代表取締役は、退任時から代理権が消滅しますが、登記申請時には会社の法定代理人であったため、不動産登記法17条4号の規定が適用され、当該登記に関しては代理権が消滅しないことになります。
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