司法書士の過去問
平成28年度
午後の部 問54
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問題
平成28年度 司法書士試験 午後の部 問54 (訂正依頼・報告はこちら)
共有名義の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア A及びBが所有権の登記名義人で持分が各2分の1である甲土地及び乙土地について、甲土地につきAの単独所有、乙土地につきA持分4分の1、B持分4分の3とする共有物分割を登記原因とする持分移転の登記を申請することができる。
イ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地をAの単独所有とし、その代わりにAが所有権の登記名義人である乙土地をBの所有とする旨の共有物分割の協議に基づき、乙土地について共有物分割を登記原因として所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地について、AとBが10年間共有物分割を禁止する旨の定めをし、当該定めを追加する旨の所有権の変更の登記を申請することができる。
エ A、B及びCが所有権の登記名義人である甲土地について、Aの持分放棄を登記原因としてAからBにA持分一部移転の登記がされている場合において、Aの持分放棄によりCに帰属すべき持分をDがAから買い受けたときは、売買を登記原因としてAからDへのA持分全部移転の登記を申請することができる。
オ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地について、CがBからその持分の贈与を受けた後に、Aがその持分を放棄した場合には、贈与を登記原因とするBからCへのBの持分の移転の登記がされていないときであっても、Aの持分放棄を登記原因とするAからCへのA持分全部移転の登記を申請することができる。
ア A及びBが所有権の登記名義人で持分が各2分の1である甲土地及び乙土地について、甲土地につきAの単独所有、乙土地につきA持分4分の1、B持分4分の3とする共有物分割を登記原因とする持分移転の登記を申請することができる。
イ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地をAの単独所有とし、その代わりにAが所有権の登記名義人である乙土地をBの所有とする旨の共有物分割の協議に基づき、乙土地について共有物分割を登記原因として所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地について、AとBが10年間共有物分割を禁止する旨の定めをし、当該定めを追加する旨の所有権の変更の登記を申請することができる。
エ A、B及びCが所有権の登記名義人である甲土地について、Aの持分放棄を登記原因としてAからBにA持分一部移転の登記がされている場合において、Aの持分放棄によりCに帰属すべき持分をDがAから買い受けたときは、売買を登記原因としてAからDへのA持分全部移転の登記を申請することができる。
オ A及びBが所有権の登記名義人である甲土地について、CがBからその持分の贈与を受けた後に、Aがその持分を放棄した場合には、贈与を登記原因とするBからCへのBの持分の移転の登記がされていないときであっても、Aの持分放棄を登記原因とするAからCへのA持分全部移転の登記を申請することができる。
- アウ
- アエ
- イウ
- イオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はア及びエで、2が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 先例は、共有地の分割協議において、分筆後の1筆の土地については単有とし、他の土地については元の持分と異なる持分で共有とする旨の分割協議がなされた場合、その登記原因を「共有物分割」として、移転登記を申請することができる、としています(昭和44年4月7日付民3.426)。従って、本選択肢は正しいです。
イ. A及びBが所有権の登記名義人である甲土地をAの単独所有とし、代わりに、Aが所有権の登記名義人である乙土地をBの所有とする旨の共有物分割の協議に基づき申請する所有権移転登記の登記原因は、「共有物分割による交換」又は「共有物分割による贈与」である、としています(記録例220参照)。従って、本選択肢は誤りです。
ウ. 先例は、民法256条1項但書に定める5年を超えた期間内の共有物不分割の契約は、無効となるため、その旨の登記を申請することはできない、としています(昭和30年6月10日付民甲1161)。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 先例は、Aが放棄した持分のうち、持分移転登記の済んでいない残余の部分に関して、放棄により権利の帰属を受けた共有者Cと売買により取得した第三者Dは対抗関係に立ち、その優劣は登記の先後によることになるので、第三者Dを権利者とする持分移転の登記を申請することができる、と規定しています(昭和44年5月29日付民甲1134)。従って、本選択肢は正しいです。
オ. 先例は、共有名義の不動産につき、共有者1人の持分について、共有者名義でない者のために、持分放棄を登記原因とする共有持分移転の登記申請は、受理されない、と規定しています(昭和60年12月2日付民3.5441)。従って、本選択肢は誤りです。
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02
ア. 共有物分割を原因として単有にすることも持分移転をすることも可能です。
イ. 本肢の場合は「共有物分割」を登記原因とすることはできません。「共有物分割による交換(または贈与)」になります。
ウ. 共有物分割の禁止は5年が限度です(民法256条1項但書)。10年とすることはできません。
エ. 持分一部移転登記がされた後、残余の部分を第三者に移転登記することができます。この場合、第三者と一部移転登記をうけた共有者は対抗関係になります。
オ. BからCへの持分移転登記がなされていないのでCは共有者ではありません。よって持分放棄を登記原因とする移転登記はできません。
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03
ア…正しいです。共有物に対し、共有者の元の持分と異なる割合での共有物分割も認められています(昭47・4・7民三426号)。例として、「A(持分5分の3)・B(持分5分の2)共有の土地を分筆し、一方はAの単独所有とし、もう一方の土地をA(持分5分の1)・B(持分5分の4)の共有とすることもできる」とありますので、複数の共有物のうち、ある共有者の単有になるものや、持分割合を変更したものが混在しても、「共有物分割」を原因として申請できます。
イ…誤りです。AB共有の甲土地をAの単独所有とし、代わりにA所有の乙土地をBの所有とする共有物分割が行われた場合、乙土地については、AとBが共同して「共有物分割による交換」を原因とする所有権移転の登記を申請する必要があります(先例)。
ウ…誤りです。共有物分割禁止の定めを追加する場合は、所有権変更の登記として申請できます(不動産登記法65条)。しかし、共有物分割禁止の定めは、5年を超える期間の設定はできません(民法256条1項ただし書)。また、当該定めを更新することもできますが、更新の時から5年を超える期間の設定もできません(同条2項)。よって本問のように10年間共有物分割禁止を行いたい場合は、5年ごとに更新の登記を申請する必要があります。
エ…正しいです。A、B、およびCの共有である不動産につき、Aの持分放棄によりB、Cに帰属すべき持分につき、Bのみが持分移転の登記がされている場合において、残余持分につきAから第三者Dを権利者とする「売買」による持分移転の登記をすることができます(昭44・5・29民甲1134号)。
オ…誤りです。共有名義の不動産につき、共有者の持分について、共有名義人でない者のために「持分放棄」を原因とする持分移転の登記はできません(昭60・12・2民三5441号)。
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