司法書士の過去問
平成28年度
午後の部 問58
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問題
平成28年度 司法書士試験 午後の部 問58 (訂正依頼・報告はこちら)
甲土地の所有権の登記名義人であるAに配偶者B及び子Cがいる場合において、Aが死亡して相続が開始したときの遺産分割協議又は遺言による登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア BとCが遺産分割協議を行い、Bが甲土地を取得する旨の遺産分割協議書を作成した場合において、この協議に基づく登記を申請する前にBが死亡し、Bの相続人がCのみであるときは、甲土地についてAからBへの所有権の移転の登記を経ることなく、AからCへの所有権の移転の登記を申請することはできない。
イ Bから遺産分割協議に関する事項の委任を受けたXが、当該遺産分割協議に参加し、Cが甲土地を取得する旨の遺産分割協議書にBの代理人として署名押印している場合には、Cは、登記原因証明情報の一部として当該遺産分割協議書を提供し、甲土地についてAからCへの所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ BがAの預貯金を取得する代わりにB所有の乙土地をCが取得する旨が記載された遺産分割協議書を登記原因証明情報の一部として提供し、乙土地についてBからCへの所有権の移転の登記を申請するときの登記原因は、遺産分割である。
エ Bに甲土地を遺贈する旨の記載があるAの遺言書を登記原因証明情報の一部として提供し、甲土地についてAからBへの所有権の移転の登記を申請するときの登記原因は、遺贈である。
オ Aの遺言書に、受遺者とその配分は遺言執行者において協議の上決定する旨及び遺言執行者としてBとCの2名を指定する旨の記載がされている場合において、Aの死亡後、BとCとの協議がされる前にBが死亡したときは、Cは、甲土地についてXに遺贈する旨を決定した上で、甲土地につきAからXへの所有権の移転の登記を申請することができる。
ア BとCが遺産分割協議を行い、Bが甲土地を取得する旨の遺産分割協議書を作成した場合において、この協議に基づく登記を申請する前にBが死亡し、Bの相続人がCのみであるときは、甲土地についてAからBへの所有権の移転の登記を経ることなく、AからCへの所有権の移転の登記を申請することはできない。
イ Bから遺産分割協議に関する事項の委任を受けたXが、当該遺産分割協議に参加し、Cが甲土地を取得する旨の遺産分割協議書にBの代理人として署名押印している場合には、Cは、登記原因証明情報の一部として当該遺産分割協議書を提供し、甲土地についてAからCへの所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ BがAの預貯金を取得する代わりにB所有の乙土地をCが取得する旨が記載された遺産分割協議書を登記原因証明情報の一部として提供し、乙土地についてBからCへの所有権の移転の登記を申請するときの登記原因は、遺産分割である。
エ Bに甲土地を遺贈する旨の記載があるAの遺言書を登記原因証明情報の一部として提供し、甲土地についてAからBへの所有権の移転の登記を申請するときの登記原因は、遺贈である。
オ Aの遺言書に、受遺者とその配分は遺言執行者において協議の上決定する旨及び遺言執行者としてBとCの2名を指定する旨の記載がされている場合において、Aの死亡後、BとCとの協議がされる前にBが死亡したときは、Cは、甲土地についてXに遺贈する旨を決定した上で、甲土地につきAからXへの所有権の移転の登記を申請することができる。
- アウ
- アエ
- イエ
- イオ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はイ及びエで、3が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 先例は、中間の相続が単独相続であるときは、登記原因及び日付を連記し、最終の相続人名義へ直接相続登記を申請することができる、と規定しています(明治33年3月7日付民刑260)。なお、中間の相続が単独であるとは、相続の放棄、遺産分割等により単独で不動産の所有権を取得した場合も含みます。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 先例は、相続を証する情報の一部として、委任による遺産分割協議を行った代理人の作成した遺産分割協議書を提供して、相続登記の申請ができる、としています(昭和33年7月9日付民甲1379)。従って、本選択肢は正しいです。
ウ. 先例は、遺産分割の方法として相続人の1人に遺産を取得させる代わりに、固有不動産を他の相続人に与えることとした遺産分割協議書を添付してする所有権移転の登記を申請するときの登記原因は「遺産分割による贈与」とする、としています(昭和40年12月17日付民甲3433)。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 先例は、相続人の1人に遺贈する旨の記載のある公正証書を提供して所有権移転の登記を申請する場合、登記原因は遺贈となる、と規定しています(昭和48年12月11日民甲3.8859)。従って、本選択肢は正しいです。
オ. 先例は、受遺者とその配分は、遺言執行者が協議の上決定処分する旨の遺言書を記載した公正証書を登記原因とする遺贈の登記申請をすることはできない、としています(昭和33年10月11日民甲2124)。従って、本選択肢は誤りです。
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02
ア…誤りです。本問のように、A死亡により、配偶者Bと子Cが相続人になり、相続登記を済ませない内にBが死亡した場合において、AからCに直接、相続を原因とする所有権移転の登記をするためには、登記原因証明情報として、Bを相続人とする遺産分割協議書またはBの特別受益証明書が必要です(登記研究758号)。したがって、➀亡妻BとCとの間に遺産分割協議が成立していた、または、②Bが特別受益者であった、という事情があれば、中間省略登記が申請できることになります。
イ…正しいです。本問のように、遺産分割協議は、相続人から委任を受けた代理人が行うこともできます。Cが甲土地の所有権移転の登記を行う場合、➀代理人Xの押印のある遺産分割協議書、②Xの印鑑証明書、③BがXに委任した旨の記載およびBの押印のある委任状、④Bの印鑑証明書、の添付が必要になります(昭33・7・9民甲1379号、登記研究480号)。
ウ…誤りです。遺産分割協議において、相続登記を行う前に当該協議が成立し、その内容として相続財産である不動産について相続人の一人が所有権移転の登記をする場合、登記原因は「遺産分割」です。しかし、相続登記の前であっても、遺産の代償として、相続人自身の保有する不動産につき、他の相続人へ所有権移転を行う場合は、登記原因は「遺産分割による売買(または、遺産分割による贈与)」となります(平21・3・13民二646号)。
エ…正しいです。登記原因には、原則として遺言書の文言がそのまま適用されます。被相続人が、遺言書の中で、「具体的な財産を遺贈する」旨の記載をしているときには、受遺者が相続人であっても、当該財産に関する所有権移転の登記の登記原因は「遺贈」となります(昭38・11・20民甲3119号民事局長回答)。
オ…誤りです。受遺者が遺言執行者に指定されている場合でも、登記の申請は債務の履行に準ずべきものであるので、遺言執行者は同時に遺言執行者として登記の申請ができます(大9・5・4民事307号局長回答)。しかし、不動産または有価証券の遺贈につき、受遺者およびその配分を遺言執行者が協議の上で決定処分する旨の遺言内容を公正証書とする登記原因証明情報として添付し、遺贈として登記申請しても、申請は受理されません(昭33・10・11民甲2124号局長回答)。
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03
ア. 生前にBがCと遺産分割協議をおこなっているので、本肢の場合登記申請が可能です。
イ. 任意代理人による遺産分割協議も可能です。Xが署名押印した協議書をもって登記が可能です。
ウ. 代償として不動産を無償で取得させる場合の登記原因は「遺産分割による贈与」になります。
エ. 遺言に相続人の一人に特定の不動産を「遺贈する」旨の記載があるので、原則通り登記原因は遺贈になります。
オ. 受遺者とその配分を遺言執行者が協議の上決定する旨の遺言を登記原因証明情報として遺贈の登記を申請することはできません。
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