司法書士の過去問
平成28年度
午後の部 問64

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問題

平成28年度 司法書士試験 午後の部 問64 (訂正依頼・報告はこちら)

株式会社の役員の変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  取締役会設置会社において、新たにAが取締役に就任したことによる取締役の変更の登記の申請書にAの住民票の写しを添付した場合には、Aが就任を承諾したことを証する書面にその住所を記載することを要しない。

イ  辞任により取締役を退任した後も取締役としての権利義務を有するAを解任する株主総会の決議がされた場合であっても、当該株主総会の議事録を添付して、Aの解任による変更の登記を申請することはできない。

ウ  取締役Aが、婚姻による氏の変更の登記の申請と併せて、婚姻前の氏をも登記簿に記録するよう申し出る場合において、Aの婚姻前の氏が株主総会の議事録の記載から明らかなときは、Aの婚姻前の氏を証する書面を添付することを要しない。

エ  代表取締役を選定した取締役会の議事録に変更前の代表取締役が登記所に提出した印鑑が押印されていない場合には、当該取締役会に出席した監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されているときであっても、代表取締役の変更の登記の申請書には、当該監査役が当該取締役会の議事録に押印した印鑑につき市町村長の作成した証明書を添付しなければならない。

オ  定款の定めに基づき取締役の互選により取締役の中から代表取締役を定めていた取締役会設置会社でない株式会社が当該定款の定めを廃止した場合において、定款又は株主総会の決議によって代表取締役を定めなかったときは、従前代表権を有しなかった他の取締役を代表取締役とする変更の登記の申請書には、当該他の取締役が代表取締役に就任することを承諾したことを証する書面を添付しなければならない。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 4 です。

正しい選択肢はイとエなので、4が正解です。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. Aの就任承諾書に記載された住所及び氏名が、添付書面として提出された住民票(写)の住所及び氏名と一致するかどうかによって、Aの就任承諾書が真正なものであるかを確認します。従って、本選択肢のケースでは、たとえ住民票(写)が提出されたとしても、Aの就任承諾書にAの住所を記載することを省略できないので、本選択肢は誤りです。

イ. 先例は、取締役の権利義務を有する者は解任することができない、としています(昭和35年10月20日民4.197)。従って、本選択肢は正しいです。

ウ. 取締役の就任による変更の登記又は取締役の氏の変更の登記を申請する者は、婚姻により氏を改めた取締役であって、その申請により登記簿に氏名を記載すべき者につき、婚姻前の氏(記録すべき氏と同一であるときを除く)をも記載するように申し出ることができます。この場合、当該登記の申請書には、当該取締役の婚姻前の氏を称する書面を添付しなければなりません(商業登記81条の2第1項、第2項2号参照)。これは婚姻前の氏が株主総会の議事録の記載から明らかな場合においても同様です。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 監査役の監査の範囲が会計に関するものに限定されている旨の定款の定めがある会社の監査役については、原則として取締役会への出席義務はないものの、出席した以上は、代表取締役の選任に係る取締役会議事録への記名押印の義務が生じることになり、商業登記法61条4項3号の規定も、適用されます。従って、本選択肢は正しいです。

オ. 定款の定めに基づき、取締役の互選により取締役の中から代表取締役を定めていた取締役会設置会社でない株式会社が当該定款の定めを廃止した場合において、定款または株主総会の決議によって代表取締役を定めなかった場合には、会社法349条1項及び2項の規定により、従前代表権を有していなかった他の取締役は、その在任中、法律上当然の効果として各自代表権を有することとなります。そして、この場合の代表取締役の変更の登記申請書には、当該他の取締役が代表取締役に就任することを承諾したことを証する書面の添付は不要です。従って、本選択肢は誤りです。

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02

正解は4です。

ア…誤りです。取締役会設置会社において、取締役の就任の登記には、➀株主総会議事録または種類株主総会議事録(=選任を証する書面、商業登記法46条2項)、②当該取締役の氏名と住所を記載した就任承諾書(商業登記法54条1項)、③再任でない場合、本人確認書類(=就任承諾書に記載した新取締役の氏名と住所を証する書面)(商業登記規則61条7項)、の提供が必要です。住民票の写しは本人確認書類として使用できますが、就任承諾書の住所情報の代わりにはなりません。

イ…正しいです。退任した後も取締役としての権利義務を有する取締役(権利義務取締役)については、解任による変更の登記の申請をすることはできません(最判平20・2・26、H2過去問)。この場合、株主らは裁判所に申立てを行い、一時役員の職務を行うべき者(仮役員)を選任すべきとされます。

ウ…誤りです。役員について、婚姻による氏の変更の登記と併せて、婚姻前の氏をも登記簿に記録するよう申出ができます。この場合、変更登記に婚姻前の氏を記載するとともに、婚姻前の氏を称する書面の添付が必要です(商業登記規則81条の2第2項2号)。

エ…正しいです。変更前の代表取締役が、代表取締役であった時の印鑑ではなく、個人の実印を使用して、変更後の代表取締役の選任を行った取締役会議事録に押印していた場合には、当該取締役会に出席し議事録に押印した取締役と監査役全員の印鑑証明書が必要となります(会社法369条3項)。監査の範囲を会計に関するものに限定されている監査役は、取締役会に出席義務はありませんが、出席した場合には記名押印が必要となりますので、本問の監査役も印鑑証明書が必要です。

オ…誤りです。代表取締役の互選を定款の変更により廃止し、その後に代表取締役を定めなかったときは、従前代表権を有しなかった他の取締役全員が代表権を得ます(会社法349条2項)。承諾の意思に関わりない規定ですので、就任承諾書は不要です。

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03

ア 誤り。
 
新たに役員に就任したことによる役員変更の登記申請書に当該役員の住民票の写しを添付した場合であっても、当該役員の就任承諾書には、住所を記載しなければなりません。

イ 正しい。
 
役員が、任期満了又は辞任により退任したことにより、役員が欠けた場合又は会社法若しくは定款で定めた役員の員数が欠けた場合には、新たに選任された役員が就任するまで、役員としての権利義務を有することになります(会社法346条1項)。このような役員を「権利義務役員」といいます。
新たに役員が選任されて会社法若しくは定款で定めた役員の員数を満たすまでは、株主総会の決議をもってしても権利義務役員を解任することはできません。
よって、権利義務役員の解任による変更登記を申請することもできません。

ウ 誤り。
 
役員の氏の変更登記を申請する場合、婚姻前の氏をも登記簿に記録するよう申し出ることができます(商業登記規則81条の2第1項)。
この申出をするには、婚姻前の氏を記録すべき役員の氏名とその婚姻前の氏を登記申請書に記載するとともに、これらを証する書面を添付しなければなりません(同2項)。

エ 正しい。
 
取締役会設置会社において、新たに代表取締役を選定したことによる代表取締役の変更の登記申請書には、選定に係る取締役会に出席した取締役及び監査役(監査の範囲が会計に関するものに限定されている場合を含む。)が取締役会議事録に押印した印鑑につき、市区町村長の作成した印鑑証明書を添付しなければなりません。

オ 誤り。
 
取締役の互選により取締役の中から代表取締役を選定するとの定款の定めを廃止した場合において、定款又は株主総会決議によって代表取締役を定めなかったときは、各取締役が会社を代表することになります(会社法349条1項、2項)。
そのため、従前代表権がなかった取締役にも代表権が認められ、別途代表取締役に就任す ることに対する承諾は必要ありません。
 
よって、従前代表権を有しなかった他の取締役を代表取締役とする変更の登記申請書にお いて、代表取締役就任の承諾書は添付書面とはなりません。

以上から、正しい肢はイとエとなり、4が正解となります。

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