司法書士の過去問
平成28年度
午後の部 問66

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問題

平成28年度 司法書士試験 午後の部 問66 (訂正依頼・報告はこちら)

会計監査人設置会社以外の株式会社の資本金の額の変更の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  定時株主総会において、当該定時株主総会の日における欠損の額を超えない範囲で資本金の額を減少する旨の決議が普通決議によりされたとしても、その旨の記載がされた株主総会の議事録を添付して、資本金の額の減少による変更の登記の申請をすることができる。

イ  準備金の資本組入れについて、株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において、当該準備金の額の減少の効力が生ずる日後の準備金の額が当該日前の準備金の額を下回らないときは、当該準備金の資本組入れに関する取締役の過半数の一致を証する書面又は取締役会の議事録を添付して、準備金の資本組入れによる変更の登記の申請をすることができる。

ウ  資本金の額の減少による変更の登記においては、登記簿から、減少する資本金の額が当該資本金の額の減少の効力が生ずる日における資本金の額を超えないことを確認することができるため、当該登記の申請書には、資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付することを要しない。

エ  剰余金の資本組入れによる変更の登記の申請書には、臨時株主総会の議事録を添付することができない。

オ  資本金の額の減少と同時に募集株式の発行を行う場合において、当該資本金の額の減少の効力が生ずる日後の資本金の額が当該日前の資本金の額と同額であるときは、資本金の額の変更の登記の申請をすることを要しない。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 5 です。

誤っている選択肢はエとオなので、5が正解です。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 定時株主総会の決議で資本金の額を減少する場合で、減少する資本金の額が当該決議に係る定時株主総会の日における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えない場合には、普通決議によって決議できます。この場合の登記申請では、当該決議を行った普通決議による株主総会議事録を添付します(会社法309条2項9号、商業登記法46条2項参照)。従って、本選択肢は正しいです。

イ 株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において、当該準備金の額の減少の効力発生日後の準備金の額が当該日前の準備金の額を下回らない場合には、取締役の決定(取締役会設置会社にあっては取締役の決議)でよいとされています(会社法448条3項、商業登記法46条1項、2項参照)。従って、本選択肢は正しいです。

ウ. 先例は、資本金の額の減少による登記の変更において、資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面については、登記簿から、減少する資本金の金額が効力発生日における資本金の額を超えないことを確認できるため、添付を要しない、としています(平成18年3月31日民商782)。従って、本選択肢は正しいです。

エ. 先例は、剰余金を減少して資本金の額を増加する場合は、定時株主総会に限らず、臨時株主総会の決議によりすることができる、としています(平成18年3月31日民商782)。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 100%減資の場合等において、資本金の額の減少の登記と募集株式の発行による変更を同時に申請すべき場合があるが、中間省略登記のような形態で減増資後の最終的な金額への1つの変更登記だけを申請することは許されません。従って、本選択肢は誤りです。

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02

正解は5です。

ア…正しいです。定時株主総会で、かつ、当該定時株主総会の日における欠損の額を超えない範囲で資本金の額を減少させる場合には、当該資本金の額の減少は、株主総会の普通決議ですることができます(会社法309条2項9号)。

イ…正しいです。株式の発行と同時に準備金の額を減少させる場合において、準備金の額の減少の効力発生日後の準備金の額が、効力発生日後の準備金の額を下回らないときには、取締役の決定(取締役会設置会社においては、取締役会決議)のみで準備金の額を減少できます(会社法448条3項)。したがって、その登記申請には、取締役会設置会社では取締役会議事録、取締役会非設置会社では取締役の過半数の一致を証する書面、の添付が必要になります(商業登記法46条1項、2項)。

ウ…正しいです。商業登記規則61条9項では、株式会社の資本金の額の減少の登記申請において、「資本金の額が会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面」の添付が必要とされていますが、登記簿から、減少する資本金の額が効力発生日における資本金の額を超えないこと(会社法447条2項)を確認することができるため、添付を要しないものとされています(平18・3・31民商782号通達)。

エ…誤りです。株式会社は、剰余金の額を減少させて、資本金の額の増加、すなわち資本組入れをすることができます(会社法450条1項)。この場合、株主総会の普通決議で➀減少する剰余金の額、②資本金の額の増加の効力発生日、を定める必要があります(会社法450条2項)。この株主総会は、臨時株主総会を含みます。

オ…誤りです。株式の発行と同時に資本金の額の減少をしようとする場合にあって、資本金の額の減少の効力発生日後の資本金の額が、効力発生日前の資本金の額と同額になるときは、株主総会の決議が不要になり、取締役の決定(取締役会設置会社においては、取締役会決議)のみで資本金の額の減少の決定ができます(会社法447条3項)。当該決定が株主の不利益にならないためです。しかし、資本金の額の変更の登記が不要なわけではありません。

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03


正解 5

ア 正しい。
定時株主総会の決議によって資本金の額を減少する場合(会社法447条1項)において、減少する資本金の額が定時株主総会の日における欠損の額として法務省令で定める方法により算定される額を超えない場合は、普通決議によって決議することができます(同309条2項9号)。
この場合、資本金の額の減少による変更登記の申請には、その旨の記載がされた株主総会の議事録を添付することになります(商業登記法46条2項)。

イ 正しい。
準備金の資本組入れについて、株式の発行と同時に準備金の額を減少する場合において、当該準備金の額の減少の効力が生ずる日後の準備金の額が当該日前の準備金の額を下回らない場合は、取締役の決定または取締役会の決議によってすることができます(会社法448条3項)。
この場合、準備金の資本組入れによる変更登記の申請には、取締役会の過半数の一致があったことを証する書面又は取締役会の議事録を添付することになります(商業登記法46条1項、2項)。

ウ 正しい。
資本金の額の減少による変更登記においては、登記簿から、減少する資本金の額が効力が生ずる日における資本金の額を超えないことを確認できるため、規定上は必要とされる会社法及び会社計算規則の規定に従って計上されたことを証する書面を添付する必要はないとされています(平成18年3月31日民商782号回答)。

エ 誤り。
剰余金の資本組入れをするには、株主総会で所定の事項を決議しなければなりません(会社法450条1項、2項)。
もっとも、ここでいう株主総会については、定時株主総会であると臨時株主総会であるとを問わないとされています(平成18年3月31日民商782号回答)。

オ 誤り。
資本金の額の減少と同時に募集株式の発行を行うといったように、資本金の額を減少した直後に増加した場合、中間省略的な登記をすることはできません。
よって、減資後に増資した結果、資本金の額が同額になったとしても、資本金の額の変更登記をしなければなりません。

よって、誤っている肢はエとオとなり、5が正解となります。

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