司法書士の過去問
平成28年度
午後の部 問68

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問題

平成28年度 司法書士試験 午後の部 問68 (訂正依頼・報告はこちら)

持分会社の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。


ア  合資会社において、有限責任社員全員の退社と同時に新たな有限責任社員が加入した場合には、合資会社の解散の登記及び合名会社の設立の登記をした後でなければ、新たな有限責任社員の加入による変更の登記の申請をすることはできない。

イ  定款に業務執行社員の任期の定めがある合同会社において、任期満了後、直ちにその業務執行社員が再び業務執行社員に定められたときは、業務執行社員の選任による変更の登記の申請を要しない。

ウ  業務執行社員の中から社員の互選により代表社員を定める旨の定款の定めがある合資会社においては、業務執行権を有する有限責任社員を代表社員に互選したことを証する書面を添付しても、代表社員の選任による変更の登記の申請をすることができない。

エ  合資会社の業務を執行しない有限責任社員がその持分の一部を他の社員に譲渡したことによる変更の登記の申請書には、定款に別段の定めがある場合を除き、持分の譲渡契約書、譲渡された持分が業務を執行しない社員に係るものであることを証する書面及び業務執行社員の全員の同意があったことを証する書面を添付しなければならない。

オ  業務執行社員の中から社員の互選により代表社員を定める旨の定款の定めがある合名会社の代表社員が法人である場合には、当該法人の代表者が職務執行者となるときであっても、合名会社の設立の登記の申請書には、当該代表者が職務執行者に就任することを承諾したことを証する書面を添付しなければならない。
  • アエ
  • アオ
  • イウ
  • イオ
  • ウエ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 4 です。

正しい選択肢はイとオなので、4が正解です。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 先例は、有限責任社員全員又は無限責任社員全員の退社と同時に有限責任社員又は無限責任社員が加入したときは、会社法639条に該当せず、種類の変更の登記は不要である、としています(昭和42年9月29日民甲2411号)。従って、本選択肢は誤りです。

イ. 先例は、定款に業務執行社員に係る任期の規定がある合同会社において、当該規定による業務執行社員の任期満了後、直ちに、当該業務執行社員が業務執行社員に再度指定された場合には、会社法915条1項の規定に基づく業務執行社員に係る変更の登記をする必要はない、としています(平成20年11月21日民商3037)。従って、本選択肢は正しいです。

ウ. 定款に代表社員を業務を執行する社員の中から社員の互選により定めることができる旨の定めがあるときは、定款、就任承諾書及び業務を執行する社員の過半数の同意があったことを証する書面を添付して、当該登記を申請することができます(商業登記法111条、93条、商業登記規則90条、82条参照)。従って、本選択肢は誤りです。

エ. 業務を執行しない有限責任社員が持分を他の社員に譲渡したことによる変更の登記の申請書には、業務執行社員の全員の同意があったことを証する書面を添付すれば足ります(商業登記法111条、93条参照)。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 代表社員が法人の場合には、合名会社の設立の登記申請書には、当該法人の登記事項証明書、当該法人の職務執行者の選任に関する書面及び当該法人の職務を執行すべき者の就任承諾書を添付しなければなりません(商業登記法94条2号参照)。従って、本選択肢は正しいです。


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02


正解 4

ア 誤り。
合資会社において、全ての有限責任社員が退社するのと同時に新たな有限責任社員が加入した場合は、会社法639条にいう「合資会社の社員が無限責任社員のみとなった場合」にあたらず、種類の変更があったとはみなされないとされています(昭和42年9月29日民甲2411号回答)。
よって、種類変更の登記をする必要はなく、社員全員の退社と加入した社員の登記を同時に申請することで足ります。

イ 正しい。
定款に業務執行社員の任期に係る規定がある合同会社において、任期満了後、直ちにその業務執行社員が業務執行社員に再度指定された場合は、業務執行社員に係る変更の登記をする必要はないとされています(平成20年11月21日民商3037号回答)。

ウ 誤り。
定款の定めにより、業務執行社員の中から代表社員を互選した場合は、 互選を証する定款、就任承諾書を添付して、代表社員の選任による変更登記を申請することができます(商業登記法111条、同93条)。
このことは、互選された代表社員が業務執行権を有する有限責任社員であっても同じです。

エ 誤り。
合資会社の業務を執行しない有限責任社員がその持分の全部を他の社員に譲渡する場合の変更登記の申請書には、持分の譲渡契約書、譲渡された持分が業務を執行しない社員に係るものであることを証する書面、そして、業務執行社員全員に係る同意書を添付しなければなりません。
しかし、持分の一部を他の社員に譲渡する場合、有限責任社員は退社しないため、出資額の変更登記を申請することになり、この場合は、業務執行社員全員に係る同意書を添付すれば足ります(商業登記法111条、同93条)。

オ 正しい。
合名会社の代表社員が法人である場合、合名会社の設立登記の申請書には、①法人の登記事項証明書、②法人社員の職務執行者の選任に関する書面、 ③法人社員の職務執行者の就任承諾書を添付する必要があります(商業登記法94条2号)。

よって、正しい肢はイとオとなり、4が正解となります。

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03

正解は4です。

ア…誤りです。合資会社の全ての有限責任社員の退社と同時に新たな有限責任社員が加入した場合には、合資会社から合名会社への変更登記は必要ありません(先例)。

イ…正しいです。業務執行社員には任期がありませんが、定款で任期を定めることもできます。そして、定款に業務執行社員に係る任期の規定がある合同会社において、当該定款規定による業務執行者委員の任期満了後、直ちに当該社員が業務執行者委員に再度指定された場合には、会社法915条1項に基づく業務執行社員に係る変更の登記を申請する必要はありません(平21・11・21民商3037号通知)。

ウ…誤りです。持分会社では、定款または定款の定めに基づく社員の互選により、業務執行社員の中から、当該持分会社の代表社員を決めることができます(会社法599条3項)。合資会社の無限責任社員は、全員、業務を執行する社員ですが、有限責任社員に業務執行権を付与することもできます。当該有限責任社員を代表社員にすることもでき、代表社員の登記には➀互選を証する書面、②代表社員となった者の就任承諾書、③定款、の添付が必要です(商業登記法111条、93条)。

エ…誤りです。持分会社の業務を執行しない有限責任社員は、(社員全員の同意ではなく)業務執行社員全員の同意があれば、持分の全部または一部を譲渡できます(会社法585条1項)。持分の全部譲渡の場合には、当該社員は退社することになるので、変更の申請には、➀持分譲渡契約書(=退社の事実を証する書面)(商業登記法96条1項、111条)、②譲渡された持分が業務執行社員のものでないことを証する書面、③業務執行社員全員の同意書(商業登記法93条)が必要です。しかし、持分の他の社員への一部譲渡では、出資金の価額の変更のみ行われるため、業務執行社員全員の同意書(商業登記法93条)のみ必要です(先例)。

オ…正しいです。法人を持分会社の社員とする場合、実際に職務を行うべき者(=職務執行者)を選任しなければなりません(会社法598条1項)。合名会社を代表する社員が法人である場合に、当該合名会社の設立の登記には、➀当該法人の登記事項証明書、②当該法人の職務執行者の選任を証する書面、③当該法人の職務執行者の就任承諾書、が必要です(商業登記法94条2号)。

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