司法書士の過去問
平成29年度
午前の部 問2
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問題
平成29年度 司法書士試験 午前の部 問2 (訂正依頼・報告はこちら)
財政に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 国の収入支出の決算は、毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならないが、各議院がその決算を承認するかどうかを議決することはできない。
イ 内閣は、予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づかずに予備費を設けることができるが、その支出については、事後に国会の承諾を得なければならない。
ウ 予算の法的性質を法律それ自体と解する見解の根拠としては、予算が政府のみを拘束することや、予算が会計年度ごとに成立することを指摘することができる。
エ 公の支配に属しない教育の事業に対し公金を支出することは、憲法に違反する。
オ 新たに租税を課すには、納税義務者、課税物件、課税標準、税率等の課税要件のみならず、その賦課・徴収の手続についても、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
ア 国の収入支出の決算は、毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならないが、各議院がその決算を承認するかどうかを議決することはできない。
イ 内閣は、予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基づかずに予備費を設けることができるが、その支出については、事後に国会の承諾を得なければならない。
ウ 予算の法的性質を法律それ自体と解する見解の根拠としては、予算が政府のみを拘束することや、予算が会計年度ごとに成立することを指摘することができる。
エ 公の支配に属しない教育の事業に対し公金を支出することは、憲法に違反する。
オ 新たに租税を課すには、納税義務者、課税物件、課税標準、税率等の課税要件のみならず、その賦課・徴収の手続についても、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。
- アウ
- アエ
- イウ
- イオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解は 5 です。
正しい選択肢はエとオであり、5が正解です。
各選択肢の解説は以下のとおりです。
ア 国の収入支出の決算は、毎年会計検査院がこれを検査して、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなくてはならないが、各議院はその決算を承認するかどうかの議決をすることができます。従って、本選択肢は誤りです。
イ 憲法87条1項は、「予見しがたい予算の不足に充てるために、国会の議決に基づいて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる」と定め、第2項では「全ての予備費の支出については、内閣は、事後に国会の承認を得なければならない」と規定しています。従って、国会の議決に基づかずに予備費を設けることはできないので、本選択肢は誤りです。
ウ 予算が政府のみを拘束することや、予算が会計年度ごとに成立することは、予算に法的な拘束力を認めるが、法律とは異なった国法の一形式であるとする見解(予算法規範説)の根拠です。従って、本選択肢は誤りです。
エ 憲法89条は「公金その他公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育、若しくは博愛の事業に対して、これを支出し、又はその利用に供してはならない」と規定しています。従って、本選択肢は正しいです。
オ 判例(昭和30年3月23日最高裁大法廷)では、「租税を創設し、改廃するのはもとより、納税義務者、課税標準、徴税の手続きはすべて法律に基づいて定められなくてはならないと同時に、法律に基づいて定めることろに任せられている」としています。従って、本選択肢は正しいです。
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02
ア…誤りです。国の収入支出の決算は、毎年、会計検査院が検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、決算を国会に提出しなければなりません(憲法90条1項)。衆議院・参議院ともに決算の承認を行う委員会を設置しており(国会法41条2項、3項)、各議院で予算の承認を議決することができます。したがって、「議決することができない」というのは誤りです。ただし、決算の承認について衆議院の優越はありません。
イ…誤りです。内閣は、内閣の責任で予備費を支出することができますが、国会の議決に基づいて予備費を定めなくてはなりません(憲法87条1項)。予備費の支出について、事後に国会の承諾を得なければならない、という部分は正しいです(憲法87条2項)。
ウ…誤りです。予算の法的性質の解釈には、➀予算法律説(予算は法律それ自体である:本問前半)、②予算行政説(予算は国会に対する財政計画とする)、③予算法形式説(予算を一般の法律とは異なる独自の法規範とする)があります。予算が政府のみを拘束し、予算の効力が一会計年度であることは、③予算法形式説(予算法規範説などとも)についての記述です。一般にはこの考え方が主流であり、予算法律説・予算行政説は少数派とされています。
エ…正しいです。公金その他の財産は、公の支配に属しない教育の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない、とあります(憲法89条)。
オ…正しいです。あらたに租税を課し、または現行の租税を変更するには、法律または法律の定める条件によることを必要とします(憲法84条)。これは租税法律主義の表れであり、租税法律主義によれば、課税要件・租税の賦課手続・租税の徴収手続はすべて法律または法律の定める条件により決められなければならないことを指します。
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03
正解は 5 です。
正しい選択肢は、エとオなので、5が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 日本国憲法第90条に「国の収入支出の決算は、すべて毎年会計検査院がこれを検査し、内閣は、次の年度に、その検査報告とともに、これを国会に提出しなければならない。」と定めており、各議院での承認について明記していませんが、承認の議決を禁じるものではありません。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 日本国憲法第87条1項は「予見し難い予算の不足に充てるため、国会の議決に基いて予備費を設け、内閣の責任でこれを支出することができる。」と定めており、国会の議決に基づいて予備費を設け、その支出は内閣の責任で行うとされています。従って、本選択肢は誤りです。
ウ. 予算が政府のみを拘束し、一般国民を直接拘束しないことは予算法律説への代表的な批判です。従って、本選択肢は誤りです。
エ. 日本国憲法第89条に「公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。」と定めており、公の支配に属しない教育への公金支出を禁じています。従って、本選択肢は正しいです。
オ. 日本国憲法第84条で規定する租税法律主義では納税義務者、課税物件、課税標準、税率等の課税要件のみならず、その賦課・徴収の手続についても法律で定める必要があると解釈されています。従って、本選択肢は正しいです。
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