司法書士の過去問
平成29年度
午前の部 問3
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問題
平成29年度 司法書士試験 午前の部 問3 (訂正依頼・報告はこちら)
条約に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものは、幾つあるか。
ア 国家間の合意であるとの条約の性質に照らし、内閣は、事前に国会の承認を経なければ、条約を締結することができない。
イ 既存の条約を執行するために必要な技術的・細目的な協定も国家間の合意であるから、これを締結する場合も、国会の承認を経なければならない。
ウ 条約の締結に必要な国会の承認については、衆議院に先議権はないが、議決に関する衆議院の優越が認められている。
エ 憲法と条約の関係についての憲法優位説を採ると、条約は裁判所の違憲審査の対象とならないという見解を採ることはできない。
オ 条約が裁判所の違憲審査の対象となるという見解を採った場合、条約について違憲判決がされたときは、条約の国内法としての効力のみならず国際法としての効力も失われる。
ア 国家間の合意であるとの条約の性質に照らし、内閣は、事前に国会の承認を経なければ、条約を締結することができない。
イ 既存の条約を執行するために必要な技術的・細目的な協定も国家間の合意であるから、これを締結する場合も、国会の承認を経なければならない。
ウ 条約の締結に必要な国会の承認については、衆議院に先議権はないが、議決に関する衆議院の優越が認められている。
エ 憲法と条約の関係についての憲法優位説を採ると、条約は裁判所の違憲審査の対象とならないという見解を採ることはできない。
オ 条約が裁判所の違憲審査の対象となるという見解を採った場合、条約について違憲判決がされたときは、条約の国内法としての効力のみならず国際法としての効力も失われる。
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この過去問の解説 (3件)
01
各選択肢の解説は以下のとおりです。
ア 条約の締結は内閣が行いますが、事前に、又は、時宜によっては事後に、国会の承認を得ることが必要とされています。従って、本選択肢は誤りです。
イ 条約の締結には国会の承認が必要です。ここでいう「条約」とは、条約という名称の如何に関わらず、当事国に一定の権利義務関係を設定することを目的とした国家間の文書による約束のことを言います。しかし、既存の条約を執行するために必要な技術的・細目的な協定や、条約の具体的な委任に基づいて定められる政府間取決めは、同号所定の「条約」には含まれません。従って、それらを締結する際には国会の議決は不要なので、本選択肢は誤りです。
ウ 条約の締結に必要な国会の承認については、衆議院に先議権はないが、議決に関する衆議院の優越は認められています。従って、本選択肢は正しいです。
エ 憲法優位説の立場に立ったとしても、条約が憲法81条の列挙事項から除外されていること、条約が国家間の合意という特質を持っており一国の意思だけではその効力を失わせることはできないこと、条約は極めて政治的な内容を持つものが多いことを考慮して、条約は裁判所の違憲審査の対象とはならないという見解を取ることができます。従って、本選択肢は誤りです。
オ 条約について違憲判決が行われた時は、条約の国内法としての効力が失われただけで、国際法としての効力は失われません。従って、本選択肢は誤りです。
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02
誤っている選択肢は、ア、イ、エ、オなので、4が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 日本国憲法第73条の三に「条約を締結すること。但し、事前に、時宜によつては事後に、国会の承認を経ることを必要とする」と定めており、国会の事後承認を可能としています。従って、本選択肢は誤りです。
イ. 既存の条約を執行するために必要な技術的・細目的な協定は一般的に行政協定と呼称され、日本国憲法第73条の三の対象に含まれないと解されます。そのため、締結にあたっての国会の承認は不要です。従って、本選択肢は誤りです。
ウ. 日本国憲法第61条に「条約の締結に必要な国会の承認については、前条第二項の規定を準用する。」とあり、第60条に「予算について、参議院で衆議院と異なつた議決をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取つた後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、議決しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。」と議決に関する衆議院の優越を定めています。従って、本選択肢は正しいです。
エ. 日本国憲法第81条に「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と裁判所の違憲審査について規定していますが、当該条項に条約が含まれていないことから、憲法優位説の立場であっても条約を違憲審査の対象外とする立場をとることができます(消極説)。従って、本選択肢は誤りです。
オ. 通説では条約に対して違憲判決が下された場合、条約の国内的効力は無効となりますが、国際法としての効力は他の主権国家との取り決めであることから、一方の国の憲法に従い当然に無効となることを主張することはできないと考えられています。従って、本選択肢は誤りです。
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03
ア…誤りです。内閣は、条約を締結しますが、事前または事後に、国会の承認を経ることを必要とします(憲法73条3号)。
イ…誤りです。国会の承認が必要な条約については、政府の統一見解として、➀法律事項を含む条約、②財政事項を含む条約、③日本と相手国の間、もしくは国家間一般の基本的な関係を法的に規定するという意味において政治的に重要な国際的約束であって、それゆえに発効のために批准が要件とされているもの、とされています(昭49・2・20)。これ以外のもので技術的・細目的なものは承認を要さないということになります。
ウ…正しいです。条約について、衆議院に先議権はありませんが、衆議院の優越が認められています(憲法60条、61条)。
エ…誤りです。憲法優位説の代表的な判例である砂川事件(最判昭34・12・16)でも、条約は「高度の政治性を有するもの」であるため「一見極めて明白に違憲無効と認められない限りは、条約は裁判所の司法審査権の範囲外」とされます。
オ…誤りです。日本国が締結した条約および確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要としますので(憲法98条2項)、違憲である条約は国内では無効となります。しかし国際法学上は、有効に締結された条約は、明白に違憲であることが判明しても、和親的協商による締約国の同意によるのでなければ、条約上の約束を免れることはできないとする宣言(条約の効力に関する宣言、ロンドン1871・1・17)などの援用に見られる通り、条約は国際法として有効であるとする説が有力です。
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