司法書士の過去問
平成29年度
午前の部 問4
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問題
平成29年度 司法書士試験 午前の部 問4 (訂正依頼・報告はこちら)
Aが成年被後見人又は被保佐人である場合に関する次のアからオまでの記述のうち、Aが被保佐人である場合にのみ正しいこととなるものの組合せは、後記 1から5までのうち、どれか。なお、Bは、Aが成年被後見人である場合の成年後見人又はAが被保佐人である場合の保佐人とする。
ア AがBの同意を得ないで不動産を購入した場合において、その売主がBに対し1か月以内にその売買契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず、Bがその期間内に確答を発しないときは、その売買契約を追認したものとみなされる。
イ AがBの同意を得ないで不動産を購入した場合において、その売主がAに対し1か月以内にBの追認を得るべき旨の催告をしたにもかかわらず、Aがその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その売買契約を取り消したものとみなされる。
ウ Aが行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いて不動産を購入したときは、その売買契約を取り消すことができない。
エ AがCの任意代理人として不動産を購入した場合において、Bの同意を得ていないときは、Bの同意を得ていないことを理由として、その売買契約を取り消すことができる。
オ BがAの法定代理人として不動産を購入するには、Bにその代理権を付与する旨の家庭裁判所の審判がなければならない。
ア AがBの同意を得ないで不動産を購入した場合において、その売主がBに対し1か月以内にその売買契約を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をしたにもかかわらず、Bがその期間内に確答を発しないときは、その売買契約を追認したものとみなされる。
イ AがBの同意を得ないで不動産を購入した場合において、その売主がAに対し1か月以内にBの追認を得るべき旨の催告をしたにもかかわらず、Aがその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その売買契約を取り消したものとみなされる。
ウ Aが行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いて不動産を購入したときは、その売買契約を取り消すことができない。
エ AがCの任意代理人として不動産を購入した場合において、Bの同意を得ていないときは、Bの同意を得ていないことを理由として、その売買契約を取り消すことができる。
オ BがAの法定代理人として不動産を購入するには、Bにその代理権を付与する旨の家庭裁判所の審判がなければならない。
- アウ
- アオ
- イエ
- イオ
- ウエ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はイとオです。
ア 制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、補佐人又は補助人に対して、その権限内の行為について、1か月以上の期間を定めて、その期間内にその取り消すことができる行為を追認するかどうかを確答すべき旨の催告をした場合には、これらの者がその期間内に確答を発しない時は、その行為を追認したものとみなします。この規定は成年被後見人・被保佐人の双方に該当するので、本選択肢は双方に該当します。
イ 制限行為能力者の相手側は、被保佐人又は民法17条1項の審判を受けた被補助人に対しては、1か月以上の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができます。この場合においては、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しない場合には、その行為を取り消したものと見做します。この規定は、成年被後見人には該当しないので、本選択肢は被保佐人のみに当てはまります。
ウ 制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いたときは、その行為は取り消すことはできません。この規定は成年被後見人・被保佐人の双方に該当するので、本選択肢は双方に該当します。
エ 代理人は行為能力者である必要はありません。従って、本選択肢では、Aが成年被後見人・被保佐人どちらの場合でも、売買契約を取り消すことができないので、本選択肢は双方に当てはまりません。
オ 成年後見人は成年被後見人の財産に関する包括的な代理権を有しているので、成年被後見人の法定代理人として不動産を購入するには、家庭裁判所の審判を必要としません。他方、家庭裁判所は、民法11条本文に規定する者又は保佐人若しくは保佐監督人の請求によって、被保佐人のために特定の法律行為について保佐人に代理権を付与する旨の審判をすることができます。保佐人は被保佐人の財産に関する包括的な代理権を有していないので、被保佐人の法定代理人として不動産を購入するには、代理権を付与する旨の家庭裁判所の審判が必要です。従って、本選択肢は、被保佐人のみに当てはまります。
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02
正しい選択肢は、イとオです。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. 民法第20条の2に「制限行為能力者の相手方が、制限行為能力者が行為能力者とならない間に、その法定代理人、保佐人又は補助人に対し、その権限内の行為について前項に規定する催告をした場合において、これらの者が同項の期間内に確答を発しないときも、同項後段と同様とする。」と規定されており、第20条の1で「期間内に確答を発しないときは、その行為を追認したものとみなす。」とありますので、本選択肢はBが法定代理人である成年後見人の場合でも、保佐人の場合でも正しいこととなります。従って、Aが被保佐人である場合にのみ成り立つ選択肢ではないため、本選択肢は誤りです。
イ. Aが成年被後見人の場合、民法第98条の2「意思表示の相手方がその意思表示を受けた時に未成年者又は成年被後見人であったときは、その意思表示をもってその相手方に対抗することができない。ただし、その法定代理人がその意思表示を知った後は、この限りでない。」により、追認の催促の相手方になり得ません。一方、Aが被保佐人の場合、民法第20条の4に「制限行為能力者の相手方は、被保佐人又は第17条第1項の審判を受けた被補助人に対しては、第1項の期間内にその保佐人又は補助人の追認を得るべき旨の催告をすることができる。この場合において、その被保佐人又は被補助人がその期間内にその追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなす。」と定められており、被保佐人であるAが期間内に保佐人であるBの追認を得た旨の通知を発しないときは、その行為を取り消したものとみなされます。従って、本選択肢は正しいです。
ウ. 民法第21条に「制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。」と規定されており、Aが成年被後見人であっても被保佐人であっても、本選択肢は正しいこととなります。従って、Aが被保佐人である場合にのみ成り立つ選択肢ではないため、本選択肢は誤りです。
エ. 民法第102に「代理人は、行為能力者であることを要しない。」とあり、制限行為能力者が代理人になることを制限する規定はありません。本選択肢のように制限行為能力者が代理人として不動産売買契約を締結した場合、その結果は代理人である制限行為能力者ではなく、代理を依頼した本人に帰属します。ですから、成年後見人あるいは保佐人の同意を得ていないことを理由とした取り消しが成立しないとしても、制限行為能力者の保護の観点から問題ないと判断されます。従って、本選択肢は誤りです。
オ. Aが成年被後見人である場合、BがAの居住用不動産を処分するためには必ず事前に家庭裁判所に「居住用不動産の処分許可」という申立てをして、その許可を得る必要があります。しかしながら、不動産の購入については特段の定めはありません。一方、Aが被保佐人である場合、BがAの法定代理人として不動産を購入するには家庭裁判所の代理権付与の審判が必要となります。従って、本選択肢は正しいです。
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03
正解はイオです。
ア…Aが成年被後見人でも被保佐人でも正しいです。制限行為能力者の相手方は、保護者に対し、直接追認を要求できる催告権が認められています。この場合、保護者は1ヶ月以上の定められた期間内に追認するかどうかを確答すべきであり、その期間内に返答がなかったときは追認した者とみなされます(20条2項)。
イ…Aが被保佐人の場合のみ正しいです。制限行為能力者の相手方は、制限行為能力者が被保佐人または被補助人であるときに限り、本人に対し、その保佐人または補助人の追認を要求できる催告権が認められています。この場合、被保佐人または被補助人は、1ヶ月以上の定められた期間内に、追認が得られた旨の確答を発すべきであり、その期間内に通知が発せられなかった場合は、その行為を取り消したものとみなされます(20条4項)。
ウ…Aが成年被後見人でも被保佐人でも正しいです。制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるために詐術を用いた場合には、行為を取り消すことができません(21条)。
エ…Aが成年被後見人でも被保佐人でも誤りです。(注.2017(H29)年の民法改正により、制限行為能力者が任意代理人でなく、法定代理人として代理した行為については、取り消すことができることが認められました。選択肢の正誤は変わりません。以下、解説は改正民法によります)制限行為能力者が任意の代理人としてした行為については、行為能力に制限を受けていることを理由として取り消すことができません(102条)。
オ…Aが被保佐人の場合のみ正しいです。成年後見人は、成年被後見人の財産に関する法律行為全般につき、代理して行うことができます(859条)。ただし、被後見人の居住の用に供する建物またはその敷地について、売却その他の処分をするには、家庭裁判所の許可が必要です(859条の3)。本問では不動産の購入であり、居住する建物を失うおそれのある行為ではないので、家庭裁判所の許可は不要です。一方、保佐人は不動産の購入について、原則として同意権のみ有しますが(13条1項)、特定の法律行為につき、代理権を付与する旨の審判ができます(876条の4第1項)。
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