司法書士の過去問
平成29年度
午前の部 問5

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問題

平成29年度 司法書士試験 午前の部 問5 (訂正依頼・報告はこちら)

錯誤に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア 相手方の詐欺によってした法律行為につき要素の錯誤があった場合には、詐欺の規定のほか、錯誤の規定の適用もあり、詐欺を理由とする取消権が時効により消滅した後でも、表意者は、当該法律行為の無効を主張することができる。
イ 売買の目的物に隠れた瑕疵があり、売主に瑕疵担保責任が認められる場合には、この点につき買主に要素の錯誤があったときでも、錯誤の規定の適用はない。
ウ 当事者が和解契約によって争いをやめることを約した場合には、その争いの目的である事項につき錯誤があったときでも、錯誤の規定の適用はない。
エ 養子縁組の意思表示については、錯誤の規定の適用があり、表意者に重過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。
オ 家庭裁判所に対してされた相続の放棄の意思表示については、錯誤の規定の適用はない。
  • アウ
  • アエ
  • イエ
  • イオ
  • ウオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 1 です。

正しい選択肢はアとウなので、1が正解です。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア 表意者は、詐欺を理由とする取消権が時効により消滅した後であっても、錯誤の規定を適用して、当該法律行為の無効を主張できます。従って、本選択肢は正しいです。

イ 瑕疵担保責任と錯誤の規定の競合があった場合には、錯誤の規定が優先して適用されます。従って、本選択肢は誤りです。

ウ 判例は(昭和43年7月9日最高裁)、争いの目的である事項について錯誤があった時でも、和解当事者は錯誤を理由としてその無効を主張できないとしています。従って、本選択肢は正しいです。

エ 養子縁組における人違いなどの錯誤に関しては特則が認められているので、一般規定である民法95条は適用されません。よって、養子縁組の意思表示について錯誤の規定はありません。従って、本選択肢は誤りです。

オ 判例(昭和40年5月27日最高裁)は、相続放棄について民法95条の錯誤の規定が適用されることは当然としています。従って、本選択肢は誤りです。

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02

正解は1です。民法95条の解釈に関する問題です。2017(平成29)年の民法改正により、錯誤については、以下で述べる変更のほか、善意無過失の第三者の権利を害することができないようになりました(95条4項)。

ア…正しいです。(注.上述の民法改正により、錯誤による法律行為は「無効とする」であったものが「取り消すことができる」と変わったため、錯誤にも取消権の消滅時効が適用されると考えられます。以下、解説は改正民法によります)詐欺と錯誤の両方が適用できる場合、表意者はどちらを主張してもかまわないとされています。よって、詐欺を理由とする取消権が時効により消滅しても、錯誤による取消権が消滅時効にかからない場合は、表意者は錯誤による無効を主張できます。

イ…誤りです。目的達成のために要素(=改正民法では、「法律行為の基礎であり、法律行為の目的および取引上の社会通念に照らして重要なもの」)の錯誤があるときは、錯誤に基づく無効が認められます。そして、要素の錯誤が認められるときは、瑕疵担保責任の規定の適用は排除されます(最判昭33・6・14)。

ウ…正しいです。和解契約によって、訴外の代物弁済契約の効力に関する争いを止めることを目的としていた場合で、代物弁済契約の効力自体が争いの目的そのものに該当するため、この点について当事者が和解契約の錯誤による無効を主張することは許されないとされました(最判昭43・7・9)。

エ…誤りです。養子縁組については、その無効と取消を主張できる場合が別に規定されています(802条、803~808条)。過失の有無にかかわらず、当事者間に、(人違いなどで)養子縁組をする意思がないのであれば、無効を主張できます(802条1号)。

オ…誤りです。相続放棄の申述についても、錯誤の規定が適用されます(最判昭40・5・27)。私法上の財産法上の法律行為であることから、当然に錯誤の適用が認められます。

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03

正解は1です。

正しい選択肢は、アとウなので、1が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア. 民法第95条に「意思表示は、法律行為の要素に錯誤があったときは、無効とする。ただし、表意者に重大な過失があったときは、表意者は、自らその無効を主張することができない。」と規定されており、法律行為の成立が無効となるため、取消権が時効により消滅した後でも、表意者は、当該法律行為の無効を主張することができます。従って、本選択肢は正しいです。

イ. 錯誤優先説によれば、要素の錯誤により当該法律行為そのものが無効となりますが、このことにより瑕疵担保責任の前提となる契約が不成立となるため、瑕疵担保責任は発生しえないこととなります。従って、本選択肢は誤りです。

ウ.  民法第695条は「和解は、当事者が互いに譲歩してその間に存する争いをやめることを約することによって、効力を生じる」と規定しています。和解が成立した後、その争いの目的である事項につき民法第95条で定める錯誤があった場合でも、錯誤の規定の適用はないとされています。従って、本選択肢は正しいです。

エ.  養子縁組のような身分行為については、民法95条は適用されず、人違いだけが無効原因となります。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 相続放棄の撤回は民法上認められていませんが、錯誤による無効の主張が認められています。従って、本選択肢は誤りです。

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