司法書士の過去問
平成29年度
午前の部 問6
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問題
平成29年度 司法書士試験 午前の部 問6 (訂正依頼・報告はこちら)
Aは、Bに対し、返還の時期を平成18年11月1日として、金銭を貸し付けた。この消費貸借契約に基づくAの貸金債権(以下「本件貸金債権」という。)の消滅時効に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。なお、当該消費貸借契約の締結は、商行為に当たらないものとする。
ア Bは、平成28年12月1日、本件貸金債権の時効完成の事実を知らないで、Aに対し、本件貸金債権の存在を承認した。この場合、Bは、同月20日に本件貸金債権の消滅時効を援用することができる。
イ Aは、本件貸金債権を担保するため、C所有の土地に抵当権の設定を受けた。Bは、平成27年6月1日、Aに対し、本件貸金債権の存在を承認した。この場合、Cは、平成28年12月20日に本件貸金債権の消滅時効を援用することができない。
ウ Cは、Aとの間で、本件貸金債権に係る債務を主たる債務として連帯保証契約を締結した。Bは、平成28年12月1日、Aに対し、本件貸金債権の消滅時効の利益を放棄する旨の意思表示をした。この場合、Cは、同月20日に本件貸金債権の消滅時効を援用することができない。
エ Cは、Aとの間で、本件貸金債権に係る債務を主たる債務として連帯保証契約を締結した。平成27年6月1日、Bは死亡し、CがBを単独相続した。Cは、平成28年6月1日、主たる債務を相続したことを知りつつ、保証債務の履行として、その一部の弁済をした。この場合、Cは、同年12月20日に本件貸金債権の消滅時効を援用することができる。
オ Bは、平成27年6月1日、本件貸金債権に係る債務の一部の弁済をした。BとCは、同年7月1日、Aを害することを知りながら、Bの唯一の財産である土地について贈与契約を締結し、Cへの所有権の移転の登記がされた。それを知ったAは、平成28年12月1日、当該贈与契約の取消しを求める詐害行為取消請求訴訟を提起した。この場合、Cは、同月20日に本件貸金債権の消滅時効を援用することができない。
ア Bは、平成28年12月1日、本件貸金債権の時効完成の事実を知らないで、Aに対し、本件貸金債権の存在を承認した。この場合、Bは、同月20日に本件貸金債権の消滅時効を援用することができる。
イ Aは、本件貸金債権を担保するため、C所有の土地に抵当権の設定を受けた。Bは、平成27年6月1日、Aに対し、本件貸金債権の存在を承認した。この場合、Cは、平成28年12月20日に本件貸金債権の消滅時効を援用することができない。
ウ Cは、Aとの間で、本件貸金債権に係る債務を主たる債務として連帯保証契約を締結した。Bは、平成28年12月1日、Aに対し、本件貸金債権の消滅時効の利益を放棄する旨の意思表示をした。この場合、Cは、同月20日に本件貸金債権の消滅時効を援用することができない。
エ Cは、Aとの間で、本件貸金債権に係る債務を主たる債務として連帯保証契約を締結した。平成27年6月1日、Bは死亡し、CがBを単独相続した。Cは、平成28年6月1日、主たる債務を相続したことを知りつつ、保証債務の履行として、その一部の弁済をした。この場合、Cは、同年12月20日に本件貸金債権の消滅時効を援用することができる。
オ Bは、平成27年6月1日、本件貸金債権に係る債務の一部の弁済をした。BとCは、同年7月1日、Aを害することを知りながら、Bの唯一の財産である土地について贈与契約を締結し、Cへの所有権の移転の登記がされた。それを知ったAは、平成28年12月1日、当該贈与契約の取消しを求める詐害行為取消請求訴訟を提起した。この場合、Cは、同月20日に本件貸金債権の消滅時効を援用することができない。
- アウ
- アオ
- イエ
- イオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正しい選択肢はイとオであり、4が正解となります。
各選択肢の解説は以下のとおりです。
ア 判例(昭和41年4月20日最高裁)は、債務者が自己の負担する債務について、時効が完成した後に、債権者に対して債務を承認した以上、時効完成の事実を知らなかった時でも、以後、その債務についてその完成した消滅時効の援用をすることは許されない、としています。従って、本選択肢は誤りです。
イ 判例(平成7年3月10日最高裁)は、「他人の債務のために自己の所有物件につき根抵当権等を設定したいわゆる物上保証人が、債務者の承認により被担保債権について生じた消滅時効中断の効力を否定することは、担保権の付従性に抵触し、許されないものと解するのが相当である」としています。従って、本選択肢は正しいです。
ウ 判例(昭和6年6月4日大審院)は、主たる債務者が時効の利益を放棄しても、その効力は連帯保証人には及ばない、としています。従って、本選択肢は誤りです。
エ 判例(平成25年9月13日)は、保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合、当該弁済は特段の事情がない限り、主たる債務者による承認として当該主たる債務の消滅時効を中断する効力を有するものと解するのが相当である、としています。従って、本選択肢は誤りです。
オ 本選択肢では、平成27年6月1日、Bが本件貸金債権に係る債務の一部を弁済したことにより、本件貸金債権の時効中断の効力がCにも及んでいるので、Cは平成28年12月20日の本件貸金債権の消滅時効を援用することはできません。従って、本選択肢は正しいです。
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02
ア…誤りです。消滅時効の完成後に、債務者が債務を承認した場合には、消滅時効の完成を知らなかったときであっても、消滅時効の援用ができません(時効の利益の喪失、最大判昭41・4・20)。債務を承認しながら時効の援用を主張するのは相容れない行為であり、相手方も債務の承認をもって時効の援用をしないものと考えるのが自然なためです。
イ…正しいです。物上保証人は、時効を援用できる「当事者」に含まれます(民法145条)。しかし、根抵当権等の物上保証人が、債務者による債務の承認により生じた時効中断(現在は、「時効の更新」)の効力を否定することは、担保権の付従性に抵触し、担保する債権と同時にでなければ抵当権は消滅しないとした民法396条の規定の主旨にも反しますので、消滅時効を援用できないとされます(最判平7・3・10)。
ウ…誤りです。連帯保証人も、催告の抗弁(452条)と検索の抗弁(453条)以外の、債務者が有する債権者への抗弁権を有します。つまり、主たる債務の消滅時効の援用も認められています。また、時効の利益の援用権者が複数いる場合に、そのうちの一人が時効の利益を放棄しても、その効果は他の援用権者には及びません(大判大5・12・25)。したがって主たる債務者が時効の利益を放棄しても、連帯保証人は消滅時効を独自に援用できます。
エ…誤りです。保証人が主たる債務を相続したことを知りながら保証債務の弁済をした場合、当該弁済は、特段の事情のない限り、主たる債務者による承認として当該主たる債務の消滅時効を中断(現在は「時効の更新」)する効力を有します(最判平25・9・13)。主たる債務者としての行為と、保証人としての行為が異なるものになることは通常考えがたく、当該弁済は、債務の承認と同義に扱うのが相当と解されるためです。
オ…正しいです。詐害行為の受益者は、詐害行為取消権を行使する債権者の債権の消滅時効を援用することができます(最判平10・6・22)。すなわち、受益者も当事者として認められます。しかし、本問の主たる債務者Bは債務の一部弁済を行っており、これは時効の更新事由(債務の承認)にあたりますので、当事者であるCは、Bの一部弁済を行った日から、金銭債権の消滅時効である10年を経過するまでは、消滅時効を主張できません(153条3項)。
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03
正しい選択肢は、イとオなので、4が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア. BがAに対して本件貸金債権の存在を承認したことにより、時効の中断となります。従って、本件貸金債権の消滅時効を援用することができないため、本選択肢は誤りです。
イ. BがAに対して本件貸金債権の存在を承認したことにより、時効の中断となります。従って、Cは本件貸金債権の消滅時効を援用することができないため、本選択肢は正しいです。
ウ. Bによる本件貸金債権の消滅時効の利益を放棄する旨の意思表示があったとしても、Cは本件貸金債権の消滅時効を援用することができます。従って、本選択肢は誤りです。なお、この場合においてAとBの間の主債務はBによる時効の利益の放棄の意思表示があったため、有効に残存することとなります。
エ. Cは主たる債務を相続したことを知りつつ、保証債務の履行として、その一部の弁済をしたため、時効の中断が成立します。従って、Cは本件貸金債権の消滅時効を援用することはできず、本選択肢は誤りです。
オ. 平成27年6月1日にBが債務の一部を弁済したことにより、時効の中断が成立します。その中断の効力がCにも及ぶため、Cは平成28年12月20日の時点で消滅時効を援用することができません。従って、本選択肢は正しいです。
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