司法書士の過去問
平成29年度
午前の部 問24

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問題

平成29年度 司法書士試験 午前の部 問24 (訂正依頼・報告はこちら)

住居侵入罪等に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア Aは、現金自動預払機が設置された銀行の出張所に、その利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で、その営業時間中に、一般の利用客と異なるものでない外観で立ち入った。この場合、Aには、建造物侵入罪が成立する。
イ Aは、甲警察署の中庭に駐車された捜査車両の車種やナンバーを把握するため、甲警察署の敷地の周囲に庁舎建物及び中庭への外部からの交通を制限し、みだりに立入りをすることを禁止するために設けられ、外側から内部をのぞき見ることができない構造となっている高さ2.4メートルのコンクリート製の塀の上部へ上がった。この場合、Aには、建造物侵入罪が成立する。
ウ Aは、B宅に強盗に入ろうと考えて、B宅に赴き、Bに対して、強盗の意図を隠して、「今晩は」と挨拶をしたところ、BがAに対して「おはいり」と答えたので、これに応じてB宅に入った。この場合、Aには、住居侵入罪が成立する。
エ Aは、実父であるBと共にB宅に居住していたが、数日前に家出をしていたところ、Bから金品を強取することについてC、D及びEと共謀の上、B宅に、C、D及びEと一緒に、深夜に立ち入った。この場合、Aには、住居侵入罪は成立しないが、C、D及びEには、住居侵入罪が成立する。
オ Aは、研究所の建物の敷地の周囲に設けられていた、外部との交通を制限し外来者がみだりに出入りすることを禁止するための金網柵を引き倒して、当該敷地内に立ち入ったが、当該建物自体には立ち入らなかった。この場合、Aには、建造物侵入罪は成立しない。
  • アウ
  • アエ
  • イウ
  • イオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は 5 です。

誤っている記述はエとオなので、5が正解です。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

ア 判例(最高裁平成19年7月2日)は、「現金自動預払機利用客のカードの暗証番号を盗撮する目的で、現金自動預払機が設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入ったものであり、そのような立ち入りが同所の管理権者である銀行支店長の意思に反するものであることは明らかであるから、その立ち入りの外観が一般の現金自動預払機利用客と異ならない場合でも、建造物侵入罪が成立する」としています。従って、本選択肢は正しいです。

イ 判例(最高裁平成21年7月13日)は、「本件塀は、本件庁舎建物とその敷地を他から明確に画するとともに、外部からの勧奨を排除する作用を果たしており、正に本件庁舎建物を利用するために供されている工作物であって、刑法130条による建造物の一部を構成するものとして、建造物侵入罪の客体に当たるものと解するのが相当であり、外部から見ることのできない敷地に駐車されていた捜査車両を確認する目的で本件塀の上部に上がった行為について、建造物侵入罪の成立を認めた原判断は正当である」としています。従って、本選択肢は正しいです。

ウ 判例(最高裁昭和24年7月22日)は、「強盗の意図を隠して『今晩は』とあいさつをし、家人が『お入り』と答えたのに応じて住居に入った場合については、外見上家人の承諾があったように見えても、真実においてはその承諾を欠くものであることは言うまでもないことである。されば、原判決が上げているような住居侵入の事実を肯認することはできないのである」としています。従って、本選択肢は正しいです。

エ 本選択肢ではAにも住居侵入罪が成立するので、本選択肢は誤りです。

オ 本選択肢における建物の敷地は建造物侵入罪の客体に当たるから、これに立ち入ったAには、建造物侵入罪が成立します。従って、本選択肢は誤りです。

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02

正解は5です。

誤っている選択肢は、エ、オなので、5が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

エ.最高裁判例によると強盗の目的で、共犯者三名を帯同して、深夜家宅内に侵入した行為は、たとえそれがかつては自らも住み慣れた実父の家であっても、住居侵入罪を実行した場合に該当するとされています。従って、本選択肢は誤りです。

オ. 最高裁判例によると、刑法第130条でいう建造物とは単に家屋を指すだけでなく、その圍繞地を包含するものと解するとされています。従って、本選択肢は誤りです。

参考になった数7

03

正解 5

ア 正しい
判例(最決平成19年7月2日)は、本肢と同様の事案において、「現金自動預払機利用客のカードの暗証番号等を盗撮する目的で現金自動預払機が設置された銀行支店出張所に営業中に立ち入った場合、その立入りの外観が一般の現金自動預払機利用客と異なるものでなくても、建造物侵入罪が成立する。」としています。

イ 正しい
判例(最決平成21年7月13日)は、本肢と同様の事案において、「警察署庁舎建物および中庭への外部からの交通を制限し、みだりに立入りすることを禁止するために設置された高さ約2.4mの本件塀は、建造物侵入罪の客体にあたり、中庭に駐車された捜査車両を確認する目的で本件塀の上部に上がった行為は、建造物侵入罪を構成する。」としています。

ウ 正しい
判例(最判昭和24年7月22日)は、本肢と同様の事案において、「犯人が『今晩は』と挨拶したのに対し、家人が『おはいり』と答えたのに応じて住居に入った場合でも、犯人が強盗の意図でその住居に入った以上、住居侵入罪が成立する。」としています。

エ 誤り
判例(最判昭和23年11月25日)は、本肢と同様の事案において、「強盗の目的で、共犯者三名を帯同して、深夜家宅内に侵入した行為はたとえそれがかつては自らも住み慣れたなつかしい実父の家であっても、数人共同して住居侵入罪を実行した場合に該当する。」としています。

オ 誤り
判例(最判昭和51年3月4日)は、本肢と同様の事案において、「国立大学の構内にある研究所建物に接してその周辺に存在し、かつ、管理者が既存の問塀等の施設と新設の金網柵とを連結して完成した一連の囲障を設置することにより、建物の附属地として建物利用のために供されるものであることが明示された本件土地は、右金網柵が通常の問塀に準じ外部との交通を阻止しうる程度の構造を有するものである以上、囲障設置以前における右土地の管理、利用状況等からして、それが本来建物固有の敷地と認めうるものかどうか、また、囲障設備が仮設的構造をもち、その設置期間も初めから一時的なものとして予定されていたかどうかを問わず、同研究所建物のいわゆる囲繞地として、建造物侵入罪の客体にあたる。」としています。

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