司法書士の過去問
平成29年度
午前の部 問26
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問題
平成29年度 司法書士試験 午前の部 問26 (訂正依頼・報告はこちら)
横領罪等に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aは、動産甲をBと共同占有していたところ、Bの占有を奪ってAの単独の占有に移した。この場合、Aには、横領罪が成立する。
イ Aは、A所有の乙不動産をBに売却し、Bから代金を受け取ったが、登記簿上の所有名義がAに残っていたことを奇貨として、乙不動産について、更にCに売却し、Cへの所有権の移転の登記を行った。この場合、Aには、横領罪が成立する。
ウ Aは、その自宅の郵便受けに誤って配達されたB宛ての郵便物がB宛てのものであることを知りながら、その中に入っていた動産甲を自分のものとした。この場合、Aには、遺失物等横領罪が成立する。
エ Aは、Bと共有している乙不動産についてBから依頼を受けて売却し、その代金を受領してAが単独で占有していたところ、これを自分のものとした。この場合、Aには、横領罪が成立する。
オ Aは、A所有の乙不動産について、Bのために根抵当権を設定したが、その登記がされていなかったことを奇貨として、更にCのために根抵当権を設定し、その登記を行った。この場合、Aには、横領罪が成立する。
ア Aは、動産甲をBと共同占有していたところ、Bの占有を奪ってAの単独の占有に移した。この場合、Aには、横領罪が成立する。
イ Aは、A所有の乙不動産をBに売却し、Bから代金を受け取ったが、登記簿上の所有名義がAに残っていたことを奇貨として、乙不動産について、更にCに売却し、Cへの所有権の移転の登記を行った。この場合、Aには、横領罪が成立する。
ウ Aは、その自宅の郵便受けに誤って配達されたB宛ての郵便物がB宛てのものであることを知りながら、その中に入っていた動産甲を自分のものとした。この場合、Aには、遺失物等横領罪が成立する。
エ Aは、Bと共有している乙不動産についてBから依頼を受けて売却し、その代金を受領してAが単独で占有していたところ、これを自分のものとした。この場合、Aには、横領罪が成立する。
オ Aは、A所有の乙不動産について、Bのために根抵当権を設定したが、その登記がされていなかったことを奇貨として、更にCのために根抵当権を設定し、その登記を行った。この場合、Aには、横領罪が成立する。
- アイ
- アオ
- イエ
- ウエ
- ウオ
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この過去問の解説 (3件)
01
誤っている選択肢はアとオなので、2が正解です。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア 動産甲の共同占有者Bの占有を奪って自己の単独占有に移したAには、窃盗罪が成立するので、本選択肢は誤りです。
イ 判例(最高裁昭和30年12月26日)は「不動産の所有権が売買によって買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべく、従って、いわゆる二重売買においては横領罪の成立が認められる」としています。従って、本選択肢は正しいです。
ウ 判例(大審院大正6年10月15日)は、「郵便集配人が誤って郵便物を配達し、その所持を失った以上は、同郵便物の差出人はこれに伴い封入の物件につき占有を喪失し、郵便物全体は占有を離れた他人の物に該当するから、被告がほしいままにこれを領得した行為は遺失物横領罪に当たる」としています。従って、本選択肢は正しいです。
エ 判例(最高裁昭和43年5月23日)は「他人との共有に係る土地を、その依頼により、表面上単独所有者として第三者に売り渡した者が、その第三者から受領した代金は、特約ないし特殊の事情がない限り、その他人との共有に属するものと解すべきであるから、原判決が、被告人の所為を横領罪に当たるものとしたのは正当である」としています。従って、本選択肢は正しいです。
オ 判例(最高裁昭和31年12月7日)は「不動産所有者が根抵当権を設定した後に更に他人のために根抵当権を設定した場合には、背任罪が成立する」としています。従って、本選択肢は誤りです。
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02
ア 誤り
共同占有者の一人が他の共同占有者の同意を得ずに当該財物を領得の意思で単独の占有に移す行為は、他の共同占有者の占有への侵害にあたり、窃盗罪が成立します。
イ 正しい
判例(最判昭和30年12月26日)は、「横領罪における「占有」は、法律上の占有も含む。」としています。
本肢の場合、登記名義人たるAには濫用のおそれのある支配力が認められるため、法律上の占有が認められ、「占有」が肯定されます。
ウ 正しい
判例(大判大正6年10月15日)は、「郵便配達員が誤配した封書に同封されている物は、委託関係によらずに行為者の占有に帰した物として占有離脱物にあたる。」としています。
エ 正しい
判例(最決昭和43年5月23日)は、共有者の一人が受領した共有物の売却代金と横領罪の客体について、「他人との共有に係る土地を、その依頼により、表面上単独所有者として第三者に売り渡した者が、その第三者から受領した代金は、特約ないし特殊の事情の認められないかぎり、その他人との共有に属し、横領罪の客体となる。」としています。
オ 誤り
判例(最判昭和31年12月7日)は、二重抵当と背任罪の関係について、「甲に対し自己の不動産につき根抵当権設定後、いまだその登記なきを利用し、さらに乙に対して根抵当権を設定してその登記を了する所為は、甲に対する背任罪を構成する。」としています。
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03
誤っている選択肢は、ア、オなので、2が正解となります。
各選択肢の解説は、以下のとおりです。
ア.最高裁判例によると共同占有者の一人が他の占有者の同意を得ることなく当該財物を単独占有に移したときには、他の共同占有者の占有を侵害したこととなり、窃盗罪が成立するとされています。従って、本選択肢は誤りです
オ.最高最判例によると「甲に対し自己の不動産につき根抵当権設定後、いまだその登記なきを利用し、さらに乙に対して根抵当権を設定してその登記を了する所為は、甲に対する背任罪を構成する」とされています。従って、本選択肢は誤りです。
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