司法書士の過去問
平成29年度
午前の部 問31

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問題

平成29年度 司法書士試験 午前の部 問31 (訂正依頼・報告はこちら)

次の対話は、補欠の監査役に関する教授と学生との対話である。教授の質問に対する次のアからオまでの学生の解答のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

教授:任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとする旨の定款の定めがない場合であっても、この補欠の監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時まで短縮することができますか。
学生:ア そのような補欠の監査役の任期についての定款の定めがない場合には、株主総会の決議によっても、その補欠の監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時まで短縮することはできません。
教授:それでは、そのような補欠の監査役の任期についての定款の定めがある場合には、この補欠の監査役の任期はどうなりますか。
学生:イ そのような補欠の監査役の任期についての定款の定めがある場合において、選任の際に、株主総会の決議によって、その監査役が補欠であってその任期を退任した監査役の任期の満了する時までとする旨が定められたときは、その補欠の監査役の任期は、退任した監査役の任期の満了する時までとなります。
教授:次に、株主総会の決議によって、会社法又は定款で定めた監査役の員数を欠くこととなるときに備えて補欠の監査役を選任することができますが、例えば、5名以内の監査役を置くという定款の定めがある監査役会設置会社であるA株式会社(以下「A社」という。)の5名の監査役のうち、3名が社外監査役である場合において、社外監査役ではなく、かつ、常勤の監査役でもない監査役1名が死亡したときは、補欠の監査役は、監査役に就任することができますか。
学生:ウ いいえ。会社法で定めた監査役の員数及び定款で定めた監査役の員数をいずれも満たしているので、補欠の監査役は、監査役に就任することができません。
教授:それでは、A社の5名の監査役のうち、3名が社外監査役である場合において、常勤の監査役ではない社外監査役1名が死亡したときは、補欠の社外監査役は、社外監査役に就任することができますか。
学生:エ はい。会社法で定めた社外監査役の員数を満たしていないので、補欠の社外監査役は、社外監査役に就任することができます。
教授:最後に、A社の5名の監査役のうち、1名だけが社外監査役ではなく、かつ、常勤の監査役である場合において、その常勤の監査役が死亡したときは、補欠の監査役は、監査役に就任することができますか。
学生:オ はい。会社法上、監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければならないので、補欠の監査役は監査役に就任することができます。
  • アイ
  • アウ
  • イエ
  • ウオ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正解は5です。


ア…正しいです。定款で、補欠監査役の任期を、任期満了前に退任した監査役の任期満了時までに定めることが可能です(336条3項)。しかし、これ以外には、(強制的に任期満了とする336条4項の場合を除き)株主総会などで監査役の任期の短縮を可能とする手続は存在しません。


イ…正しいです。補欠監査役は株主総会の普通決議で選任しておくことができ(329条3項)、その場合は監査役に欠員を生じた際に就任します。また、監査役の一人が任期途中で退任する際に、新たに補欠であることを示した監査役を選任し、就任させる場合もあります。いずれの場合も、➀定款の定め(336条3項)があることと、②当該監査役が前任者の補欠であることを示して選任されていること、が必要であり、これらがない場合、補欠監査役の任期を、退任した監査役の任期満了の時までに短縮できません。


ウ…正しいです。監査役会設置会社においては、監査役は3人以上で、そのうち半数以上は社外監査役でなければなりません(335条3項)。本問では、死亡による退任によって監査役が4人になり、そのうち社外監査役が3人になりますので、常勤であるか否かにかかわらず、補欠の監査役を就任させる必要はありません。


エ…誤りです。選択肢ウに述べた会社法335条3項の「半数以上」とは、あくまで社外監査役が監査役のうちの半数いればよいという意味で、過半数を意味するものではありません。本問では、死亡による退任によって監査役が4人になり、社外監査役が2人になります。よって、ちょうど社外監査役が監査役の半数を占めますので、補欠監査役の就任はありません。


オ…誤りです。監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を最低1名以上選出しなければなりませんが(390条3項)、この監査役には社外監査役に限るなどの限定条件はありませんので、本問のように常勤の監査役が欠けた場合は、残りの監査役4人の中から常勤の監査役を選べばよく、補欠監査役の就任はありません。

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02

正解は5です。

誤っている選択肢は、エとオなので、5が正解となります。

各選択肢の解説は、以下のとおりです。

エ.会社法第335条第3項によると、監査役会は3人以上の監査役が必要で、そのうち半数以上は社外監査役でなければならないとされています。A社の社外監査役3名のうち1名が死亡した場合、4名の監査役のうち2名が社外監査役となることとなり、会社法で定める基準を満たしているため、補欠監査役が直ちに就任できることとはなりません。従って、本選択肢は誤りです。

オ.エと同様に会社法第335条第3項で定める要件を満たしているため、補欠監査役が直ちに就任できることとはなりません。従って、死亡した監査役を除く4名から新たに常任監査役を選定する、または株主総会の選任決議を経て監査役を選任し、選任された監査役から常任監査役を選定することとなるため、本選択肢は誤りです。

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03


正解 5

ア 正しい。
監査役の任期は、定款又は株主総会決議によって短縮することはできません(会社法336条1項)。
もっとも、定款によって、任期の満了前に退任した監査役の補欠として選任された監査役の任期を退任した監査役の任期の満了する時までとすることは可能です(同条3項)。

イ 正しい。
補欠の監査役の任期について定款に定めがあっても、その者を選任する際に、株主総会の決議によって、被選任者が補欠であること、また、その任期は退任した監査役の任期が満了する時までであることを定めなければ、補欠の監査役の任期は通常の任期となります(会社法336条1項)。

ウ 正しい。
監査役会設置会社において、監査役は、3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければなりません(会社法335条3項)。
本肢において、現在の監査役の員数は4名であり、そのうちの半数以上にあたる3名が社外監査役です。
よって、会社法で定めた監査役の員数及び定款で定めた監査役の員数をいずれも満たしていることになり、補欠監査役は、監査役に就任することはできません。

エ 誤り。
監査役会設置会社において、監査役は、3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければなりません(会社法335条3項)。
本肢において、現在の監査役の員数は4名であり、そのうちの半数以上にあたる2名が社外監査役です。
よって、会社法で定めた社外監査役及び定款で定めた監査役の員数をいずれも満たしていることになり、補欠の社外監査役は、社外監査役に就任することはできません。

オ 誤り。
監査役会設置会社において、監査役は、3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役でなければなりません(会社法335条3項)。
本肢において、現在の監査役の員数は4名であり、そのうちの半数以上にあたる全員が社外監査役であるため、会社法で定めた社外監査役及び定款で定めた監査役の員数をいずれも満たしていることになります。
また、監査役会は、監査役の中から常勤の監査役を選定しなければなりませんが(会社法390条3項)、本肢では監査役の員数を欠いているわけではないため、補欠の監査役は監査役に就任することはできません。
なお、この場合、現在の4名の社外監査役の中から常勤の監査役を選定することになります。


よって、誤っている肢はエとオとなり、5が正解となります。

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