司法書士の過去問
平成29年度
午後の部 問55
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問題
平成29年度 司法書士試験 午後の部 問55 (訂正依頼・報告はこちら)
甲不動産の所有権の登記名義人であるAが遺言を作成して死亡した場合に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aは、平成25年2月22日、Aの子Bに甲不動産を相続させる旨の遺言をしたが、平成26年4月19日、当該遺言を全て取り消し、Aの子Cに甲不動産を相続させる旨及び遺言執行者をDとする旨の遺言をした後に死亡し、さらにその後、Bが、平成25年2月22日付け遺言を提供して相続を登記原因とするAからBへの所有権の移転の登記の申請をし、当該所有権の移転の登記がされた。この場合において、Dは、Bに対し、当該所有権の移転の登記の抹消登記手続を求める訴えを提起し、これを認容する判決が確定したときは、当該判決書の正本を提供して当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。
イ Aが、甲不動産を売却してその代金をBに遺贈する旨の遺言をし、遺言執行者Cを指定した場合において、Cが甲不動産をDへ売却したときは、Cは、売買を登記原因としてAからDへの所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ Aが甲不動産をBへ遺贈する旨の遺言をしたが、当該遺言に基づく所有権の移転の登記がされる前に、Aの相続人Cが当該遺贈の全部について遺留分減殺請求をした場合には、Cは、相続を登記原因とするAからCへの所有権の移転の登記を申請することができる。
エ Aが、甲不動産をBに遺贈したが、Aの死後当該遺贈に基づく登記が申請されないままBが甲不動産をCに遺贈するとともに遺言執行者Dを指定した場合において、Bが死亡したときは、Dは、Aの相続人全員と共同であっても、遺贈を登記原因とするAからCへの所有権の移転の登記を申請することができない。
オ Aには子B及びCが、Cには子Dがおり、AがCを廃除する旨の遺言をし、その廃除の審判が確定した場合において、相続を登記原因とするAからB及びDへの所有権の移転の登記を申請するときは、当該廃除の審判書及び確定証明書を提供しなければならない。
ア Aは、平成25年2月22日、Aの子Bに甲不動産を相続させる旨の遺言をしたが、平成26年4月19日、当該遺言を全て取り消し、Aの子Cに甲不動産を相続させる旨及び遺言執行者をDとする旨の遺言をした後に死亡し、さらにその後、Bが、平成25年2月22日付け遺言を提供して相続を登記原因とするAからBへの所有権の移転の登記の申請をし、当該所有権の移転の登記がされた。この場合において、Dは、Bに対し、当該所有権の移転の登記の抹消登記手続を求める訴えを提起し、これを認容する判決が確定したときは、当該判決書の正本を提供して当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。
イ Aが、甲不動産を売却してその代金をBに遺贈する旨の遺言をし、遺言執行者Cを指定した場合において、Cが甲不動産をDへ売却したときは、Cは、売買を登記原因としてAからDへの所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ Aが甲不動産をBへ遺贈する旨の遺言をしたが、当該遺言に基づく所有権の移転の登記がされる前に、Aの相続人Cが当該遺贈の全部について遺留分減殺請求をした場合には、Cは、相続を登記原因とするAからCへの所有権の移転の登記を申請することができる。
エ Aが、甲不動産をBに遺贈したが、Aの死後当該遺贈に基づく登記が申請されないままBが甲不動産をCに遺贈するとともに遺言執行者Dを指定した場合において、Bが死亡したときは、Dは、Aの相続人全員と共同であっても、遺贈を登記原因とするAからCへの所有権の移転の登記を申請することができない。
オ Aには子B及びCが、Cには子Dがおり、AがCを廃除する旨の遺言をし、その廃除の審判が確定した場合において、相続を登記原因とするAからB及びDへの所有権の移転の登記を申請するときは、当該廃除の審判書及び確定証明書を提供しなければならない。
- アイ
- アウ
- イオ
- ウエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア…正しいです。ある遺言が新しい遺言と抵触するときは、その抵触する部分につき、新しい遺言でもって前の遺言を撤回したとみなします(1023条)。また、遺言は、遺言者死亡の時からその効力を生じます(985条)。したがって、Bの登記時、Bは甲不動産の所有権がなく、Bの登記原因は無効であったことになります。登記原因が無効なものであった場合、所有権移転の登記の抹消を申請できます。
イ…誤りです。本問は清算型遺贈と呼ばれるものです。この場合、当該不動産につき、相続人名義とする相続による所有権移転の登記を申請しなければなりません(先例)。ちなみに、Bが相続人であるか否かに関わらず、「受遺者に対して特定の不動産を遺贈する」旨の遺言に基づく登記原因は、遺贈となります(先例)。相続分の指定にも遺産分割の方法の指定にもあたらないためです。
ウ…正しいです。遺贈を原因とする所有権移転の登記をする前に、遺留分減殺請求があった場合には、遺贈の登記をすることなく、遺留分減殺請求をした者の単独申請による「年月日相続」を原因とする相続による所有権移転の登記を申請できます(H19過去問)。また、遺贈の「登記後」に遺留分減殺請求がされた場合には、遺贈の登記を抹消することなく、「遺留分減殺」を登記原因として、受遺者(登記名義人)を登記義務者、遺留分減殺請求を行使した相続人を登記権利者とする所有権移転の登記を申請します(先例)。
エ…正しいです。中間省略登記は原則として禁じられていますが、相続を原因とし、中間の相続が単独相続である場合(遺産分割協議などを経た場合も含む)に限り、認められています(先例)。本問の場合、Aに他の相続人がいますので、中間省略登記は認められません。
オ…誤りです。相続による所有権移転の登記には、相続を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報およびその他の登記原因を証する情報を提供しなければなりませんが(不動産登記法61条、不動産登記令別表22)、相続廃除の情報は戸籍に記載がありますので、Cが排除されBおよびDのみが相続人である相続証明書としては戸籍謄本があれば足ります。したがって審判書は必要ありません。
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02
誤っているのはイとオなので、3が正解です。
各選択肢の解説は次のとおりです。
ア 遺言執行者がいる場合、相続人による遺言執行を妨げるべき行為は絶対的無効です。従って、遺言執行者は遺言執行に必要な行為として当該登記の抹消登記を求める訴えを提起することができ、これを認容する判決が確定したときは、当該判決書の正本を提供して当該所有権移転登記の抹消を申請することができます。従って、本選択肢は正しいです。
イ 相続人がある場合、遺言者の死亡の日から売却の日までの間は、不動産の所有権は一旦その相続人に帰属します。そのため、相続登記を経由した後に不動産の買主と遺言執行者が、売買を登記原因として所有権移転登記を申請することになります。従って、本選択肢は誤りです。
ウ 先例(昭和30年5月23日民事甲973)は、遺贈による所有権移転登記がされる前に遺留分減殺請求がされた場合において、直接相続の登記ができるとしています。従って、本選択肢は正しいです。
エ 本事例において、所有権はAからB、BからCへと順次移転しているため、中間を省略した登記はできません。従って、本選択肢は正しいです。
オ 廃除があった場合には、被廃除者の戸籍の身分事項欄にその旨が記載されるので、被廃除者を除く他の相続人への相続登記に対して、登記原因情報の1つとして被廃除者の戸籍全部事項証明書を添付すれば足ります。従って、本選択肢は誤りです。
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03
ア 正しい
前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したとみなされます(民法1023条1項)。
本肢では、平成26年4月19日付け遺言により平成25年2月22日付けは全て取り消されているため、平成25年2月22日付け遺言は効力を有しないことになります。
したがって、Dは、Bに対する当該所有権の移転の登記の抹消登記手続きを求める訴えに係る認容判決の正本を提供して当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができます。
イ 誤り
先例(昭和45年10月5日民甲4160号)は、「『遺言執行者は不動産を売却してその代金中より負債を支払い残額を受遺者に分配する』とある遺言書に基づき、遺言執行者が不動産を売却して買主名義に所有権移転登記を申請する場合には、その前提として相続による所有権移転登記を要する。」としています。
ウ 正しい
先例(昭和30年5月23日民甲973号)は、「被相続人甲名義に登記されている不動産が乙に遺贈され、その登記前に相続人丙から遺留分減殺請求があったときは、直接丙のために相続登記をすることができる。」としています。
エ 正しい
数次遺贈の場合に、遺贈を登記原因とする最初の遺贈者から最終の受遺者への所有権移転の登記(中間省略登記)の申請は認められていません。
オ 誤り
相続による権利の移転の登記を申請する場合、相続を証する市町村長、登記官その他の公務員が職務上作成した情報及びその他の登記原因を証する情報を添付情報として提供しなければなりません(不動産登記令別表22添付情報)。
もっとも、相続の廃除があった場合、その旨は廃除された者の戸籍に記載ることになるため、相続を登記原因とする所有権の移転の登記を申請する場合には、その旨が記載された戸籍謄本を提供すれば足ります。
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