司法書士の過去問
平成30年度
午前の部 問8
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問題
平成30年度 司法書士試験 午前の部 問8 (訂正依頼・報告はこちら)
即時取得に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aが、Bの所有する動産甲を無権利のCから買い受けた場合において、契約締結時にCが無権利者であることにつき善意無過失であるときは、現実の引渡しを受けるまでにCが無権利者であることを知ったとしても、Aは動産甲を即時取得する。
イ Aが、Bの所有する動産甲を無権利のCから買い受けて現実の引渡しを受けた場合において、即時取得を主張するためには、自己に過失がなかったことを立証しなければならない。
ウ Aが、未成年者であるBから、Bの所有する動産甲を買い受けて現実の引渡しを受けた場合において、Bが未成年者であることについて善意無過失であるときは、Bがその売買契約を取り消したときであっても、Aは動産甲を即時取得する。
エ A株式会社の代表取締役Bから代理権を与えられたCが、Aのためにすることを示して動産甲を無権利のDから買い受けて現実の引渡しを受けた場合において、Dが無権利者であることにつきBは善意無過失であるが、Cは善意有過失であるときは、Aは動産甲を即時取得することはできない。
オ Aに対して金銭債務を負担するBが、当該金銭債務を担保するために、他人の所有する動産甲につき無権利で質権を設定してAに現実の引渡しをした場合において、Aが、Bが無権利者であることにつき善意無過失であるときは、Aは動産甲について質権を即時取得する。
ア Aが、Bの所有する動産甲を無権利のCから買い受けた場合において、契約締結時にCが無権利者であることにつき善意無過失であるときは、現実の引渡しを受けるまでにCが無権利者であることを知ったとしても、Aは動産甲を即時取得する。
イ Aが、Bの所有する動産甲を無権利のCから買い受けて現実の引渡しを受けた場合において、即時取得を主張するためには、自己に過失がなかったことを立証しなければならない。
ウ Aが、未成年者であるBから、Bの所有する動産甲を買い受けて現実の引渡しを受けた場合において、Bが未成年者であることについて善意無過失であるときは、Bがその売買契約を取り消したときであっても、Aは動産甲を即時取得する。
エ A株式会社の代表取締役Bから代理権を与えられたCが、Aのためにすることを示して動産甲を無権利のDから買い受けて現実の引渡しを受けた場合において、Dが無権利者であることにつきBは善意無過失であるが、Cは善意有過失であるときは、Aは動産甲を即時取得することはできない。
オ Aに対して金銭債務を負担するBが、当該金銭債務を担保するために、他人の所有する動産甲につき無権利で質権を設定してAに現実の引渡しをした場合において、Aが、Bが無権利者であることにつき善意無過失であるときは、Aは動産甲について質権を即時取得する。
- アウ
- アエ
- イウ
- イオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア × 判例(大判明32.3.16)は、「民法192条(即時取得の規定)の善意無過失は、占有を取得したときに存在することを要する」としています。
イ × 判例(最判昭41.6.9)は、「即時取得の場合には民法188条(前主の占有について権利の推定)より、その占有者からの譲渡人である占有取得者は無過失であると推定される」としています。
ウ × 民法192条(即時取得の規定)の取引行為は有効なものであることを要します。行為能力の制限は、前主からの譲渡行為そのものに存する瑕疵まで即時取得制度によって治癒されるものではありません。
エ ○ 代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとします(改正民法101条1項)。この場合は、Cが代理人となるので善意有過失の場合は、即時取得はできません。
オ ○ 取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得します(民法192条)。この権利は所有権だけではなく質権も対象となります。
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02
ア…誤りです。即時取得の目的物に関して善意・無過失であるかどうかは、目的物の占有を始めたときの状態で判断されます(先例)。現実の引渡しを受けて占有が開始されるので、占有開始時に悪意であったことになり、即時取得はできません。
イ…誤りです。占有者が占有物について行使する権利は、適法に有するものと推定します(188条)。本問のCが無権利であったとしても、動産甲を占有しており、引渡しが行われた以上、AはCが動産甲の持ち主であると信ずるに足る状況であったとみなし、過失はないと考えます(公信の原則)。よって即時取得ができます。
ウ…誤りです。未成年者のした行為は、詐術を用いたのでない限り、本人または法定代理人により取り消すことができます(5条2項、21条、120条)。したがって未成年者の契約の相手方は、未成年者と契約をしたことにつき善意無過失であっても、契約が取り消された場合、取引行為が無効であったことになり、即時取得はできません。
エ…正しいです。代表取締役Bは株式会社Aの代表権を有しており、会社の業務に関する一切の行為に関して、Bの行為はAの行為とみなされます(会社法349条4項)。本問の場合、Cに対しBから、特定の法律行為に限らない代理権が付与されていますので、Dが無権利者であることにつき善意か悪意か、無過失または有過失かの判断は、代理人Cの状態に決せられます(101条2項)。したがってCは有過失のため、Aは動産甲を即時取得できません。
オ…正しいです。即時取得の条文は、動産の占有によって、その動産について行使しうる権利を取得するための条件を定めたものですので、これに該当する権利は所有権と質権があります。本問の場合、質権を即時取得するための条件はすべて満たされているといえます。
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03
ア 誤り
取引の相手が無権利者であることにつき善意無過失であることは、占有の開始時(引渡時)に備わっていなければならないとされています。
イ 誤り
判例(最判昭和41年6月9日)は、本肢と同様の事案において、「即時取得の場合には民法188条により、その占有者からの譲受人である占有取得者は無過失であると推定される。」としています。
本肢の場合、即時取得によって権利を失うBが、Aに過失があったことを立証しなければなりません。
ウ 誤り
制限能力者制度の趣旨を没却することになるため、未成年者との取引において即時取得は認められていません。
エ 正しい
代理人が相手方に対してした意思表示の効力が意思の不存在、錯誤、詐欺、強迫又はある事情を知っていたこと若しくは知らなかったことにつき過失があったことによって影響を受けるべき場合には、その事実の有無は、代理人について決するものとされています(民法101条1項)。
オ 正しい
即時取得の対象は、動産の所有権に限られず、質権も含まれるとされています。
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