司法書士の過去問
平成30年度
午前の部 問9

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問題

平成30年度 司法書士試験 午前の部 問9 (訂正依頼・報告はこちら)

相隣関係に関する次の1から5までの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものは、どれか。
  • 他の土地に囲まれて公道に通じない土地(以下「袋地」という。)の所有権を取得した者が、公道に至るため、袋地を囲んでいる他の土地(以下「囲繞地」という。)の所有者に対して囲繞地を通行する権利(以下「囲繞地通行権」という。)を主張するためには、袋地について所有権の移転の登記をしている必要がある。
  • 分割によって袋地が生じた場合には、袋地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができるが、償金を支払わなければならない。
  • 自動車による通行を前提とする囲繞地通行権は、成立しない。
  • 土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その枝を自ら切り取ることができる。
  • 土地の所有者は、隣地との境界の付近において建物を築造するため必要な範囲内で、その隣地の使用を請求することができる。

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この過去問の解説 (3件)

01

正しい肢は5で【正解は5】です。

1 × 判例(最判昭47.4.14)は、「袋地の所有者は、当該袋地についての所有権の登記を有していなくとも、囲繞地通行権を主張することができる」としています。

2 × 分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、他の分割者の所有地のみを通行することができます。この場合においては、償金を支払うことを要しません(民法213条1項)。

3 × 判例(最判平18.3.16)は、「自動車による通行を前提とする囲繞地通行権の成否およびその具体的内容は、公道に至るため他の土地について自動車による通行を認める必要性、周辺の土地の状況、この通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益などの諸事情を総合考慮して判断すべきである」としています。

4 × 隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができます(民法233条1項)。自ら切ることはできません。

5 〇 土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができます(民法209条1項本文)。

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02

正解は5です。囲繞地通行権は登記を必要としません。

1.…誤りです。袋地についての所有権移転登記がなくても、袋地の所有者は、囲繞地の通行権を主張できます(先例)。実際には、所有者以外の袋地の地上権者や賃借権者も、所有権に準ずる者もしくは通行権を代位行使できる者として、囲繞地通行権を主張できます(先例)。

2.…誤りです。分割によって袋地が生じた場合、袋地の所有者は、他の分割者の所有地のみを通行することができますが、この場合は、償金を支払うことを要しません(213条1項)。

3.…誤りです。袋地である墓地から囲繞地への通行の方法について、その必要性が通行を認めないことによる不利益を上回るとして、自動車による通行が認められた判例があります(高判平19・9・13)。

4.…誤りです。土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができます(233条1項)。また、枝ではなく、隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、自分で切除ができます(同条2項)。

5.…正しいです。土地の所有者は、境界またはその付近において障壁または建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができます(209条1項)。

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03

正解 5

1  誤り
判例(最判昭和47年4月14日)は、本肢と同様の事案において、「袋地の所有者が囲繞地の所有者らに対して囲繞地通行権を主張する場合は、不動産取引の安全保護をはかるための公示制度とは関係がないと解するのが相当であり、したがって、実体上袋地の所有権を取得した者は、対抗要件を具備することなく、囲繞地所有者らに対し囲繞地通行権を主張しうるものというべきである。」としています。

2  誤り
分割によって公道に通じない土地が生じたときは、その土地の所有者は、公道に至るため、償金を支払うことなく、他の分割者の所有地のみを通行することができます(民法213条1項)。

3  誤り
判例(最判平成18年3月16日)は、本肢と同様の事案において、「本件分割によって生じた土地に213条通行権が成立することを前提に、上記事情等を考慮することなく本件土地について自動車の通行を前提とする210条通行権の成立を否定した原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。」として、「上告人らが、本件土地につき自動車による通行を前提とする201条通行権を取得したかどうかについて、更に審理を尽くさせるため、同部分につき、本件を原審に差し戻すこととする。」としています。
判例の立場によれば、自動車による通行を前提とする囲繞地通行権は、成立することになります。

4  誤り
隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、自らその枝を切除することはできず、その竹木の所有者に、その枝を切除させる必要があります(民法233条1項)。

5  正しい
土地の所有者は、境界又はその付近において障壁又は建物を築造し又は修繕するため必要な範囲内で、隣地の使用を請求することができます(民法209条1項)。

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