司法書士の過去問
平成30年度
午前の部 問10

このページは閲覧用ページです。
履歴を残すには、 「新しく出題する(ここをクリック)」 をご利用ください。

問題

平成30年度 司法書士試験 午前の部 問10 (訂正依頼・報告はこちら)

A、B及びCが各3分の1の持分の割合で甲土地及び甲土地上の立木を共有している場合の法律関係に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  A、B及びCが全員で甲土地をDに賃貸した場合、その賃貸借契約を解除するためには、A、B及びCの全員が解除権を行使しなければならない。

イ  Aが、Bが負担すべき甲土地上の立木の管理費用を立て替えた後に、Bが甲土地及び甲土地上の立木の共有持分をDに譲渡した場合、Aは、Dに対してその立替金の支払を請求することができる。

ウ  Aは、B及びCの同意がなくても、甲土地の自己の持分に抵当権を設定することができる。

エ  Aは、甲土地上の立木を不法に伐採したDに対し、単独では、その損害賠償を求めることはできない。

オ  Aが、B及びCの同意を得ないで甲土地上の立木を伐採しようとしている場合、Bは、Aに対し、単独で伐採の禁止を求めることはできない。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

次の問題へ

正解!素晴らしいです

残念...

この過去問の解説 (3件)

01

正しい肢はイとウで【正解は3】です。

ア × 判例(最判昭39.2.25)は、「共有者が共有物を目的とする賃貸借契約を解除することは、共有物の管理に関する事項で、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する(民法252条)事項に該当する」としています。

イ ○ 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負います(民法253条1項)。さらに、共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができます(民法254条)。Dはこの特定承継人に該当します。

ウ ○ 持分権は、自由に処分ができます、これは、譲渡についても抵当権設定についても該当します。

エ × 判例(最判昭41.3.3)は、「各共有者は、共有物に対する不法行為に基づく損害賠償請求権について、自己の持分に応じて、単独でこれを行使することができる」としています。

オ × 判例(大判昭2.6.6)は、「共有山林を伐採する行為は、共有物の変更に当たる」としています。各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができません(民法251条)。

参考になった数15

02

正解は3です。共有に関する問題です。

ア…誤りです。共有の土地に関する賃貸借契約ならびにその解除は、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することができます(252条)。

イ…正しいです。各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負います(253条1項)。そして、共有者の一人が他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人(本問のD)にも請求することができます(254条)。

ウ…正しいです。共有持分を目的とする抵当権の設定はできます(先例)。共有物全体に対する処分行為(譲渡、抵当権の設定など)には同意が必要ですが、自己の持分に対する処分行為には他の共有者の同意は必要ありません。

エ…誤りです。共有者が、共有の土地に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を行使する場合、共有持分の割合に応じて請求をすべきとなっています(先例)。したがって単独でも損害賠償請求はできます。

オ…誤りです。共有者の一部が、他の共有者の同意なく、共有物に改変を加えたり損傷させたりする行為を行っている場合、他の共有者は、各自の共有持分権に基づいて、右行為の全部をやめさせることができる上、その行為から生じた結果を除去して原状に復させることもできます(最判平10.3.24)。したがってB単独でAの行為の禁止を求めることができます。

参考になった数7

03

正解 3

ア 誤り
判例(最判昭和39年2月25日)は、本肢と同様の事案において、「共有地を目的とする賃貸借契約を賃料不払を理由として解除する行為は、共有物の管理事項というべきであり、民法544条1項は適用されず、同法252条本文により、各共有者の持分価格に従って、その過半数で決する。」としています。

イ 正しい
共有者の一人が共有物について他の共有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行使することができます(民法254条)。

ウ 正しい
各共有者は、自己の持分を自由に処分することができます。

エ 誤り
判例(最判昭和41年3月3日)は、本肢と同様の事案において、「共有物に対する不法行為による損害賠償請求権は、持分に応じて各共有者に帰属する。」としています。
したがって、各共有者は、単独でその損害賠償を求めることができます。

オ 誤り
判例(大判昭和2年6月6日)は、本肢と同様の事案において、「甲土地が山林である場合、AとBが合意しても、開発のために甲土地上の樹木全部を伐採することはできない。」としています。
判例の立場によれば、共有に係る土地上の立木を伐採する行為は、共有物の変更にあたり(民法251条)、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることはできません。
したがって、本肢の場合、Bは、Aに対し、単独で伐採の禁止を求めることができます。

参考になった数4