司法書士の過去問
平成30年度
午前の部 問27

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問題

平成30年度 司法書士試験 午前の部 問27 (訂正依頼・報告はこちら)

株式会社の設立に関する次のアからオまでの記述のうち、正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  募集設立の場合において、株式会社の成立後、定款に記載された設立に際して出資される財産の最低額に相当する出資がなかったことを原因として当該株式会社の設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、発起人は、設立時募集株式の引受人に対し、連帯して、払込金を返還する責任を負う。

イ  発起設立の場合において、現物出資の目的財産である甲土地について定款に記載された価額が2000万円であって、財産引受けの目的財産である乙建物について定款に記載された価額が400万円であるときは、甲土地について定款に記載された価額が相当であることについて、監査法人の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を受けたときであっても、発起人は、乙建物に関する定款の記載事項を調査させるため、裁判所に対し、検査役の選任の申立てをしなければならない。

ウ  募集設立の場合において、設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日又はその期間の初日のうち最も早い日以後に、定款で定められた発行可能株式総数についての定款の変更をするときは、発起人及び設立時募集株式の引受人の全員の同意によらなければならない。

エ  発起設立の場合において、発起人は、株式会社の成立前に、払込みの取扱いをした銀行から払込金の返還を受け、返還を受けた払込金をもって株式会社の設立の登記の登録免許税を支払うことができる。

オ  発起設立の場合において、設立時発行株式1株のみを引き受けた発起人が、出資の履行をせず、設立時発行株式の株主となる権利を失ったときであっても、他の発起人が引き受けた設立時発行株式につき出資した財産の価額が定款に記載された設立に際して出資される財産の価額又はその最低額を満たしているときは、株式会社の設立の無効事由とはならない。
  • アウ
  • アオ
  • イウ
  • イエ
  • エオ

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この過去問の解説 (3件)

01

正しい肢はイとエで【正解は4】です。

ア × 株式会社の設立無効の訴えの認容判決が確定した場合、その設立は将来に向かってその効力を失います(会社法839条)。また、会社と株主・第三者との間に生じた法律関係は設立無効の判決によって影響されず、会社は判決確定後に清算手続に入ることになります(会社法475条2号)。会社不成立の場合の発起人の責任(会社法56条)と勘違いさせるためのひっかけ問題ですが、設立無効の場合は清算手続で処理されます。

イ ○ 変態設立事項については原則として裁判所が選任する検査役による調査を受けなければなりません(会社法33条1項)。しかし、例外として調査が不要な場合もあります。甲土地2,000万円は、監査法人の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を受けているので調査不要の例外(会社法33条10項3号)に当たります。乙建物は400万円ということで会社法33条10項1号の500万円を越えないという、もうひとつの例外に当たりそうですが、この例外は、定款に記載されている総額の金額であり、甲土地が2,000万円である以上、例外には当たりません。裁判所に対して検査役の選任の申し立てをしなければなりません。

ウ × 募集設立の場合には、成立時募集株式の払込期日又は払込期間の初日のうち最も早い日以後は、発行可能株式総数についての定款の定めの変更をするときであっても、発起人全員の同意によって行うことはできません(会社法95条)。定款の変更はすべて創立総会の決議によって行うこととされています(会社法96条)。

エ ○ 募集設立の場合は、払込金保管証明制度があります(会社法64条)。一方、発起設立の場合は、払込金保管証明制度を廃止しているので、通帳により払込金の証明ができれば、そこから登録免許税のために引き出して支払うことができます。

オ × 設立時発行株式1株のみを引き受けた発起人が出資の履行をしない場合は失権することになります(会社法36条)。このような発起人の存在自体が設立無効事由となります。これは定款に記載された設立に際して出資される財産の価値又はその最低額を満たしているとしても関係はありません。

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02

正解 4

ア 誤り
株式会社の設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされた行為は、将来に向かってその効力を失います(会社法839条)。
そのため、それまでになされた出資の効力には何ら影響がありません。

イ 正しい
現物出資および財産引受けの財産について定款に記載された価額の総額が500万円を超えない場合は、検査役を選任する必要はありません(会社法33条10項1号)。
本肢の場合、目的財産の総額は2400万円であるため、定款に記載された甲土地の価額が相当であることについて、監査法人の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を受けたときであっても(同項3号)、乙建物について検査役の調査が必要になります。

ウ 誤り
募集設立の場合、発起人は、設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日又はその 期間の初日のうち最も早い日以後に定款変更をすることはできません(会社法95条)。

エ 正しい
募集設立の場合、発起人は、払込みの取扱いをした銀行等に対し、払い込まれた金額に相当する金銭の保管に関する証明書の交付を請求することができますが(会社法64条1項)、発起設立の場合、払込金保管証明制度は採られていません。
したがって、発起人は、株式会社の成立前に、払込みの取扱いをした銀行から払込金の返還を受け、返還を受けた払込金をもって株式会社の設立の登記の登録免許税を支払うことが可能です。

オ 誤り
各発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を一株以上引き受けなければなりません(会社法25条2項)。
これに違反した場合、株式会社の設立の無効事由になると解されています。

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03

正解:4

ア:誤
株式会社の設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定したときは、当該判決において無効とされた行為は、将来に向かってその効力を失います(会839)。つまり、設立の無効の訴えに係る請求を認容する判決が確定した場合は、清算手続きをしなければならず(会475②)、発起人が設立時募集株式の引受人に対し、連帯して、払込金を返還する責任を負うわけではありません。

イ:正
発起人は、定款に変態設立事項についての記載がある場合、原則として裁判所に検査役の選任の申立てをしなければなりません(会33Ⅰ)。しかし、現物出資、財産引受の目的財産の定款に記載された価額の「総額」が500万円を超えないときは(会33Ⅹ①)、検査役の選任は必要ありません。本肢の場合、現物出資財産の「総額」が2400万円である以上は、甲土地に関して監査法人の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を受けていることにより検査役の調査を要しないときあっても(会33Ⅹ③)、乙建物については弁護士等の証明及び不動産鑑定士の鑑定評価を受けていないため、検査役の選任の申立てをしなければなりません。

ウ:誤
募集設立の場合、発起人は、設立時募集株式と引換えにする金銭の払込みの期日又はその期間の初日のうち最も早い日以後は、発行可能株式総数の設定や変更をする定款の変更をすることができず(会95)、創立総会の決議によらなければなりません(会96)。

エ:正
発起設立の場合、払込金保管証明制度は採用されておらず(会64)、設立中に株式会社に払い込まれた金銭の返還を受け、それをもって株式会社の設立の登記の登録免許税を支払うことができます。

オ:誤
株式会社の設立手続上の重大な瑕疵が設立無効の原因となると解されています。その例として、発起人は、株式会社の設立に際し、設立時発行株式を1株以上引き受けなければならない(会25Ⅱ)と規定されているところ、これに違反した場合が挙げられます。本肢のように、発起人が設立時発行株式1株を引き受けたにも拘らず、出資の履行をせず、失権した場合、つまり設立時発行株式を1株も引き受けていない発起人がいるとき、たとえ他の出資者が出資した財産の価額が定款において定めた設立に際して出資される財産の価額又はその最低額を満たしていたとしても、設立無効の原因となります。

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