司法書士の過去問
平成30年度
午後の部 問37

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問題

平成30年度 司法書士試験 午後の部 問37 (訂正依頼・報告はこちら)

確認の訴えに関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。

ア  ある財産が遺産に属することの確認を求める訴えは、確認の利益を欠く。

イ  共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠く。

ウ  金銭消費貸借契約の債務者が、債権者に対し、その債務を弁済した事実自体の確認を求める訴えは、確認の利益を欠く。

エ  債務の不存在の確認を求める本訴に対して当該債務の履行を求める反訴が提起された場合には、当該債務の不存在の確認を求める訴えは、確認の利益を欠く。

オ  建物賃貸借契約継続中に賃借人が賃貸人に対し敷金返還請求権の存在の確認を求める訴えは、賃貸人が賃借人の敷金交付の事実を争って敷金返還義務を負わないと主張している場合であっても、確認の利益を欠く。

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この過去問の解説 (3件)

01

正解:2

ア:誤
判例は、「ある財産が遺産に属することの確認を求める訴えは、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであって、その原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもって確定し、したがって、これに続く遺産分割審判の手続において及びその審判の確定後に当該財産の遺産帰属性を争うことを許さず、もって、原告の意思にかなった紛争の解決を図ることができるところであるから、かかる訴えは適法というべきである(最判昭61.3.13)」としています。したがって、確認の利益が認められます。

イ:正
判例は、「具体的相続分は、遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず、遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり、これのみを別個独立に判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない。したがって、共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であると解すべきである(最判平12.2.24)」としています。

ウ:正
確認の訴えの対象は、原則として、現在の権利または法律関係でなければならず、債務を弁済した事実自体の確認を求める訴えのように、単なる事実の存否を問題とする訴えは、確認の利益を欠き、原則として許されません。

エ:正
判例は、「債務の不存在確認の訴えの訴訟係属中に、被告が当該債務の履行を求める反訴を提起した場合、もはや確認の利益を認めることはできず、当該債務不存在確認の訴えは不適法として却下を免れないというべきである(最判平16.3.25)」としています。

オ:誤
判例は、「敷金返還請求権は、賃貸借契約終了後、建物の明渡しがされた時において、それまでに生じた敷金の被担保債権を控除しなお残額があることを条件として発生するものであり、本件の確認の対象は、このような条件付きの権利であると解されるから、現在の権利又は法律関係であるということができ、確認の対象としての適格に欠けるところはないというべきである(最判平11.1.21)」としています。したがって、確認の利益が認められます。

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02

正解は2です。


ア…誤りです。共同相続人間において、特定の財産が被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えは適法であるとされた判例があります(最判昭61・3・13)。共同相続人間で相続の割合について争いがない場合でも、当該財産が被相続人の遺産に属することに既判力を生じさせることにより、その後の遺産分割審判の確定後に、当該遺産の帰属性に争いが生じるという事態を避けることができるため、原告の目指す紛争の解決に適っていると考えられたためです。


イ…正しいです。民法903条により算定される具体的相続分(=遺贈または生前贈与の価額を控除して算出される、共同相続人の相続分)の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合の確認は、不適法であるとされています(最判平12・2・24)。具体的相続分は計算上の価額または割合であり、それ自体が実体上の権利関係にはあたらず、遺産分割ないし遺留分の確定などの問題のための前提事項とするためのものなので、具体的相続分を個々の判決で確認することが紛争の直接かつ抜本的解決には当たらないためとされています。


ウ…正しいです。民事訴訟法に特別の規定がある場合などを除き、弁済の事実の確認などの、事実の確認を求める訴えは不適法とされています(最判昭39・3・24)。当該事実の確認により、権利関係または法律関係の確認を求めるものではないと解される、というのが理由です。


エ…正しいです。債務者が債権者に対して提起した債務が存在しないことの確認を求める訴えは、当該債務の履行を求める反訴が提起されている場合には、確認の利益がないとされています(最判平16・3・25)。


オ…誤りです。建物賃貸借契約継続中に賃借人が賃貸人に対し敷金返還請求権の存在の確認を求める訴えは、その内容が賃貸借契約終了後に建物の明渡しがされたときにおいて敷金の被担保債権を控除しなお残額があることを条件とする権利の確認を争うものであり、賃貸人が賃借人の敷金交付の事実を争って敷金返還義務を負わないとされている場合には、確認の利益があるとされた判例があります(最判平11・1・21)。敷金返還請求権という条件付き権利の確認により、現に賃借人の地位に生じている不安ないし危険が除去されると言えるからです。

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03

誤っている肢はアとオで【正解は2】です。

ア × 判例(最判昭61.3.13)は、「共同相続人の範囲、その相続分の割合については争いがなく、土地と建物が遺産に属しているかが争われた事件で、最高裁は当該不動産についての共同相続による共有持分権の確認の訴えでも適法であるが、原告が提起した遺産確認の訴えという形でも適法」としています。

イ ○ 判例(最判平12.2.24)は、「具体的相続分それ自体を実体法上の権利関係ということはできない」としています。相続分は、遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のために、前提問題として審理判断される事項です。「これのみを別個独立に判決によって確認することが、紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であることはできないから確認の利益を欠く」としています。

ウ ○ 判例(最判昭39.3.24)は、「原則として事実の確認は許されず法律関係の確認を求めるべきである」とし、「債務の弁済の事実自体の確認を求める訴えにつき、不適法であり、却下されなければならない」としています。

エ ○ 判例(最判平16.3.25)は、「債務不存在確認請求に係る訴えについては、給付訴訟である反訴が提起されている以上、もはや確認の利益を求めることができないから、債務不存在確認訴訟は不適法として却下を免れない」としています。

オ × 判例(最判平11.1.21)は、敷金返還請求権を条件付きの権利であると判示した上で、「確認の対象は、このような条件付きの権利であると解されるから、現在の権利又は法律関係であるということができ、確認の対象としての適格に欠けるということはないというべきである」としています。

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