司法書士の過去問
平成30年度
午後の部 問56
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問題
平成30年度 司法書士試験 午後の部 問56 (訂正依頼・報告はこちら)
甲土地の所有権の登記名義人であるAが死亡した場合において、Aに配偶者B並びに子C及びDがいるときにおける登記の申請に関する次のアからオまでの記述のうち、判例の趣旨に照らし正しいものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア 甲土地について、抵当権者Eの代位によりAからB、C及びDへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記がされたが、その前にB、C及びDの全員がAに係る相続の放棄をする旨の申述を受理する審判がされていた場合には、Eは、単独で、B、C及びDに代位して、当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。
イ Aの遺産に関する遺産分割の調停調書に「Cが甲土地を取得する代償として、Cは、Bに対して、Cの所有する乙建物を譲渡する」旨の条項があるときは、B及びCは、当該調停調書の正本を提供して、乙建物について、遺産分割による代償譲渡を登記原因とする所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ Aの死亡後にB、C及びDから甲土地を買い受けたEが、B、C及びDからEへの売買を原因とする所有権の移転の登記手続を命ずる確定判決に基づき、代位によって、AからB、C及びDへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記の申請をする場合において、当該確定判決の理由中にAの相続人がB、C及びDのみである旨の認定がされているときは、相続があったことを証する情報として当該確定判決の正本を提供すれば足りる。
エ B、C及びDが限定承認をする旨の申述を受理する審判がされ、Cが相続財産の管理人に選任されている場合において、Cが家庭裁判所の許可を得てEに対して甲土地を売却したときは、Cは、B及びDの委任がなくとも、その代理人として、売買を登記原因とする所有権の移転の登記を申請することができる。
オ 甲土地の地目及び現況が畑であり、かつ、AからB、C及びDへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記がされた場合において、CがDに対して相続分を贈与し、当該相続分の贈与を登記原因としてCからDへの持分の移転の登記を申請するときは、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要しない。
ア 甲土地について、抵当権者Eの代位によりAからB、C及びDへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記がされたが、その前にB、C及びDの全員がAに係る相続の放棄をする旨の申述を受理する審判がされていた場合には、Eは、単独で、B、C及びDに代位して、当該所有権の移転の登記の抹消を申請することができる。
イ Aの遺産に関する遺産分割の調停調書に「Cが甲土地を取得する代償として、Cは、Bに対して、Cの所有する乙建物を譲渡する」旨の条項があるときは、B及びCは、当該調停調書の正本を提供して、乙建物について、遺産分割による代償譲渡を登記原因とする所有権の移転の登記を申請することができる。
ウ Aの死亡後にB、C及びDから甲土地を買い受けたEが、B、C及びDからEへの売買を原因とする所有権の移転の登記手続を命ずる確定判決に基づき、代位によって、AからB、C及びDへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記の申請をする場合において、当該確定判決の理由中にAの相続人がB、C及びDのみである旨の認定がされているときは、相続があったことを証する情報として当該確定判決の正本を提供すれば足りる。
エ B、C及びDが限定承認をする旨の申述を受理する審判がされ、Cが相続財産の管理人に選任されている場合において、Cが家庭裁判所の許可を得てEに対して甲土地を売却したときは、Cは、B及びDの委任がなくとも、その代理人として、売買を登記原因とする所有権の移転の登記を申請することができる。
オ 甲土地の地目及び現況が畑であり、かつ、AからB、C及びDへの相続を登記原因とする所有権の移転の登記がされた場合において、CがDに対して相続分を贈与し、当該相続分の贈与を登記原因としてCからDへの持分の移転の登記を申請するときは、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要しない。
- アイ
- アウ
- イエ
- ウオ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
ア:誤
債権者代位により共同相続登記がされたところ、その登記前に、共同相続人全員が相続放棄をしていたことによる当該相続登記の抹消を、債権者が代位によって申請することはできません(昭52.4.15民三2379号)。
イ:誤
遺産分割につき、相続人のひとりがある相続財産を取得する代わりに、その代償として当該相続人固有の不動産を他の相続人に与える旨が合意されたとき、当該不動産の所有権移転の登記の登記原因は「遺産分割による贈与」もしくは「遺産分割による売買」であり、「遺産分割による代償譲渡」として申請したものは受理されません(登研740、平21.3.13民二646号)。
ウ:正
確定判決の理由中において、登記名義人の相続人全員が訴訟の被告となっていることが明らかになっている場合には、当該確定判決の正本を提供したとき、これとは別に相続を証する情報を提供することを要しません(登研548)。
エ:誤
相続財産管理人が相続人を代理するのは、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な限度に限られ、相続財産管理人であることのみをもって、任意売却による所有権移転登記の申請の代理権を当然に有するわけではありません。つまり、当該所有権移転登記の申請に関する権限を委任する旨の他の相続人全員の委任状を提供することを要します(登研591)。
オ:正
判例は、「共同相続人間において、相続分を譲渡し、持分の移転登記を申請する場合は、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要しない(最判平13.7.10)」としています。
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02
正解 4
ア 誤り
債権者代位により相続登記がされる前に、共同相続人の全員が相続放棄をしていた場合、当該相続登記の抹消を債権者代位により申請することはできません(昭和52年4月15日民三2379号)。
イ 誤り
遺産分割の代償として、相続人固有の不動産を他の相続人に移転する旨の合意が成立した場合、当該不動産の所有権の移転の登記原因は、「遺産分割による売買(有償の場合)」、もしくは、「遺産分割による贈与(無償の場合)」となります(平成21年3月13日民二646号)。
よって、本肢のように「遺産分割による代償譲渡」を登記原因とする申請は認められません。
ウ 正しい
確定判決に基づき登記申請をする場合において、当該確定判決の理由中に登記名義人の相続人全員が被告となっていることが明らかになっている場合は、相続があったことを証する情報を提供する必要はありません(登記研究548号)。
エ 誤り
相続財産管理人は、相続財産の管理及び債務の弁済に必要な限度で相続人を代理します。
そのため、相続財産管理人が、相続人を代理して相続財産の売買を登記原因とする所有権移転の移転の登記を申請した場合、当該申請に対する相続人全員の委任を受けていない限り、その申請は却下されます(平成8年3月22日民三598号)。
オ 正しい
相続人の間で、相続分の譲渡を登記原因とする持分の移転の登記の申請をする場合は、農地法所定の許可証明情報を提供する必要はありません(最判平成13年7月10日)。
よって、正しい肢はウとオとなり、4が正解となります。
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03
正解:4
<解説>
ア:誤りです。
本肢のように債権者代位によりB、C及びDの共同相続登記がされたところ、その共同相続人全員が相続放棄をしていた場合には、B、C及びDの共同相続登記の抹消を申請すべきであるが、その場合には、B、C及びDと第2順位の相続人との共同申請によって申請しなければなりません。
したがって、Eが単独で登記の抹消を申請できるとする本肢は誤りです。
イ:誤りです。
Cが甲土地を取得する代わりに、CがBに対して、Cの所有する乙建物を贈与する旨の遺産分割協議が成立した場合には、乙建物について「遺産分割による贈与」を登記原因とする所有権移転の登記を申請することができます(昭40・12・17民甲3433号)。
しかし、この場合には、乙建物について登記原因を「遺産分割による代償譲渡」として所有権移転の登記を申請することはできません(平21・3・13民二646号)。
したがって、本肢は誤りです。
ウ:正しいです。
B、C及びDから甲土地を買い受けたEが、単独で自己名義に登記申請をする場合には、①B、C、Dに代位してAからB、C、Dへの相続を登記原因とする甲土地の所有権移転登記をし、次いで、②B、C、DからEへの売買を登記原因とする甲土地の所有権移転登記をする必要があります。
①においては、登記原因証明情報としてAの相続人がB、C及びDのみである旨の認定が判決理由中でされている判決正本を提供すれば足ります。
したがって、本肢は正しいです。
エ:誤りです。
限定承認の場合、相続財産管理人が相続人を代理して、相続財産の売買を登記原因とする所有権移転登記をすることはできません(平8・3・22民三598号)。
したがって、本肢は誤りです。
オ:正しいです。
共同相続人の共有の相続登記がされている農地について、「相続分の贈与」を原因として共同相続人の1人に対する他の共同相続人の持分の移転登記が申請するときは、農地法所定の許可があったことを証する情報を提供することを要しません(最判平13・7・10)。
したがって、本肢は正しいです。
以上により、正しいものは肢ウ・オであり、正解は4となります。
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