司法書士の過去問
平成30年度
午後の部 問60
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問題
平成30年度 司法書士試験 午後の部 問60 (訂正依頼・報告はこちら)
信託の登記に関する次のアからオまでの記述のうち、誤っているものの組合せは、後記1から5までのうち、どれか。
ア Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、抵当権の被担保債権をBのAに対する金銭消費貸借契約に基づく貸金返還債権とし、Aを委託者、Cを受託者かつ抵当権者、Bを受益者とする抵当権の設定の登記及び信託の登記を申請することができる。
イ Aを受託者、Bを受益者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について、当該信託の登記の信託目録に記録された信託財産の管理方法に変更が生じた場合には、AとBとが共同で信託の変更の登記を申請しなければならない。
ウ Aを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について、Aが不動産の売却をその信託の目的とする信託行為に基づき、甲土地をBに対して売却した場合において、AからBへの所有権の移転の登記及び信託の登記の抹消の申請をするときは、信託財産の処分を信託の登記の抹消の登記原因としなければならない。
エ Aを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について、Aが後見開始の審判を受けて受託者の任務が終了し、新たに受託者Bが選任された場合には、Aの成年後見人とBとが共同してAからBへの所有権の移転の登記を申請しなければならない。
オ 甲土地について、受益者の定めのない信託として所有権の移転の登記及び信託の登記を申請する場合には、受益者の定めのない旨を信託目録に記録すべき情報として提供しなければならない。
ア Aを所有権の登記名義人とする甲土地について、抵当権の被担保債権をBのAに対する金銭消費貸借契約に基づく貸金返還債権とし、Aを委託者、Cを受託者かつ抵当権者、Bを受益者とする抵当権の設定の登記及び信託の登記を申請することができる。
イ Aを受託者、Bを受益者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について、当該信託の登記の信託目録に記録された信託財産の管理方法に変更が生じた場合には、AとBとが共同で信託の変更の登記を申請しなければならない。
ウ Aを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について、Aが不動産の売却をその信託の目的とする信託行為に基づき、甲土地をBに対して売却した場合において、AからBへの所有権の移転の登記及び信託の登記の抹消の申請をするときは、信託財産の処分を信託の登記の抹消の登記原因としなければならない。
エ Aを受託者とする所有権の移転の登記及び信託の登記がされている甲土地について、Aが後見開始の審判を受けて受託者の任務が終了し、新たに受託者Bが選任された場合には、Aの成年後見人とBとが共同してAからBへの所有権の移転の登記を申請しなければならない。
オ 甲土地について、受益者の定めのない信託として所有権の移転の登記及び信託の登記を申請する場合には、受益者の定めのない旨を信託目録に記録すべき情報として提供しなければならない。
- アウ
- アオ
- イウ
- イエ
- エオ
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この過去問の解説 (3件)
01
正解 4
ア 正しい
所有権の登記名義人が、債権者に対する債務を担保するため、抵当権を設定した場合、債権者のために受託者が抵当権者となります。
よって、受託者が抵当権者、受益者は債権者になり、債権者と抵当権者が分離することになります(登記研究716号)。
この場合、所有権の登記名義人を委託者、抵当権者を受託者、債権者を受益者とする抵当権設定の登記と信託登記を申請することができます。
イ 誤り
信託の登記の登記事項について変更があったときは、受託者は、遅滞なく、信託の変更の登記を申請しなければなりません(不動産登記法103条1項)。
本肢では、受託者であるAが単独で信託の変更の登記を申請することになります。
ウ 正しい
不動産の売却を信託の目的とする信託行為に基づき、不動産を第三者に売却した場合において、当該不動産の所有権の移転登記と信託の登記の抹消を申請するときは、前者の登記原因が「売買」となり、後者の登記原因は「信託財産の処分」となります。
エ 誤り
受託者の任務が後見開始の審判により終了し、新たに受託者が選任されたときは、信託財産に属する不動産についてする受託者の変更による権利の移転の登記は、新たに選任された当該受託者が単独で申請することができます(不動産登記法100条1項)。
オ 正しい
受益者の定めのない信託として所有権の移転の登記及び信託の登記をする場合、登記官は、受益者の定めのない旨を記録した信託目録を作成しなければなりません(不動産登記規則176条1項)。
よって、受益者の定めのない旨を信託目録に記録すべき情報として提供する必要があります。
よって、誤っている肢はイとエとなり、4が正解となります。
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02
ア:正
抵当権の目的となる不動産の所有者(債務者又は物上保証人)が委託者となり、抵当権者を受託者、当該抵当権の被担保債権の債権者を受益者に指定した「信託」を登記原因とする抵当権の設定の登記及び信託の登記を申請することができます(平19.9.28民二2048号)。
イ:誤
不動産登記法第97条第1項各号に掲げる登記事項(信託の登記の登記事項)について変更があったときは、受託者は、遅滞なく、信託の変更の登記を申請しなければなりません(不登103Ⅰ)。
ウ:正
不動産の売却をその信託の目的とする信託行為に基づき、当該不動産を売却した場合、所有権の移転の登記及び信託の登記の抹消を申請するときの信託の登記の抹消の登記原因は、信託財産の処分となります。
エ:誤
受託者の任務が、受託者の後見開始により終了し、新たに受託者が選任されたときは、信託財産に属する不動産についてする受託者の変更による権利の移転の登記は、新たに選任された当該受託者が単独で申請することができます(不登100Ⅰ)。
オ:正
受益者の定めのない旨は登記事項となっています(不登97Ⅰ⑥)。また、受益者の定めのない旨は信託目録に記録される事項でもあるため(不登97Ⅲ、不登規176Ⅰ)、信託目録に記録すべき情報として提供しなければなりません。
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03
正解:4
<解説>
ア:正しいです。
受託者を権利者とする抵当権、地上権、賃借権等を設定するとともに、当該抵当権等を信託財産に属する財産とし、受託者がその管理・処分を行うものとすることを内容とする信託をすることもできます。
なお、抵当権等を信託財産とする信託においては、担保権設定者Aが委託者、受託者が担保権者C、被担保債権の債権者Bが受益者となります。
(平19・9・28民二2048号)
したがって、本肢は正しいです。
イ:誤りです。
信託財産の管理方法は、信託の登記の登記事項であり、信託目録にも記録されます(不動産登記法97条①⑼、③)。
信託目録に記録された事項について変更が生じたときは、職権や嘱託によってされる場合もありますが(不動産登記法101条102条)、信託財産の管理方法について変更が生じた場合には受託者が遅滞なく、信託の変更の登記を単独で申請しなければなりません(不動産登記法103条)。
したがって、本肢は誤りです。
ウ:正しいです。
本肢の場合において、信託の登記の抹消と同時に申請すべきA からBへの所有権移転登記の登記原因は「売買」となりますが、信託の登記の抹消の登記原因は、「信託財産の処分」です(平19・9・28民二2048号参照)。
したがって、本肢は正しいです。
エ:誤りです。
受託者の任務が、死亡、後見開始若しくは保佐開始の審判、破産手続開始の決定、法人の合併以外の理由による解散又は裁判所若しくは主務官庁の解任命令により終了し、新たに受託者が選任されたときは、信託財産に属する不動産についてする受託者の変更による権利の移転の登記は、新たに選任された当該受託者の単独申請でします(不動産登記法100条①)。
したがって、本肢は誤りです。
オ:正しいです。
信託の登記の申請には信託目録に記録すべき情報を提供する必要がありますが(不動産登記令別表65添付情報欄ハ)、「信託法258条第1項に規定する受益者の定めのない信託であるときは、その旨」も信託目録に記録すべき情報の一つです(不動産登記法97条①⑹)。
したがって、本肢は正しいです。
以上により、誤っているものは肢イ・エであり、正解は4となります。
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